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子供時代
8 おにいさまとデートです 前編
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「おにいさま……」
「どうしたの?エミリア。」
「しょうぶです!!」
「え?」
それは私の6歳の誕生日前日の話。私はお兄様に勝負を申し込んでいた!!お兄様は不思議そうに目を丸くしているが、私の目は誤魔化せない。9歳になったお兄様はとても格好良くて優しい。が、最近好きな人がいるらしいという噂があるのだ!エミリアそんなの認めないんだから!9歳で恋愛なんてまだ早いわ!
今すぐ相手を突き止めてお兄様に相応しい相手か妹として見定めなければならないのだ。とはいえ素直にお兄様が教えてくれるとは思えない。だから勝負だ。
「別にいいけど…エミリアはまだ、僕に勝ったことないよね?」
「ふぐ。」
お兄様の最もな指摘に呻く。そうなのだ。残念なことに、私はまだ一度もお兄様に勝ったことが無い。頭脳でも身体能力でもお兄様には勝てないのだ。…いや、技術はね?大人ですから、勝てるはず…なんですよ?ほらなんせこんなちっちゃいから。身体が悪いんだ。
「だからかつんです!!しょーぶですしょ、う、ぶ!!」
「うーん…」
私の主張を聞いて困ったように苦笑したお兄様は、思いついたように私に優しい笑顔を投げかけてきた。うっ、今日も安定の美しさですね、お兄様。
「それよりも、エミリア。街に行きたがっていただろ?一緒に行ってみない?」
「!!まち…ですか!」
「うん、明日は誕生日だし、プレゼントも買ってあげるよ。」
「わーい!!うれしいです!!」
単純な私は勝負を仕掛けた件もその理由も完全に吹っ飛んだ。いやー、ずっと行きたかったんだよね。私箱入り娘だからさ。出掛けたことないんだよ。基本屋敷の中にミシェル王子とかアレン王子が来るだけだからさ。
一応お忍びなので町娘の格好をさせられる。お父様とお母様にはナイショだよ、とお兄様が人差し指を口に当ててウインクしてきたのではい!!ないしょにしますと元気よく返事をして口を塞がれた。でも、町娘の格好よりお兄様の服の方が格好良くていいなあ…スカートじゃなくてズボンが履きたい。ああ、懐かしい我が前世…。制服以外では意地でもスカート履かなかったなあ。パンツスタイルのデザインしかしていなかったし。
お兄様と警護役のデイヴと共に念願のお出かけに出発。ちなみにデイヴに言ったら物凄く反対されたが最後は半ば呆れたように承諾してくれた。彼が言う。「私が反対したところでどうせ二人で出かけるのでしょう」。よくわかってるね、デイヴ。
馬車に揺られていると、街の賑やかなざわめき、そして何やら美味しそうな香りが備考をつつく。
「おにいさま!!なにかおいしそうなかおりがします!!」
「そうだね。多分カレーの匂いじゃないかな。」
「かれー!?」
なんということだ。今世では諦めていたカレーがこんなところに!?我が家ではカレーが出てきたことがないから若干諦めていたのだ。まさかこんなところで出会えるなんて!それにしても、お兄様ってば結構抜け出し慣れていらっしゃる…?我が家で出たこともないカレーを匂いで気づくとは…。私がお兄様を見つめていると、しぃっと再び人差し指を口に当てて微笑んできた。
「カレー食べていく?」
もちろんですとも。元気に返事すると馬車を止めてもらい、街へと足を下ろした。色々な人達が楽しそうに話す街並みはどこか懐かしく、テンションがあがる。
「ねえねえおにいさま!!あのぶたいはなんですか!あ、あのおみせもきになります!」
「うんうん、カレー食べたあと見て回ろうか。」
「わーい!!おにいさますきー!!」
抱きつくといつもなら振り払ってくるお兄様が苦笑しながらも頭を撫でてくれた。今は淑女らしくない言動も許してくれるということなのだろう。えへへ。
お店に入って3人分のカレーを注文する。デイヴはいらないと遠慮してきたけど、これは私たちの気持ちだ。バレたらデイヴも怒られるのに付き合ってくれてありがとう、デイヴ。
「にしても…セシル様はいつの間に屋敷を抜け出して街へ来ていたんですか。」
「ああ、案外このくらいならタイミングを見れば行けるよ。ね、エミリア。」
運ばれてきた懐かしのカレーに夢中で話を聞いていなかったが、意味深な笑顔で同意を求めてきたお兄様にとりあえず笑顔を返してみた。美味しいです。ちょっと量多いけど。そんな私を呆れたように見てくるデイヴ。なんですか?なにか文句でも?
