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魔王になりました
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どうも、ついさっき階段から落ちて死んだ茅場祐太(かやば ゆうた)です。今、神様とやらに審判されています。でも、なんだか様子がおかしいです。
「はぁ!? 魔王がまたやられた!? 誰よ、彼に勇者をやらせようとか言い出した奴! ここ数ヶ月で魔王が十人も屠られるって、頭おかしいんじゃないの!?」
えっと、これは公平な審判でしょうか? なんだか、先程から魔王がどうの、勇者がどうのって言葉しか聞こえないんですけど。
白く光る魂に成り果てた俺はプカプカと宙を浮かびながら、目の前で仕事に追われている女の神様をじっと見ていた。カリカリと頭を掻きむしる女の神様はギロっと俺の方を向くと、はあ、とあからさまにため息をついた。
「こんのクソ忙しい時に死んでんじゃないわよ! 神様困らせてそんなに楽しいの!?」
そんなことを言われましても……。こちらとしても階段の前が何故か油まみれで、しかも体育の後に化学の移動教室でそこを通らなくちゃいけなくて、急いでいたら気づかずに滑って落ちるとは思わないじゃないですかー。
もうひとつ言わせてもらえれば、階段から転げ落ちて死ぬとは誰も予想打にしないだろうに。
女の神様は俺に向けてではなく、先程から話に出ている魔王とやらの対処に忙しいらしく、一向に俺の審判をしてくれない。これでは死んだまま放置になりかねないのだが、霊体になってしまった俺に何ができるというのだろうか。
ふと、じっと立っていた俺に何かいいことを思いついたかのようにこちらを見る女の神様。にやりと笑うと、審判を始めると急に話を進めてきた。
「で、審判を始めようと思うけど。このまま行ったらあなたは確実に霊体としての死刑、つまり世界から存在そのものを消されるわ。まあ、要するに虚無に落ちるってことね。さぁーて、そこで提案よ!」
「……提案って?」
「あなた、魔王になりなさい! 今ちょーど、二日前に復活した魔王が颯爽と屠られたの。このままだと世界のバランスっていうのが崩壊しちゃうわ。だから、あなたが魔王になって、勇者と戦いなさい」
「えっと、仮にも神様ですよね? 魔王とか、復活させていいんですか?」
「え? なんでダメなの?」
それを聞いているんですけど……。
そもそも、と、女の神様は続ける。
「魔王って言うのは喩えれば土よ。で、勇者は水。二つが組み合わさることで、草木が芽生えるわけよ」
「……その喩えがさっぱりわからないんですけど」
「まあ、要するに、世界が存在するには勇者と魔王が絶対に必要ってこと。争いが絶えないのはそういうわけよ」
どういうわけですかね!?
適当過ぎる神様に驚きながら、俺は冷静に魔王になるなんて無理だと告げる。
「俺には魔王になれるほどの力はありませんよ?」
「大丈夫! そのくらいぱぱっと用意してあげるわ! どうする? 魔獣にする? 魔剣にする? バランスがおかしくなるかもだから強い武器はあげられないけど……」
「えっと、魔王になればどうなるんですか?」
「そうね。一度死んでるっていう前代未聞があるから、少しだけ調整が必要だと思うけど。まあ、少しだけ体の器官がおかしくなると思うけど大丈夫よ!」
何を根拠に大丈夫と言っている!? ……でも、生き返るにはそれしかないのかー。
一分くらいの時間を労して俺は生き返ることを決断する。背に腹は変えられないという言葉があるが、この場合がそれだろう。
「そう! やってくれるのね! よかったわー! 数ヶ月前に現れた勇者がめっぽう強くて。もう二桁の魔王がやられたよのー」
すごく、やる気を失ってきました。
そもそも、なんでそんな強い勇者が現れたんだよ。しかも、タイミングよく俺が死んで魔王として復活とか、ありえないでしょ。はあ、不運だ……いや、生き返られるから幸運なのか?
特によくわかっていないが、とりあえず死んだはずの俺は、魔王として生き返れるようだ。人間としてではないというのが少しだけ考えようだが。
話を進めていくうちに、女の神様は俺に力を与えなければならないと言って、急いでなにやらカタログみたいな物を取り出す。そして、それを広げると、その中から三つだけ選べと言ってきた。
「そうよね! あなたは普通の人間だったのだから、少しくらいチートでも構わないわよね!」
「それはいったい誰に言っているので?」
「いいの! さあ、選びなさい! おすすめはダインスレイフとレーヴァテイン。それに私よ!」
「じゃあ、その三つで」
「なんだって、私は女神様と呼ばれる、北欧神話のフレイヤ……え? いや、冗談だったんだけど……って、え!? ちょっと! なによ決議で決まったことだって!」
何故かおすすめを選ばれただけで焦り出し、どこからともなく声をかける女神様。どうやら、女神様にはほかの神様が見えているようだ。
焦りに焦って、女神様はジトッと俺の方を見る。すると、何かに気がついたようにうんうんと頷く。
「あなた、隠れイケメンって感じね! 普通な顔に、普通な格好! うん。こういうのもたまにはいいかもしれないわ!」
「えっと、何がですか?」
「私、北欧神話、女神の人柱であるフレイヤは、新たな魔王である茅場祐太が死ぬまでを契機としてアドバイザーになるわ! それでいいのでしょう、神々よ!」
俺の知らぬところで話が進んでいくのだが、誰か説明してくれません? てか、ほかの神様はやっぱりここにいるの?
