見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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六ニ

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 どういう意味だ。
俺はヴァンパイアを注視した。

 走っても飛んでも、オオムカデンダルのスピードからは逃げられまい。
スピードが最高に達する前に追い付かれてしまうだろう。
そして、この距離はそういう距離だ。

「無駄だ諦めろ」

 オオムカデンダルはそう言いながら、構わずヴァンパイアに接近した。

「!?」

 なんだこれは。
気が付くと、辺りにうっすらと霧が立ちこめている。

 これは、さっきと同じだ。
ヴァンパイアが現れた時と。

 まさか。

 俺はヴァンパイアの姿を探した。
だが、もうすでにその姿は見えなくなりつつある。

「ふふふ。言っただろう。お前はヴァンパイアをよく知らないと」

 その言葉を最後にヴァンパイアの姿は完全に消えた。

 さすがのオオムカデンダルも慌てたように駆け出す。

「おい、なんだこりゃ。消えるなんてことができるのか」

 駆けてきたものの、もうすでにヴァンパイアの姿はない。

「ヴァンパイアは姿を色々変えられるという。動物とか霧に」

 俺は思い出した情報をオオムカデンダルに告げた。

「なんてこった。そんな技があったとはな」

 俺も噂に聞くだけで、本物のヴァンパイアに会ったのは初めてだ。
一生会わない冒険者の方が大多数だと思うが、どっちがラッキーかは判らない。

 出会ったらまず死ぬ。

 魔王と呼ばれる存在が謎に包まれてる理由は、これに尽きる。
本当に霧に変わって移動ができるとは、未だに信じられない。

「……ま、しょうがないか」

 オオムカデンダルは意外とあっさり諦めた。

「多少のデータは録れたし、次回会う時のお楽しみだ」

 まだ関わるつもりなのか。
一体、魔王を何だと思っているのか。

「なあ……」

 ガイが声を掛けてきた。

「一体、その人は……」

 バルバもルガもディーレも、皆が一様にオオムカデンダルを見つめていた。

 ああ、説明しない訳にはいかないのか。
でも説明できないが。

「ああ、あの、オオムカデンダル。説明は……」

 俺は返事に困ってオオムカデンダル本人に丸投げした。
仕方がない。言うなと言われているのだ。

 オオムカデンダルは皆の方を一瞥する。

「どうせ理解できないだろうから、説明はしない」

 そして当然のようにそう言った。

「レオ、余計なことは言うなよ。じゃあな」

 それだけ言うとオオムカデンダルは頭を掻きながら離れていった。

「え?説明してくれないの?」

 ディーレが目を白黒させながら言う。

「すまない。言うなと言われているんだ……」

 俺はいよいよ返答に困った。
あんなに堂々と現れて、面と向かって説明しないと言われても、誰も納得しないだろう。

 まったく、お騒がせもいいとこだ。
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