77 / 826
七七
しおりを挟む
俺たちは迂回するルートに進んだ。
多少道は険しくなるが、なるべく戦闘は回避する方向で進んだ。
実際に歩いてみて、改めてこの山の恐ろしさを痛感した。
山の中腹に到達するまでにかなりの時間を費やす事になった。
そこら中にモンスターがいる。
先に進むにつれてモンスターの数は減るものの、レベルは上がっていた。
ふもとで遭遇したコボルトなど、中腹辺りではもう見かけない。
人型のモンスターだけでも、ゴブリン、オーク、リザードマンなど、多種に渡る。
ここまでで一番の脅威はオウルベアだろうか。
フクロウ、つまり『オウル』の頭を持った熊である。
邪悪な魔法使いにに生み出されたという説が一般的だ。
おそらく『ウォーロック』や『コンジュラー』辺りの事だろうと俺は思っているが、そのオウルベアはかなり厄介だ。
知性が高く独自の言葉を持っていて、仲間同士で人間のように意思の疏通が可能だ。
頭がよく凶暴で、力も普通の熊よりも圧倒的だと言われている。
おまけに、くちばしと爪も攻撃力の高さに一役買っていた。
オウルベアのくちばしと爪は入手が難しく、入手できればかなりの高値で売れる。
ここはまるでモンスターの博物館のような場所だった。
ベテランの冒険者でも、ここにいる全てのモンスターを実際に見たり、戦ったりした者はいないだろう。
オウルベアは夜行性で行動は夕方から夜の間だ。
今の時間は寝ているか、動きがあまり活発ではない。
そこを見越して、彼女があえてオウルベアのいるルートを選択した事も言っておきたい。
「ここからはより難しくなるわ」
彼女はそう言って深呼吸をした。
俺もつられて深く息を吸う。
山が高くなるにつれて範囲は狭くなってくる。
モンスターとの遭遇率も高くなるという訳だ。
迂回ルートの数も激減する。
「ここからは運よ。アンタ、運はいい方?」
どうだろうか。
ここまで滅茶苦茶な目にあってはいるが、死んでないのはどう評価するべきか。
「たぶんいいと思う」
「自信あるのね。でも冒険者はみんなそう言って死んでいくわ。自信過剰ってヤツね」
彼女が鼻で笑いながら言った。
「俺は君の作った資料を手に入れられた。その上ここで本人に道案内までしてもらえている。運は良いだろ?」
俺はそう答えた。
彼女は俺の答えを予想していなかったようだ。
一瞬意外そうな顔をした。
そしてすぐ無表情に戻った。
「……いくわよ」
彼女は何事も無かったかのように歩きだした。
「そう言えば、まだ名前を聞いてなかったな。俺はレオだ」
ここまで危険を共にして初めて名前を名乗った。
「……ナイーダ」
ナイーダはポツリと言った。
俺たちは姿勢を低く保ちながら、山肌に沿って上を目指す。
ここまで戦闘はまだ一度もない。
このモンスターだらけの鉱山で、とても信じられなかった。
やはりナイーダの存在が大きい。
これはひょっとしたら本当にミスリル銀を手にできるかもしれないと俺は思った。
多少道は険しくなるが、なるべく戦闘は回避する方向で進んだ。
実際に歩いてみて、改めてこの山の恐ろしさを痛感した。
山の中腹に到達するまでにかなりの時間を費やす事になった。
そこら中にモンスターがいる。
先に進むにつれてモンスターの数は減るものの、レベルは上がっていた。
ふもとで遭遇したコボルトなど、中腹辺りではもう見かけない。
人型のモンスターだけでも、ゴブリン、オーク、リザードマンなど、多種に渡る。
ここまでで一番の脅威はオウルベアだろうか。
フクロウ、つまり『オウル』の頭を持った熊である。
邪悪な魔法使いにに生み出されたという説が一般的だ。
おそらく『ウォーロック』や『コンジュラー』辺りの事だろうと俺は思っているが、そのオウルベアはかなり厄介だ。
知性が高く独自の言葉を持っていて、仲間同士で人間のように意思の疏通が可能だ。
頭がよく凶暴で、力も普通の熊よりも圧倒的だと言われている。
おまけに、くちばしと爪も攻撃力の高さに一役買っていた。
オウルベアのくちばしと爪は入手が難しく、入手できればかなりの高値で売れる。
ここはまるでモンスターの博物館のような場所だった。
ベテランの冒険者でも、ここにいる全てのモンスターを実際に見たり、戦ったりした者はいないだろう。
オウルベアは夜行性で行動は夕方から夜の間だ。
今の時間は寝ているか、動きがあまり活発ではない。
そこを見越して、彼女があえてオウルベアのいるルートを選択した事も言っておきたい。
「ここからはより難しくなるわ」
