見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

文字の大きさ
上 下
33 / 826

三三

しおりを挟む
 俺はバッジを受けとるとそのまま階下で報酬を受け取った。

 宛がないなら最初はドアンに行くのが良いと思う。
俺は所長の言葉を思い出していた。
比較的大きめの町の中ではここから近い方の部類だ。

 そこならハイパーナイトクラスの冒険者も、ここよりは簡単に集められるかもしれない。

 装備品もドアンで揃えた方が良いだろう。
ここよりも品揃えは良い筈だ。

 俺は馬を調達するか考えた。
あった方が楽だし便利だとは思うが、今の俺なら走れるような気もする。

「鍛練と試験を兼ねて、試しに走ってみるか」

 俺は自分の限界を試したかった。
まだどのくらい自分がやれるのか見当もつかない。

 俺は軽く駆け出した。
予想通りの感覚だ。
手足はスムーズに動き、息も全くあがらない。
これは思ったよりやれそうだと思った。

 そうだ。例の補強器。

 俺は足に装着したままの補強器を思い出した。
なんとなくもらったような感じになってしまったが、まあ今は良いだろう。

 俺はあまり深く考えずに足の突起物をひねった。

ブーン……

 またあの静かな振動音が聞こえてくる。

「よし……」

 俺は今度は少し強めに駆け出した。

ダッ!

「うおっ!これは……!」

 自分でも驚くスピードで体が前へと発射された。
これは馬と同等かそれ以上の速度だ。
しかもまだ本気ではない。

「これは……凄いが……危ないな」

 身体強化を受けているから走れている、そんな感じだ。
生身のままでは足が壊れているか、付いていけずに転倒して走れなかったかもしれない。

「本気を出してみるか……」

 俺は好奇心に駆られて本気で走ってみたくなった。
だが、多少の不安もある。
いわゆる怖いもの見たさだ。

 俺は今度は全力疾走を試みた。

たたたたたたたたたたたたたた……!

 およそ人間の足音とは思えない、手を叩くよりも短い感覚で俺は走った。
一足飛びで4、5メートルは進んでいる。
それがこの早い足音の間隔で繰り返される度に、周りの景色は見たこともない早さで後ろへ過ぎ去っていった。

 馬より早い感覚を味わったのは初めてだった。
あまりの驚きと楽しさに俺はまたしても子供のように走った。
この馬鹿げた速度なら一時間か二時間くらいでドアンに着くかもしれない。

 そして実際にたどり着いた。
まったく馬鹿馬鹿しい程に呆れる早さだ。
しかも全く疲れていない。
一体どういう強化術なのか。
今なら中級モンスターにも一人で挑めそうだ。

 俺は興奮気味の自分を意識的に落ち着かせて、早速ドアンの斡旋所に向かった。
人の多さや町の活気など、さっきまでいたトカナとは比べ物にならない。

 露店の商品を眺めながら歩く。

 そして俺はドアンの斡旋所の前にたどり着いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

udonlevel2
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
 初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎  って、何故こんなにハイテンションかと言うとただ今絶賛大パニック中だからです!  何故こうなった…  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  そして死亡する原因には不可解な点が…  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのかのんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

千技の魔剣士 器用貧乏と蔑まれた少年はスキルを千個覚えて無双する

大豆茶
ファンタジー
とある男爵家にて、神童と呼ばれる少年がいた。 少年の名はユーリ・グランマード。 剣の強さを信条とするグランマード家において、ユーリは常人なら十年はかかる【剣術】のスキルレベルを、わずか三ヶ月、しかも若干六歳という若さで『レベル3』まで上げてみせた。 先に修練を始めていた兄をあっという間に超え、父ミゲルから大きな期待を寄せられるが、ある日に転機が訪れる。 生まれ持つ【加護】を明らかにする儀式を受けたユーリが持っていたのは、【器用貧乏】という、極めて珍しい加護だった。 その効果は、スキルの習得・成長に大幅なプラス補正がかかるというもの。 しかし、その代わりにスキルレベルの最大値が『レベル3』になってしまうというデメリットがあった。 ユーリの加護の正体を知ったミゲルは、大きな期待から一転、失望する。何故ならば、ユーリの剣は既に成長限界を向かえていたことが判明したからだ。 有力な騎士を排出することで地位を保ってきたグランマード家において、ユーリの加護は無価値だった。 【剣術】スキルレベル3というのは、剣を生業とする者にとっては、せいぜい平均値がいいところ。王都の騎士団に入るための最低条件すら満たしていない。 そんなユーリを疎んだミゲルは、ユーリが妾の子だったこともあり、軟禁生活の後に家から追放する。 ふらふらの状態で追放されたユーリは、食料を求めて森の中へ入る。 そこで出会ったのは、自らを魔女と名乗る妙齢の女性だった。 魔女に命を救われたユーリは、彼女の『実験』の手伝いをすることを決断する。 その内容が、想像を絶するものだとは知らずに――

序盤で殺される悪役貴族に転生した俺、前世のスキルが残っているため、勇者よりも強くなってしまう〜主人公がキレてるけど気にしません

そらら
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ 大人気ゲーム「剣と魔法のファンタジー」の悪役貴族に転生した俺。 貴族という血統でありながら、何も努力しない怠惰な公爵家の令息。 序盤で王国から追放されてしまうざまぁ対象。 だがどうやら前世でプレイしていたスキルが引き継がれているようで、最強な件。 そんで王国の為に暗躍してたら、主人公がキレて来たんだが? 「お前なんかにヒロインは渡さないぞ!?」 「俺は別に構わないぞ? 王国の為に暗躍中だ」 「ふざけんな! 原作をぶっ壊しやがって、殺してやる」 「すまないが、俺には勝てないぞ?」 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル総合週間ランキング40位入り。1300スター、3800フォロワーを達成!

Dマシンドール 迷宮王の遺産を受け継ぐ少女

草乃葉オウル
ファンタジー
世界中にダンジョンと呼ばれる異空間が現れてから三十年。人類はダンジョンの脅威に立ち向かうため、脳波による遠隔操作が可能な人型異空間探査機『ダンジョン・マシンドール』を開発した。これにより生身では危険かつ非効率的だったダンジョンの探査は劇的に進み、社会はダンジョンから得られる未知の物質と技術によってさらなる発展を遂げていた。 そんな中、ダンジョンともマシンとも無関係な日々を送っていた高校生・萌葱蒔苗《もえぎまきな》は、突然存在すら知らなかった祖父の葬儀に呼ばれ、1機のマシンを相続することになる。しかも、その祖父はマシンドール開発の第一人者にして『迷宮王』と呼ばれる現代の偉人だった。 なぜ両親は祖父の存在を教えてくれなかったのか、なぜ祖父は会ったこともない自分にマシンを遺したのか……それはわからない。でも、マシンを得たならやるべきことは1つ。ダンジョンに挑み、モンスターを倒し、手に入れた素材でマシンをカスタム! そして最強の自分専用機を造り上げる! それが人を、世界を救うことに繋がっていくことを、蒔苗はまだ知らない。

当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!

処理中です...