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最終章〜終結。そして始まる

131話〜立ちはだかるデューマンの女{★}

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 その頃ユウは、妹のノエルのほうへと向かいながら、向かってくる敵と戦っていた。

(早く、ノエルのところに行かないと。だけど、コイツらを倒さないと無理だろうしなぁ)

「おい! お前、なかなかやるようだな」

 赤黒い髪で体格のいいデューマンの女性が、ユウの前に立ちはだかった。

「クッ、あと少しってとこで……」

「それに、いい面構えをしている。勇者にしておくには惜しい。どうだ? ウチと手を組まないか」

 そう言われユウは困惑していた。なんでそんなことを言われ、こんな状況で誘って来たのか分からなかったからだ。

「どういう事だ? 言っている意味が……分からない」

「クスッ。実はウチらのボスが、よりにもよってテリオス王子に捕まった。それで、今どうするか悩んでいる」

「それって……」

 ユウが話そうとするが、体格のいいデューマンの女はそれを遮り淡々と話し始める。__

「……なるほどな。お前は、俺が強いと認識した。だから……仲間に引き入れようと……思った。それと今の自分たちでは、統率力がない。だから……」

「そうウチらみたいな者を、引っ張っていってくれる者はそういない」

 自信満々に体格のいいデューマンの女が言った。

「俺に、そんな大それたことができるようにみえるのか?」

「ああ。十分あるようにみえる! だが、自信がないような話し方をするのはどうかと思うがな」

「……」

(どうする? この女は、俺がボスになればヤツらから手を引くって言っている。
 だけど、長くこの世界にいるつもりはない。そうなると……)

「黙り込んでどうした? 悪い話じゃないと思うが」

「ああ、そうだな。だが俺は、この世界の人間じゃない」

「そんなことは、最初から分かっている。次のボスが見つかるまで……いや、お前が元の世界に帰るまでの間で構わない」

 そう言われユウは悩んだ。これから、どんなことが起きるか分からない。確かに、コイツらと行動したほうがいい。と、思ったからだ。

 だが一つ、引っかかることがあった。

「分かった……といいたいが。なんでお前が、ボスになろうと思わなかったんだ?」

「そのことか。簡単だ! さっきまでだったらそうしていた。だがお前の戦い方をみて、ウチではダメだと確信した」

「なるほど……。だけど俺は、勇者として召喚されたわけじゃない」

 ユウがそう言うと、体格のいいデューマンの女は首を傾げる。

「どういう事だ? ……そういえば、異世界から魔王を召喚すると言っていた気がする。まさか、お前がそうなのか?」

「俺はいやだけど……そうらしい」

「そうか、お前がな。だが、まだ正式な儀式をしてないんじゃないのか?」

 そう言われユウは、ことわる理由をなくし、どうしたらいいか悩み始めた。

(どうする? 今後のために、こっちでの仲間はいたほうがいい。そうなると、この話に乗るのはアリだよな)

「……そういう事なら、いいだろう。ただし、俺は今から妹を助けに行く!」

「妹……。そういう事か。分かったウチらも手を貸そう! それとウチの名はダリア・グラッセだ」

「自己紹介……。俺は、ユウ・ライオルス。手を貸してくれるなら助かる」

 そう言うとユウは、急ぎノエルの元へと駆けだす。

 そしてダリアは、側で聞いていた仲間たちに指示を出すと、仲間と共にユウのあとを追った。
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