彼女はそう言って深呼吸をした。
俺もつられて深く息を吸う。
山が高くなるにつれて範囲は狭くなってくる。
モンスターとの遭遇率も高くなるという訳だ。
迂回ルートの数も激減する。
「ここからは運よ。アンタ、運はいい方?」
どうだろうか。
ここまで滅茶苦茶な目にあってはいるが、死んでないのはどう評価するべきか。
「たぶんいいと思う」
「自信あるのね。でも冒険者はみんなそう言って死んでいくわ。自信過剰ってヤツね」
彼女が鼻で笑いながら言った。
「俺は君の作った資料を手に入れられた。その上ここで本人に道案内までしてもらえている。運は良いだろ?」
俺はそう答えた。
彼女は俺の答えを予想していなかったようだ。
一瞬意外そうな顔をした。
そしてすぐ無表情に戻った。
「……いくわよ」
彼女は何事も無かったかのように歩きだした。
「そう言えば、まだ名前を聞いてなかったな。俺はレオだ」
ここまで危険を共にして初めて名前を名乗った。
「……ナイーダ」
ナイーダはポツリと言った。
俺たちは姿勢を低く保ちながら、山肌に沿って上を目指す。
ここまで戦闘はまだ一度もない。
このモンスターだらけの鉱山で、とても信じられなかった。
やはりナイーダの存在が大きい。
これはひょっとしたら本当にミスリル銀を手にできるかもしれないと俺は思った。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
外れスキル持ちの天才錬金術師 神獣に気に入られたのでレア素材探しの旅に出かけます
蒼井美紗
ファンタジー
旧題:外れスキルだと思っていた素材変質は、レア素材を量産させる神スキルでした〜錬金術師の俺、幻の治癒薬を作り出します〜
誰もが二十歳までにスキルを発現する世界で、エリクが手に入れたのは「素材変質」というスキルだった。
スキル一覧にも載っていないレアスキルに喜んだのも束の間、それはどんな素材も劣化させてしまう外れスキルだと気づく。
そのスキルによって働いていた錬金工房をクビになり、生活費を稼ぐために仕方なく冒険者になったエリクは、街の外で採取前の素材に触れたことでスキルの真価に気づいた。
「素材変質スキル」とは、採取前の素材に触れると、その素材をより良いものに変化させるというものだったのだ。
スキルの真の力に気づいたエリクは、その力によって激レア素材も手に入れられるようになり、冒険者として、さらに錬金術師としても頭角を表していく。
また、エリクのスキルを気に入った存在が仲間になり――。
人質から始まった凡庸で優しい王子の英雄譚
咲良喜玖
ファンタジー
アーリア戦記から抜粋。
帝国歴515年。サナリア歴3年。
新国家サナリア王国は、超大国ガルナズン帝国の使者からの宣告により、国家存亡の危機に陥る。
アーリア大陸を二分している超大国との戦いは、全滅覚悟の死の戦争である。
だからこそ、サナリア王アハトは、帝国に従属することを決めるのだが。
当然それだけで交渉が終わるわけがなく、従属した証を示せとの命令が下された。
命令の中身。
それは、二人の王子の内のどちらかを選べとの事だった。
出来たばかりの国を守るために、サナリア王が判断した人物。
それが第一王子である【フュン・メイダルフィア】だった。
フュンは弟に比べて能力が低く、武芸や勉学が出来ない。
彼の良さをあげるとしたら、ただ人に優しいだけ。
そんな人物では、国を背負うことが出来ないだろうと、彼は帝国の人質となってしまったのだ。
しかし、この人質がきっかけとなり、長らく続いているアーリア大陸の戦乱の歴史が変わっていく。
西のイーナミア王国。東のガルナズン帝国。
アーリア大陸の歴史を支える二つの巨大国家を揺るがす英雄が誕生することになるのだ。
偉大なる人質。フュンの物語が今始まる。
他サイトにも書いています。
こちらでは、出来るだけシンプルにしていますので、章分けも簡易にして、解説をしているあとがきもありません。
小説だけを読める形にしています。
【完結】攻略対象×ヒロイン聖女=悪役令嬢
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
攻略対象である婚約者の王子と、ヒロインである聖女のハッピーエンドで終わったはず。冤罪で殺された悪役令嬢の悲劇は、思わぬ形で世界に影響を及ぼした。
それはさておき、私、元婚約者とヒロインの間に生まれちゃったんですけど?! どうなってるのよ!