霊体の俺には全くわからないが、神様たちの中で意見が一致したらしく、女神様、フレイヤさんは霊体である俺を抱き寄せると、
「さあ、行くわよ。目的は……そうね。勇者をボコボコにしてきましょう」
光に包まれる中で、フレイヤさんはそう笑顔で告げるのであった。
「はぁ!? 魔王がまたやられた!? 誰よ、彼に勇者をやらせようとか言い出した奴! ここ数ヶ月で魔王が十人も屠られるって、頭おかしいんじゃないの!?」
えっと、これは公平な審判でしょうか? なんだか、先程から魔王がどうの、勇者がどうのって言葉しか聞こえないんですけど。
白く光る魂に成り果てた俺はプカプカと宙を浮かびながら、目の前で仕事に追われている女の神様をじっと見ていた。カリカリと頭を掻きむしる女の神様はギロっと俺の方を向くと、はあ、とあからさまにため息をついた。
「こんのクソ忙しい時に死んでんじゃないわよ! 神様困らせてそんなに楽しいの!?」
そんなことを言われましても……。こちらとしても階段の前が何故か油まみれで、しかも体育の後に化学の移動教室でそこを通らなくちゃいけなくて、急いでいたら気づかずに滑って落ちるとは思わないじゃないですかー。
もうひとつ言わせてもらえれば、階段から転げ落ちて死ぬとは誰も予想打にしないだろうに。
女の神様は俺に向けてではなく、先程から話に出ている魔王とやらの対処に忙しいらしく、一向に俺の審判をしてくれない。これでは死んだまま放置になりかねないのだが、霊体になってしまった俺に何ができるというのだろうか。
ふと、じっと立っていた俺に何かいいことを思いついたかのようにこちらを見る女の神様。にやりと笑うと、審判を始めると急に話を進めてきた。
「で、審判を始めようと思うけど。このまま行ったらあなたは確実に霊体としての死刑、つまり世界から存在そのものを消されるわ。まあ、要するに虚無に落ちるってことね。さぁーて、そこで提案よ!」
「……提案って?」
「あなた、魔王になりなさい! 今ちょーど、二日前に復活した魔王が颯爽と屠られたの。このままだと世界のバランスっていうのが崩壊しちゃうわ。だから、あなたが魔王になって、勇者と戦いなさい」
「えっと、仮にも神様ですよね? 魔王とか、復活させていいんですか?」
「え? なんでダメなの?」
それを聞いているんですけど……。
そもそも、と、女の神様は続ける。
「魔王って言うのは喩えれば土よ。で、勇者は水。二つが組み合わさることで、草木が芽生えるわけよ」
「……その喩えがさっぱりわからないんですけど」
「まあ、要するに、世界が存在するには勇者と魔王が絶対に必要ってこと。争いが絶えないのはそういうわけよ」
どういうわけですかね!?
適当過ぎる神様に驚きながら、俺は冷静に魔王になるなんて無理だと告げる。
「俺には魔王になれるほどの力はありませんよ?」
「大丈夫! そのくらいぱぱっと用意してあげるわ! どうする? 魔獣にする? 魔剣にする? バランスがおかしくなるかもだから強い武器はあげられないけど……」
「えっと、魔王になればどうなるんですか?」
「そうね。一度死んでるっていう前代未聞があるから、少しだけ調整が必要だと思うけど。まあ、少しだけ体の器官がおかしくなると思うけど大丈夫よ!」
何を根拠に大丈夫と言っている!? ……でも、生き返るにはそれしかないのかー。
一分くらいの時間を労して俺は生き返ることを決断する。背に腹は変えられないという言葉があるが、この場合がそれだろう。
「そう! やってくれるのね! よかったわー! 数ヶ月前に現れた勇者がめっぽう強くて。もう二桁の魔王がやられたよのー」
すごく、やる気を失ってきました。
そもそも、なんでそんな強い勇者が現れたんだよ。しかも、タイミングよく俺が死んで魔王として復活とか、ありえないでしょ。はあ、不運だ……いや、生き返られるから幸運なのか?
特によくわかっていないが、とりあえず死んだはずの俺は、魔王として生き返れるようだ。人間としてではないというのが少しだけ考えようだが。
話を進めていくうちに、女の神様は俺に力を与えなければならないと言って、急いでなにやらカタログみたいな物を取り出す。そして、それを広げると、その中から三つだけ選べと言ってきた。
「そうよね! あなたは普通の人間だったのだから、少しくらいチートでも構わないわよね!」
「それはいったい誰に言っているので?」
「いいの! さあ、選びなさい! おすすめはダインスレイフとレーヴァテイン。それに私よ!」
「じゃあ、その三つで」
「なんだって、私は女神様と呼ばれる、北欧神話のフレイヤ……え? いや、冗談だったんだけど……って、え!? ちょっと! なによ決議で決まったことだって!」
何故かおすすめを選ばれただけで焦り出し、どこからともなく声をかける女神様。どうやら、女神様にはほかの神様が見えているようだ。
焦りに焦って、女神様はジトッと俺の方を見る。すると、何かに気がついたようにうんうんと頷く。
「あなた、隠れイケメンって感じね! 普通な顔に、普通な格好! うん。こういうのもたまにはいいかもしれないわ!」
「えっと、何がですか?」
「私、北欧神話、女神の人柱であるフレイヤは、新たな魔王である茅場祐太が死ぬまでを契機としてアドバイザーになるわ! それでいいのでしょう、神々よ!」
俺の知らぬところで話が進んでいくのだが、誰か説明してくれません? てか、ほかの神様はやっぱりここにいるの?
霊体の俺には全くわからないが、神様たちの中で意見が一致したらしく、女神様、フレイヤさんは霊体である俺を抱き寄せると、
「さあ、行くわよ。目的は……そうね。勇者をボコボコにしてきましょう」
光に包まれる中で、フレイヤさんはそう笑顔で告げるのであった。
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