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第2章〜冒険の果て

60話〜過去の記憶と警戒

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 ここはマルベールの街。ガルド達3人は池を眺めクッキーを食べながら話をしていた。

 ガルドはユリィナとマリアンヌの間に挟まれどうしていいか分からずにいた。

「ねぇ、ガルドは1人で暮らしてたのよね?」

「ユリィナ。ああ、そうだが?」

「まぁ、そうなのですね。でも、何故1人で暮らしていたのですか?」

「マリアンヌ。何でと言われてもな……。」

 ガルドはマリアンヌに聞かれ昔の事を思い出し俯いてしまった。

 ユリィナがそれに気づき、

「あっ!そうそう……。」

 話題を変えようとしたが、ガルドは話し出した。

「……俺が10歳ぐらいの時だったと思う。その頃、国は他国と戦争をしていたらしい。ある日村に他国の兵士達が押し寄せてきた。親父と母さんは兵士達と戦い、村と俺を守って死んだらしいが、何でか分らねぇが、記憶が曖昧で良く覚えてねぇんだよな。ただ、あの時、親父は……いや、何でもねぇ。てか、何でこんな事を話してんだろうな。」

「ガルド……ごめんね。つらい過去を思い出させちゃったみたいだね。」

「ユリィナ。いや別に大丈夫だ!記憶が曖昧なせいか、それほどつらくはねぇしな。」

「そうだったのですね。ガルド、知らなかったとはいえ聞いてしまいごめんなさい。でも、つらくないなんて本当なのですか?御両親がいないなんて、私なら考えられませんわ。」

「マリアンヌ。そうか、でも俺は本当に両親がいない事に関しては、さほどつらいと思った事はねぇ。ただ、他の事でつらいと思った事は何度もあるけどな。だが、それはそれで何とかのりきってきた。」

 ユリィナとマリアンヌはガルドが不憫に思えてきて、この先どう接していけばいいか考えてしまった。

 ガルドはユリィナとマリアンヌが黙ってしまい、この話をしなければよかったと後悔していた。

「あっ!そういえば、そろそろシャインスプラウト行きの馬車が来る頃じゃねぇのか。」

「そういえば、確かにそうね。」

 ガルド達は立ち上がり馬車乗り場に行こうとした。

 すると、そこにビスカとジェシカがガルドを見つけ駆け寄ってきた。

「あっ!良かった~。ここにいたんだね。」

「た、大変なの、早くここから離れないと!」

「ん?ビスカにジェシカ。そんなに息を切らしてどうしたんだ?」

 ガルドがそう聞くとユリィナが後からきて、

「どうしたの?大変って何が起きたというの?」

「ジルフォードが馬車乗り場にいてね。その事をガルド達に知らせに来たんだけど。」

「ビスカ。ジルフォードがもうこの街に来たというの?」

 マリアンヌがそう言うとガルドは少し考えたあと、

「んー……思ったより、目が覚めここに来るのが早かったみてぇだな。それで、グドルフはどうしたんだ?」

「グドルフもレフィカルと一緒にガルドの事を探してるよ。あっ!そうだった。ガルドがみつかったら通信用の水晶で連絡するんだった。」

 ビスカはそう言い、通信用の水晶を取り出しマグドに思念を送った。

 “マグド聞こえる?”

 “ああ、ビスカ聞こえる。ガルドはみつかったのか?”

 “うん。今、池の方にいるけど。これるかな?”

 “分かった。今、行く……って、ちょっと待て、まずいジルフォードがこっちに向かって来ている。俺とレフィカルは、何とかこの場を切り抜けてそっちに向かうが、ビスカの方も気をつけてくれ。”

 “うん、分かった。マグドも気をつけてね。”

 ”ああ、そうだな。無事ビスカの元にたどり着く!そろそろ通信を切った方が良さそうだ。”

 マグドは通信を切った。それを確認するとビスカは通信の水晶をポケットにしまった。

 そして、ビスカはその事をガルド達に話すと、ひとまずここを動かないで様子を見ながらマグドとレフィカルがくるのを待つ事にしたのだった…。
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