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/03/25……完結
2023/01/16……エブリスタ、トレンド#ファンガジー 1位
2023/01/16……小説家になろう、ハイファンタジー日間 58位
2023/01/15……連載開始
魔王統譚レオサーガ・ラシード伝 ~聖戦の獅子王~
鳳洋
ファンタジー
遥か遠い昔、神に背いて楽園を滅ぼした一人の男がいた。
禁断の果実を取って食べたその男は恐るべき魔人【ゼノク】と化し、その血に刻み込まれた魔性の呪い――ゼノクの力は彼の子孫たちへも受け継がれることになった。
それから永い時が流れ――世界は動乱の時代を迎えていた。
聖地エスティムの奪回を掲げ、アレクジェリア大陸の諸国は神の名の下に連合軍を組んで東方のラハブジェリア大陸へと侵攻。
折しも、激戦が続くエスティムの街では超人的な力を持った怪物たち――ゼノクの出現が相次いで報告される。
そんな中、エスティムの攻略を目指すリオルディア王国軍のメリッサ・ディ・リーヴィオ伯爵は、防戦するアラジニア王国軍のマムルークであるラシード・アブドゥル・バキという記憶喪失の青年と戦場で出会い、十年前に死んだはずのリオルディア王家の落胤レオナルド・オルフィーノの面影を彼に見るのだが……
渦巻く戦乱と怪異。
神に背いた原罪がもたらす流血の時代に果たして終わりは訪れるのか。
神々と人間たちがかつてない戦いを繰り広げる混迷の世紀が、今始まる!
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
序盤で殺される悪役貴族に転生した俺、前世のスキルが残っているため、勇者よりも強くなってしまう〜主人公がキレてるけど気にしません
そらら
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑
大人気ゲーム「剣と魔法のファンタジー」の悪役貴族に転生した俺。
貴族という血統でありながら、何も努力しない怠惰な公爵家の令息。
序盤で王国から追放されてしまうざまぁ対象。
だがどうやら前世でプレイしていたスキルが引き継がれているようで、最強な件。
そんで王国の為に暗躍してたら、主人公がキレて来たんだが?
「お前なんかにヒロインは渡さないぞ!?」
「俺は別に構わないぞ? 王国の為に暗躍中だ」
「ふざけんな! 原作をぶっ壊しやがって、殺してやる」
「すまないが、俺には勝てないぞ?」
※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル総合週間ランキング40位入り。1300スター、3800フォロワーを達成!
千技の魔剣士 器用貧乏と蔑まれた少年はスキルを千個覚えて無双する
大豆茶
ファンタジー
とある男爵家にて、神童と呼ばれる少年がいた。
少年の名はユーリ・グランマード。
剣の強さを信条とするグランマード家において、ユーリは常人なら十年はかかる【剣術】のスキルレベルを、わずか三ヶ月、しかも若干六歳という若さで『レベル3』まで上げてみせた。
先に修練を始めていた兄をあっという間に超え、父ミゲルから大きな期待を寄せられるが、ある日に転機が訪れる。
生まれ持つ【加護】を明らかにする儀式を受けたユーリが持っていたのは、【器用貧乏】という、極めて珍しい加護だった。
その効果は、スキルの習得・成長に大幅なプラス補正がかかるというもの。
しかし、その代わりにスキルレベルの最大値が『レベル3』になってしまうというデメリットがあった。
ユーリの加護の正体を知ったミゲルは、大きな期待から一転、失望する。何故ならば、ユーリの剣は既に成長限界を向かえていたことが判明したからだ。
有力な騎士を排出することで地位を保ってきたグランマード家において、ユーリの加護は無価値だった。
【剣術】スキルレベル3というのは、剣を生業とする者にとっては、せいぜい平均値がいいところ。王都の騎士団に入るための最低条件すら満たしていない。
そんなユーリを疎んだミゲルは、ユーリが妾の子だったこともあり、軟禁生活の後に家から追放する。
ふらふらの状態で追放されたユーリは、食料を求めて森の中へ入る。
そこで出会ったのは、自らを魔女と名乗る妙齢の女性だった。
魔女に命を救われたユーリは、彼女の『実験』の手伝いをすることを決断する。
その内容が、想像を絶するものだとは知らずに――
間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜
舞桜
ファンタジー
初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎
って、何故こんなにハイテンションかと言うとただ今絶賛大パニック中だからです!
何故こうなった…
突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、
手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、
だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎
転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?
そして死亡する原因には不可解な点が…
様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、
目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“
そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪
*神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのかのんびりできるといいね!(希望的観測っw)
*投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい
*この作品は“小説家になろう“にも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる