見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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七〇

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「銀山の事はご存じですよね」

 だいぶしつこいな。
まあ、知らずに一攫千金を狙おうという輩もいるのかもしれない。
そういう者たちの為の救済なのだろう。

「大丈夫だ。全部理解している」

 俺はそう言って受付嬢の言葉をさえぎった。

「……そう……ですか」

 受付嬢が諦めたという顔をした。

「ではミスリル銀山の何をお知りになりたいのですか?」

「正確な場所と出没モンスターのリストがあれば欲しい。地図もあるなら尚ありがたい」

 俺は思い付く限り必要と思われる情報を欲した。

「判りました。地図はすぐにお渡しできます。リストの方は作成に少しお時間を頂戴します」

「助かる。ありがとう」

 受付嬢に礼をいう。
そして例の所長特使のバッジを見せた。

「代金はトカナの所長に付けておいてくれ」

 受付嬢は目を丸くした。

「特使バッジ……初めて見ました。判りました、ではしばらくお待ち下さい」

 受付嬢はあらたまって事務所へと消えていった。
 俺はラウンジで時間を潰しながら依頼の貼り紙を眺めた。

 それなりに依頼は出ているが、派手な依頼はあまり無いようだ。
ミスリル銀山を抱えている割りにモンスター関連はほとんど無い。

 むしろ、ミスリル銀山絡みの依頼は一件も無い。
銀山を徹底封鎖しているからだろうか。
かえって不自然さを感じるほどだ。

「お待たせしました、レオ様」

 受付嬢が背後から声を掛けてきた。

「こちらになります」

 銀山の周辺と銀山の地図。
それから出没モンスターの詳しい情報と目撃場所が記されている。

「凄いな。こんなに細かく詳細が判るのか。この情報を集めたヤツはよほど腕のたつレンジャーか?」

 そうとしか思えないほど克明に記されている。
ブラックナイト級のレンジャーでも、これは可能なのかと首をかしげたくなるほどの内容だった。

「いえ、これはミスリル銀山に何度も侵入している方からの善意の情報提供です」

 俺は受付嬢の顔を見た。

「なんだって?善意の情報提供?」

 胡散臭いヤツが居るものだ。

「はい。何度も辞めるように斡旋所からも言っているのですが、無理やり入山されては何度もこのように情報をまとめられて」

「ちょっと待て。そいつは一般人なのか?」

「そううかがってます」

 ミスリル銀山に一般人が何度も入山だと。
俺が思うより難易度は低いのか?

 俺は資料に目を落とした。
ふもとの辺りからすでにモンスターが目撃されている。
しかもかなりの頻度だ。

 山頂付近の鉱脈に向けて、モンスターのレベルが上がっていく傾向にはあるが……

「ふもと付近の一番低レベルモンスターでいきなりコボルトかよ……」

 これを作成したヤツは頭がどうかしている。
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