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第2章〜冒険の果て

64話〜提案と囮(おとり)と逃走と

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 ここはマルベールの街。ガルド達は池の側で、ジルフォードに悟られずどう逃げたらいいか話し合っていた。

「どうする?このままこうしていても、ジルフォードに見つかるのも時間の問題だと思うんだが。」

「ガルドの言う通り、ここにいるのは不味いわよね。」

 マリアンヌがそう言うとビスカは少し考えていたが何かを思いつき、

「ねぇ。ジルフォードから逃げ切れれば良いんだよね?」

「ん?ああ、そうだが。何かいい方法でもあるのか?」

「ん~、あるって言えばあるんだけど。ただ、成功するかどうかは、これを行う人次第なんだけどね。」

「ビスカ。それはどんな方法なの?」

「ユリィナ、その方法はね。誰かがおとりになってジルフォードを引きつけている間に、グドルフマグドの所まで行き、逃げるって感じなんだけど。どうかなぁ?」

「なるほどな。だが、この中でそれを誰がやるんだ?」

 そう言うと、ユリィナ達は一斉にガルドを指差した。

「はぁ、何で俺なんだ?」

「それは勿論、この中で強いのはガルドしかいないしね。ジルフォードはガルドに用があるみたいだし。それに、グドルフはジルフォードに見つかると不味いんでしょ?」

「ジェシカ。確かにそうかもしれねぇ。だが、おとりになって引きつけるのは良いとして、逃げ切れる自信がねぇんだがな。ん~、まぁ仕方ねぇ俺がやるしかねぇかぁ。他にやれる奴はここにいねぇだろうしな。」

「そういう事。じゃ、方法をちゃんと説明するね。私がグドルフに連絡するから。その後、ガルドが先にこの場から離れ、わざとジルフォードに見つかり逃げ出し遠ざけた後、その間に私達はグドルフと合流して逃げる。あっ、そうだガルド。通信用の水晶持ってるかな?」

「あっ!そうだった。そういやぁグドルフに渡された通信用の水晶が、確かポケットに入ってるはずなんだが。」

 そう言うとガルドはポケットから通信用の水晶を取り出した。

「じゃ、大丈夫そうだね。」

 そう言うとガルドは頷き、ビスカは通信用の水晶を使いグドルフに連絡した。

 そして、ビスカがグドルフに連絡したのを確認すると、ガルドはジルフォードに気付いていないフリをしながら道にでた。

 すると、ジルフォードはガルドを見つけ声を掛けてきた。

「これはこれはガルド様、ここに居られたのですね。」

 ガルドは声を掛けられ驚いたフリをし、ジルフォードが向かってくる方とは別の方へと逃げた。

 それを見たジルフォードは、何故逃げるのかと不思議に思ったが、ガルドの事を追った。

(はて?何故ガルド様は逃げるのか?ん~もしや、街道での事を怒っているのか?それならば、謝らなければならないが。果たしてこの私が、ガルド様の脚に追いつけるのか?)

 ジルフォードがガルドを追い通り過ぎた事を確認すると、

(ガルド大丈夫よね?)

 ユリィナはそう思いながら、グドルフ達の方へ向かった。

(ガルド1人で逃げ切れるかしら?)

 マリアンヌはガルドを心配そうに見ながら、グドルフ達の方へ移動した。

(ガルドなら追い付かれても強いから大丈夫。)

 ジェシカはそう思い、ユリィナ達の後を追った。

(あ~えっと。ガルドそんなに速く走らなくても大丈夫だと思うんだけどなぁ~。これじゃジルフォードが、ガルドを見失っちゃうんじゃないかなぁ。ん~まぁいっかぁ。何とかなるでしょ。)

 ビスカはガルドとジルフォードを見た後、そう思いながら白い建物と茶色の建物の間にいる、グドルフ達の方に移動した。

 そして、ガルドはジルフォードからひたすら逃げ、グドルフ達は建物の物陰からその光景を見ていた。
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