…それにしても、少し目立っている。服装は同じだけど、お兄様もデイヴも美少年だから、隠しきれないオーラがあるみたい。とりあえず早く食べようか。もぐもぐ。
「…うぇ…」
「そんなになるまで食べなくても、量がいっぱいなんだから残せばよかったのに。」
「だってもったいないじゃないですか!…うぅ、きもちわるい」
食べ終わった頃にはお腹いっぱいすぎて少し吐き気を催していた。いえ、吐きませんけど。吐きませんけど。少しだけでもデイヴにわけておけばよかったわ。ほかの食べ物も食べてみたかったのに、すっかり入りそうにない。…私の胃袋の小ささを悔やむ。
お兄様に手を引かれながら道を歩いていると、ショーウィンドウに飾られた可愛らしいデザインの服に目を止めた。ブラウスにサスペンダーとシンプルなデザインだけど、首元の飾りが可愛い。なにより、…ズボンで動きやすそう。多分子供服で少年用のものだと思うけれど、駄目元でねだってみることにしよう。
「…おにいさま。」
「だめだよ」
「まだなにもいってないです!」
「何が言いたいかはわかるよ。…女の子がなんで男物の服を欲しいと思うかなあ…」
「全くですね。それにエミリア様、こちらは庶民用の服ですよ?いろいろな意味で合いません。」
お兄様とデイヴに窘められるが私は納得がいかず、粘りに粘った。これでも私は結構粘着質なのだ。そして20分ほど押し問答を続けたあと、私はやっと勝利を果たしたのだった!
「はぁ…仕方ないなあ…これもお母様には内緒だからね?」
「はい、おにいさま!!」
こうして私は念願のズボンを手に入れた!!!
「どうしたの?エミリア。」
「しょうぶです!!」
「え?」
それは私の6歳の誕生日前日の話。私はお兄様に勝負を申し込んでいた!!お兄様は不思議そうに目を丸くしているが、私の目は誤魔化せない。9歳になったお兄様はとても格好良くて優しい。が、最近好きな人がいるらしいという噂があるのだ!エミリアそんなの認めないんだから!9歳で恋愛なんてまだ早いわ!
今すぐ相手を突き止めてお兄様に相応しい相手か妹として見定めなければならないのだ。とはいえ素直にお兄様が教えてくれるとは思えない。だから勝負だ。
「別にいいけど…エミリアはまだ、僕に勝ったことないよね?」
「ふぐ。」
お兄様の最もな指摘に呻く。そうなのだ。残念なことに、私はまだ一度もお兄様に勝ったことが無い。頭脳でも身体能力でもお兄様には勝てないのだ。…いや、技術はね?大人ですから、勝てるはず…なんですよ?ほらなんせこんなちっちゃいから。身体が悪いんだ。
「だからかつんです!!しょーぶですしょ、う、ぶ!!」
「うーん…」
私の主張を聞いて困ったように苦笑したお兄様は、思いついたように私に優しい笑顔を投げかけてきた。うっ、今日も安定の美しさですね、お兄様。
「それよりも、エミリア。街に行きたがっていただろ?一緒に行ってみない?」
「!!まち…ですか!」
「うん、明日は誕生日だし、プレゼントも買ってあげるよ。」
「わーい!!うれしいです!!」
単純な私は勝負を仕掛けた件もその理由も完全に吹っ飛んだ。いやー、ずっと行きたかったんだよね。私箱入り娘だからさ。出掛けたことないんだよ。基本屋敷の中にミシェル王子とかアレン王子が来るだけだからさ。
一応お忍びなので町娘の格好をさせられる。お父様とお母様にはナイショだよ、とお兄様が人差し指を口に当ててウインクしてきたのではい!!ないしょにしますと元気よく返事をして口を塞がれた。でも、町娘の格好よりお兄様の服の方が格好良くていいなあ…スカートじゃなくてズボンが履きたい。ああ、懐かしい我が前世…。制服以外では意地でもスカート履かなかったなあ。パンツスタイルのデザインしかしていなかったし。
