見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

文字の大きさ
上 下
89 / 826

八九

しおりを挟む
 採掘などしたこともなかったが、とにかく必死に掘った。
来年解禁予定の銀鉱は、たくさんの銀が採れた。
あっという間にバケツはいっぱいになったが、どのくらいの量を持って来いとは言われなかった。

 このくらいで良いだろうか。
と言うより、これ以上持てない。

「……ナイーダ。行こうか」

 俺は声をかけるのも気の毒に思った。
本当は少しでもここに居させてやりたかった。
だが時間は有限だ。

「ええ、ありがとう。やっとお父さんとお母さんに会えたわ」

 ナイーダは明るくそう言った。
気丈に振る舞っていることもあるだろうが、どこかスッキリした表情から一区切り付いたのだなと思った。

「ずっと気になっていたの。生きているなんて思ってなかったけど行方不明なんてモヤモヤするでしょ?辛いけどまた会えたんだもの」

 ナイーダはいつの間にか笑顔になっていた。

 本当に強い少女だ。
大人の俺でも敵わない。

「そうか。じゃあ急ごう。またモンスターが来る」

 俺はそう言って先頭を歩きだした。
坑道を小走りに駆け抜け表に出る。
空は快晴だったはずだが、ほんの少し北西の空に雲が湧き出ている。
山の天気は変わりやすいという。
急いだ方が良いだろう。

 その時、辺りが一瞬にして暗くなった。
雲か?
俺は何気なく空を見上げた。

!?

「なんだ……ありゃ?」

「ロック鳥……!?」

 俺の疑問はナイーダの答えによってすぐさま解消した。

 ロック鳥だと。
頭上には空を覆う巨大な鳥の姿があった。
辺りが影に包まれたのはコイツの影か。

 翼を広げるとその巨大さは圧巻だ。
両翼八〇……いや、一〇〇メートルはあるかもしれない。
想像を絶する馬鹿デカい鷲である。

「この二年でも一回しか見たことなかったのに……」

 さすがのナイーダにとってもレアモンスターだったようだ。
それはそうだろう。
レアモンスターと言ってもピンからキリまである。
これには生息地の問題が関係する。

 単純に個体数が稀少な場合。
それから生息地が人の足で近づけないような場所の場合。
最後は単純に生息地が別の遠い国の場合。

 ロック鳥は三番目の理由に該当する。
この国から見ると、ずっと西の方の暖かい地域に棲んでいるモンスターだとされる。
当然そこでは、この国ほどレアモンスター扱いはされていまい。

 しかし、冬には雪も降るこの地域では、ロック鳥は全く見かけない。
つまり生息に適していないのだ。
ゆえに、ここで見かけるとロック鳥はレアモンスター扱いされる。
ロック鳥を見たことない冒険者も多いだろう。

 実際、俺も初めて見る。

「なんてデカさだ……」

 俺はあらためて感動していた。
しおりを挟む

処理中です...