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九一
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ロック鳥が旋回を繰り返す。
着地地点を探しているのか。
そこへ俺たちがいれば、当然邪魔だと思うはずだ。
ここへ長居するのは得策ではない。
どうするにせよ、取り敢えず一度身を隠すべきだろう。
俺はナイーダの手を引いた。
「ここはまずい。一度離れよう」
ナイーダは無言でうなずいた。
俺たちは急いでこの場を離れる。
しかし、身を隠せるような場所などないのは、さっきの通りだ。
どこまで行っても、むき出しの岩ばかり。
見た目にも寒々しい岩石ばかりの山なのだ。
身を隠せる場所などなかった。
それでもこの場は離れなければならない。
隠れる場所がないのなら、とにかく逃げなければ。
俺たちは必死で鉱山をかけ降りた。
転びそうになりながらも全力で走る。
しかし。
!
ここはモンスターがひしめくミスリル銀山だ。
他にも強力なモンスターが、そこかしこに居る。
登るときに見かけたオウルベアがここまで巡回していても何も不思議ではない。
だが、なぜこのタイミングなのだ。
俺は心底、神にムカついていた。
「くそっ!」
もはや迂回している場合ではない。
俺はナイーダ引き寄せると、ひょいと肩に担いだ。
「きゃあっ!」
いくら山を登り馴れているナイーダでも、俺と同じ動きをするのは無理だ。
こうするしかあるまい。
俺は減速することなく、そのままのスピードを維持してオウルベアへと突っ込んだ。
武器は捨てた。もうない。
右肘は石化したらしく固まって動かない。
唯一の装備品スモールシールドは使い物にならないくらいひしゃげてその上コカトリスに投げつけた。
今は背中にバックパック、肩にナイーダ、手にミスリル銀の入ったバケツと道具。
戦闘などできるはずもなかった。
それでも隠れる場所などないし、引き返すこともできない。
迂回している暇などない。
だったら突っ切るしか他にない。
腹はとっくにくくっている。
「うおおおっ!」
今日はよく叫んでいるなと自分でも思った。
オウルベアはこちらに気付いていた。
明らかに待ち構えている。
そこへ突っ込むのだ。
気合いの雄叫びでもあげなければ、怖くて突っ込めるか。
だっ!
地面を蹴って手前の岩へと跳ぶ。
そこから更に高い岩へと跳躍した。
頭の上を飛び越える。
これしかない。
三段跳びのように俺は岩から岩へと高く、より高く、跳んだ。
そこへ。
ブワアッ!
ガラガラガラガラ!
一体何事か状況を見失う。
跳躍したそのあとに、ロック鳥が滑り込んで来た。
土煙をあげ、岩を突き崩し、石を辺りに撒き散らした。
まるで竜巻かと思うほどの状況だ。
オウルベアはロック鳥の突撃に巻き込まれた。
あの邪悪なオウルベアがこうなると、気の毒に思えるほど無力だった。
俺は偶然にも、運良くこれをかわした形になった訳だ。
「アンタ……やっぱり運がいいわ」
そう言ったナイーダの言葉に俺は無言でうなずいた。
着地地点を探しているのか。
そこへ俺たちがいれば、当然邪魔だと思うはずだ。
ここへ長居するのは得策ではない。
どうするにせよ、取り敢えず一度身を隠すべきだろう。
俺はナイーダの手を引いた。
「ここはまずい。一度離れよう」
ナイーダは無言でうなずいた。
俺たちは急いでこの場を離れる。
しかし、身を隠せるような場所などないのは、さっきの通りだ。
どこまで行っても、むき出しの岩ばかり。
見た目にも寒々しい岩石ばかりの山なのだ。
身を隠せる場所などなかった。
それでもこの場は離れなければならない。
隠れる場所がないのなら、とにかく逃げなければ。
俺たちは必死で鉱山をかけ降りた。
転びそうになりながらも全力で走る。
しかし。
!
ここはモンスターがひしめくミスリル銀山だ。
他にも強力なモンスターが、そこかしこに居る。
登るときに見かけたオウルベアがここまで巡回していても何も不思議ではない。
だが、なぜこのタイミングなのだ。
俺は心底、神にムカついていた。
「くそっ!」
もはや迂回している場合ではない。
俺はナイーダ引き寄せると、ひょいと肩に担いだ。
「きゃあっ!」
いくら山を登り馴れているナイーダでも、俺と同じ動きをするのは無理だ。
こうするしかあるまい。
俺は減速することなく、そのままのスピードを維持してオウルベアへと突っ込んだ。
武器は捨てた。もうない。
右肘は石化したらしく固まって動かない。
唯一の装備品スモールシールドは使い物にならないくらいひしゃげてその上コカトリスに投げつけた。
今は背中にバックパック、肩にナイーダ、手にミスリル銀の入ったバケツと道具。
戦闘などできるはずもなかった。
それでも隠れる場所などないし、引き返すこともできない。
迂回している暇などない。
だったら突っ切るしか他にない。
腹はとっくにくくっている。
「うおおおっ!」
今日はよく叫んでいるなと自分でも思った。
オウルベアはこちらに気付いていた。
明らかに待ち構えている。
そこへ突っ込むのだ。
気合いの雄叫びでもあげなければ、怖くて突っ込めるか。
だっ!
地面を蹴って手前の岩へと跳ぶ。
そこから更に高い岩へと跳躍した。
頭の上を飛び越える。
これしかない。
三段跳びのように俺は岩から岩へと高く、より高く、跳んだ。
そこへ。
ブワアッ!
ガラガラガラガラ!
一体何事か状況を見失う。
跳躍したそのあとに、ロック鳥が滑り込んで来た。
土煙をあげ、岩を突き崩し、石を辺りに撒き散らした。
まるで竜巻かと思うほどの状況だ。
オウルベアはロック鳥の突撃に巻き込まれた。
あの邪悪なオウルベアがこうなると、気の毒に思えるほど無力だった。
俺は偶然にも、運良くこれをかわした形になった訳だ。
「アンタ……やっぱり運がいいわ」
そう言ったナイーダの言葉に俺は無言でうなずいた。
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