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第2章〜冒険の果て

62話〜策案

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 ここはマルベールの街。グドルフマグドとマルティスはレフィカルに辺りの監視を任せ、建物と建物の間の奥へと進み行き止まりまでくると、

「この辺なら気づかれる事もなく話せるでしょう。」

「ああ。そうだな。それで俺が誰なのか分かった上で、ここで話をするという事なんだよな?」

「はい。勿論でございます。私はマルティス=ジェルマと申し、モルケノフ様の配下の者でございます。まさかこのような所で貴方様にお会いするとは思いもよりませんでした。」

「それで俺に何の用があると言うのだ?」

「それでは、単刀直入にお聞きしたいと思います。マグド王子、何故シェイナルズ城を出てここにおられるのですか?」

「マルティス。その事については薄々勘付いているのではないのか?」

「ええ、そうですね。ただ、確証が持てませんでしたので。それに、何故ガルド様と旅をされているのかも気になりましたので。」

「なるほどそういう事か。俺が城を抜け出しガルドと旅をしているのは……。」

 マグドはマルティスに城を抜け出しガルドと旅をする事になった経緯と現在何故ジルフォードから逃げているのかを話した。

「……では、そのジルフォードは、マグド王子がガルド様と一緒にいる事には気付いていないという事なのですね。」

「ああ、そうなるな。だが、ジルフォードは昔からやたらと勘が鋭い。気づかれるのは時間の問題だろう。」

「確かに、そうかもしれません。先程偶然馬車乗り場でお会いし話をしましたが、あのジルフォードから普通とは違う脅威的何かを感じました。」

「そうか、ジルフォードと馬車乗り場でな。そうなるとマルティス。今の話の様子だとジルフォードが貴方の事に気付いていた可能性が高い。」

「ええ、あの様子だと私がモルケノフ様の配下の者だという事に気付いていたのは間違いありません。それとジルフォードは宣戦布告を言い立ち去りました。」

「ふぅ、マルティス申し訳ない。ジルフォードは悪い奴ではないのだがな。」

「いえいえ、マグド王子が謝られる事ではありません。恐らくガルド様が我が国シャインスプラウトに引き込まれると思い焦っておられたのかもしれません。」

「ん?それはどういう事なのだ。マルティスは、ガルドをシャインスプラウトに引き込む為に動いていた訳じゃないというのか?」

「はい。私はあくまでモルケノフ様の命で動いております。そして、モルケノフ様もそのつもりはなくただ、どうしてもガルド様にお願いしたい事があるだけなのです。ですが、ここでそれを話す訳にはいかないのです。」

(どういう事だ?ガルドを引き込む為じゃないなら、いったい何が目的だというのだ?)

「そうか、それなら仕方ない。それでだが、マルティス。俺の頼みを聞いて欲しいのだが?」

「頼みとは何でしょうか?可能な事であればお聞きしますが。」

 そう言うと、マグドはマルティスに自分が王子である事をジェシカとレフィカルに内緒にしてほしいと頼んだ。

 マルティスは頷き、モルケノフの前では間違いなく正体が分かってしまうだろうと言い提案をしてきた。

「マグド王子。いい案があります。」

「いい案とは?」

「はい。ジェシカさんとレフィカルさんに正体を知られなければいいのですよね?」

「ああ、そうだが。何かいい方法があるのか?」

「いい方法というか、単純な方法ですが。ジェシカさんとレフィカルさん以外、マグド王子の正体を知っているのであればお二人だけは他で待機して頂きモルケノフ様の前でお話になってはいかがでしょうか?」

 マグドはマルティスにそう言われ少し考えた後、

「確かに、その方法しかないな。だが、俺がそこに赴いても大丈夫なのか?」

「それは大丈夫です。私がフォローしますので。」

「すまないマルティス殿、よろしく頼む。」

 そう言うとマルティスは笑みを浮かべ軽く頷くと、

「あっ!そうそう、ガルド様の所に速く向かわなければなりませんが。マグド王子、何処に居られるかご存知ですよね?」

 マルティスがそう言うとマグドは頷いた。

 そして、マグドはマルティスをガルドがいる所まで案内する事になった。マグドとマルティスはレフィカルの所まで行き合流すると、ジルフォードを警戒しながらガルド達がいる池の方に向かった。
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