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一〇
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そのまま三㎞くらい進んだだろうか。
足に装着した不思議な器具のお陰で、全く何の問題もなく進めた。
むしろこれが無かったら、健康な状態でもこれほど進めなかったに違いない。
本当に不思議なアイテムだ。
折れている足に少しも負担が掛かっていないのが判る。
「おい、ここはどうだ。登れそうか?」
オオムカデンダルが振り返って問い掛けてきた。
無理だろこんなの。
さっきの崖と全く同じに見える。
なぜこれが登れると思うのか。
「さっきの崖より少し低いし、傾斜もわずかにあるだろ。どうだ?」
オオムカデンダルが崖を指さす。
さっきより低い……のか?
俺には違いが判らない。
「さあ、どうかな。もし登れるならアンタが試しに登ってみてくれよ。参考にするよ」
俺は意地悪してやろうと、わざとオオムカデンダルに登って見せるように仕向けた。
登れるもんなら登ってもらおうじゃないか。
「そうだな。俺の登りじゃ手本にはならんだろうが、一応やってみるからよく見とけよ」
オオムカデンダルはそう言いながら崖に近付いた。
よく見とけよだ?
登れなかったら指をさして笑ってやるからな。
俺は鼻で笑いながらオオムカデンダルの背中を見つめた。
「よっと」
オオムカデンダルはわずかな取っ掛かりに指を掛けると、そのままするすると登って行った。
足場もないその崖を、ほぼ握力と腕力だけであっという間に登りきってしまった。
信じられない。
冒険者がどうとかそんな次元の話では無かった。
「凄い……」
無意識に俺は呟いていた。
「おーい。どうだ、登れそうか?」
崖の上からオオムカデンダルが声を掛けてきた。
「あ、いや……ちょっと無理そうだな。すまない」
俺は申し訳なさそうにそれだけ言うのが関の山だった。
「仕方ない。少し待ってろ」
そう言うとオオムカデンダルは崖の上から姿を消した。
どうするつもりだ。
まさか、ここに置いてでも行かれたら俺は村に帰ることさえ困難になってしまう。
一人でそんな事を考えていると、いつの間にか戻ってきていたオオムカデンダルが上からロープを降ろしてきた。
「引っ張り上げてやるから体に巻き付けろ」
そう言いながらオオムカデンダルはロープの端をしっかりと握った。
俺は言われるままにロープを肩から斜めに体へ巻き付けた。
「いいか、合図と同時にその補助器を装着した方の足で思いっきりジャンプしろ。その瞬間に引っ張るからな」
俺は自分の右足に装着された器具を見た。
「あ、そうだ。その前に補助器のパワーを上げておけ」
補助器のパワーを上げる?
何の事だ?
「膝の横の所につまみが有るだろ。それを大きく動く方に回せ。回らなくなるまで回していいぞ」
膝の横?
小さな出っ張りがある。これか?
俺は言われたようにそれをつまむと、たくさん回せる方へと限界まで回した。
ヴーン……
虫の羽音のような音が一際大きくなった。
「真上へジャンプしろ。ここへ、ひとっ飛びに飛び乗るつもりで跳べ。いいな」
どういう意味があるのか判らないがとりあえず言われたようにする。
あの凄い登りを見せられた後では素直に言うことを聞く気にもなる。
「じゃあいくぞ、せーの……飛べッ!」
オオムカデンダルの合図に合わせて、俺は思いっきりジャンプした。
足に装着した不思議な器具のお陰で、全く何の問題もなく進めた。
むしろこれが無かったら、健康な状態でもこれほど進めなかったに違いない。
本当に不思議なアイテムだ。
折れている足に少しも負担が掛かっていないのが判る。
「おい、ここはどうだ。登れそうか?」
オオムカデンダルが振り返って問い掛けてきた。
無理だろこんなの。
さっきの崖と全く同じに見える。
なぜこれが登れると思うのか。
「さっきの崖より少し低いし、傾斜もわずかにあるだろ。どうだ?」
オオムカデンダルが崖を指さす。
さっきより低い……のか?
俺には違いが判らない。
「さあ、どうかな。もし登れるならアンタが試しに登ってみてくれよ。参考にするよ」
俺は意地悪してやろうと、わざとオオムカデンダルに登って見せるように仕向けた。
登れるもんなら登ってもらおうじゃないか。
「そうだな。俺の登りじゃ手本にはならんだろうが、一応やってみるからよく見とけよ」
オオムカデンダルはそう言いながら崖に近付いた。
よく見とけよだ?
登れなかったら指をさして笑ってやるからな。
俺は鼻で笑いながらオオムカデンダルの背中を見つめた。
「よっと」
オオムカデンダルはわずかな取っ掛かりに指を掛けると、そのままするすると登って行った。
足場もないその崖を、ほぼ握力と腕力だけであっという間に登りきってしまった。
信じられない。
冒険者がどうとかそんな次元の話では無かった。
「凄い……」
無意識に俺は呟いていた。
「おーい。どうだ、登れそうか?」
崖の上からオオムカデンダルが声を掛けてきた。
「あ、いや……ちょっと無理そうだな。すまない」
俺は申し訳なさそうにそれだけ言うのが関の山だった。
「仕方ない。少し待ってろ」
そう言うとオオムカデンダルは崖の上から姿を消した。
どうするつもりだ。
まさか、ここに置いてでも行かれたら俺は村に帰ることさえ困難になってしまう。
一人でそんな事を考えていると、いつの間にか戻ってきていたオオムカデンダルが上からロープを降ろしてきた。
「引っ張り上げてやるから体に巻き付けろ」
そう言いながらオオムカデンダルはロープの端をしっかりと握った。
俺は言われるままにロープを肩から斜めに体へ巻き付けた。
「いいか、合図と同時にその補助器を装着した方の足で思いっきりジャンプしろ。その瞬間に引っ張るからな」
俺は自分の右足に装着された器具を見た。
「あ、そうだ。その前に補助器のパワーを上げておけ」
補助器のパワーを上げる?
何の事だ?
「膝の横の所につまみが有るだろ。それを大きく動く方に回せ。回らなくなるまで回していいぞ」
膝の横?
小さな出っ張りがある。これか?
俺は言われたようにそれをつまむと、たくさん回せる方へと限界まで回した。
ヴーン……
虫の羽音のような音が一際大きくなった。
「真上へジャンプしろ。ここへ、ひとっ飛びに飛び乗るつもりで跳べ。いいな」
どういう意味があるのか判らないがとりあえず言われたようにする。
あの凄い登りを見せられた後では素直に言うことを聞く気にもなる。
「じゃあいくぞ、せーの……飛べッ!」
オオムカデンダルの合図に合わせて、俺は思いっきりジャンプした。
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