お兄様と警護役のデイヴと共に念願のお出かけに出発。ちなみにデイヴに言ったら物凄く反対されたが最後は半ば呆れたように承諾してくれた。彼が言う。「私が反対したところでどうせ二人で出かけるのでしょう」。よくわかってるね、デイヴ。
馬車に揺られていると、街の賑やかなざわめき、そして何やら美味しそうな香りが備考をつつく。
「おにいさま!!なにかおいしそうなかおりがします!!」
「そうだね。多分カレーの匂いじゃないかな。」
「かれー!?」
なんということだ。今世では諦めていたカレーがこんなところに!?我が家ではカレーが出てきたことがないから若干諦めていたのだ。まさかこんなところで出会えるなんて!それにしても、お兄様ってば結構抜け出し慣れていらっしゃる…?我が家で出たこともないカレーを匂いで気づくとは…。私がお兄様を見つめていると、しぃっと再び人差し指を口に当てて微笑んできた。
「カレー食べていく?」
もちろんですとも。元気に返事すると馬車を止めてもらい、街へと足を下ろした。色々な人達が楽しそうに話す街並みはどこか懐かしく、テンションがあがる。
「ねえねえおにいさま!!あのぶたいはなんですか!あ、あのおみせもきになります!」
「うんうん、カレー食べたあと見て回ろうか。」
「わーい!!おにいさますきー!!」
抱きつくといつもなら振り払ってくるお兄様が苦笑しながらも頭を撫でてくれた。今は淑女らしくない言動も許してくれるということなのだろう。えへへ。
お店に入って3人分のカレーを注文する。デイヴはいらないと遠慮してきたけど、これは私たちの気持ちだ。バレたらデイヴも怒られるのに付き合ってくれてありがとう、デイヴ。
「にしても…セシル様はいつの間に屋敷を抜け出して街へ来ていたんですか。」
「ああ、案外このくらいならタイミングを見れば行けるよ。ね、エミリア。」
運ばれてきた懐かしのカレーに夢中で話を聞いていなかったが、意味深な笑顔で同意を求めてきたお兄様にとりあえず笑顔を返してみた。美味しいです。ちょっと量多いけど。そんな私を呆れたように見てくるデイヴ。なんですか?なにか文句でも?
…それにしても、少し目立っている。服装は同じだけど、お兄様もデイヴも美少年だから、隠しきれないオーラがあるみたい。とりあえず早く食べようか。もぐもぐ。
「…うぇ…」
「そんなになるまで食べなくても、量がいっぱいなんだから残せばよかったのに。」
「だってもったいないじゃないですか!…うぅ、きもちわるい」
食べ終わった頃にはお腹いっぱいすぎて少し吐き気を催していた。いえ、吐きませんけど。吐きませんけど。少しだけでもデイヴにわけておけばよかったわ。ほかの食べ物も食べてみたかったのに、すっかり入りそうにない。…私の胃袋の小ささを悔やむ。
お兄様に手を引かれながら道を歩いていると、ショーウィンドウに飾られた可愛らしいデザインの服に目を止めた。ブラウスにサスペンダーとシンプルなデザインだけど、首元の飾りが可愛い。なにより、…ズボンで動きやすそう。多分子供服で少年用のものだと思うけれど、駄目元でねだってみることにしよう。
「…おにいさま。」
「だめだよ」
「まだなにもいってないです!」
「何が言いたいかはわかるよ。…女の子がなんで男物の服を欲しいと思うかなあ…」
「全くですね。それにエミリア様、こちらは庶民用の服ですよ?いろいろな意味で合いません。」
お兄様とデイヴに窘められるが私は納得がいかず、粘りに粘った。これでも私は結構粘着質なのだ。そして20分ほど押し問答を続けたあと、私はやっと勝利を果たしたのだった!
「はぁ…仕方ないなあ…これもお母様には内緒だからね?」
「はい、おにいさま!!」
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