見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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 俺は事実を語ろうとした。
さっきまであんなにいきり立っていたのに、それを口にし始めると何故か彼らの顔を見られなかった。

 全滅した事も、自分だけが逃げ延びた事も、全て事実だったからだ。

「化け物か……」

 オオムカデンダルはそう言って腕組みをした。
何かを考えているようだ
彼の反応は予想外だった。
小馬鹿にされるのかと思っていた。

「アレじゃないの」

 上座に座っている少年が突然口を開いた。
確かフィエステリアームと呼ばれていたか。

「アレ?」

 オオムカデンダルはピンと来ないと言う顔をしている。

「この先に何か妙な反応があったろう。アレじゃないの」

 フィエステリアームが抑揚のない声で言う。

「……お、アレかあ」

 彼も何かを思い出したようにフィエステリアームを見た。
何か知っているのか。

「アレとはなんだ?」

 俺は思わず身を乗り出して尋ねた。

「いや、知らん」

 俺は思わず『は?』と声に出していた。

「お前が言っていた辺りに、そう言えば最近妙なのがウロウロしていたなって事を思い出しただけだ」

 なんだって?
知っていたのか?
どうやって知ったというのか。
目撃したのに無事に逃げ切ったと言うのか。

 ミラーナイトクラスのレンジャーが逃げ切れなかったと言うのに。

「知っていただって?一体どうやって?」

「面倒くさいから説明はしない。ここから出なくても俺たちにはそれを知る方法があるってだけさ。まあ、ヤツが何者かってことまでは知らんけど」

 言っている事がさっぱり判らない。
探知系の魔法?
魔法使いがこの中に居るという事か?

 しかし、俺のパーティーにもマジシャンとプリーストが居たが魔力探知には何も反応しなかったのに。
 
「偵察機を使えば?」

 女が口を挟んだ。

「なるほど……あ、いややっぱいい」

オオムカデンダルは一瞬納得しかけて、やっぱりいいやと立ち上がった。

「暇だし直接行ってくる。何もなければそれで良いし、鬼とか蛇とか出るならそれも良いしな」

「お前、ここから出るの何十年ぶりだろ。大丈夫か?」

 向かいに座るインテリ風の男が、まるで問題児を見るような目でオオムカデンダルを見た。

 彼らの事はよく知らないが、何故だかその気持ちは判る気がした。

「大丈夫でしょう。この世界に私たちの天敵など居ないわ。ベクターシードも居ないのだから」

 女が静かに言った。

「いつベクターシードが我々の天敵になったと言うんだ」

 インテリ男が気色ばむ。

「だってお前負けたことあるだろ」

 オオムカデンダルがキョトンとして言った。

「僕は負けてなどいない。君こそ負けただろう!」

「そうなんだよなあ。あの時はホント参っちゃったぜ、マジで死ぬかと思ったもんな」

 そう言ってオオムカデンダルは頭を掻いた。

「……一体何なんだ彼らは」

 俺は彼らこそ得体が知れないなと思った。
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