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子供時代
5 ぶどうのこうしょうです
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数日後。王子とのドキドキの面会も無事(?)終了し、ほっと一息付いた私は、前々から考えていたことをお父様に直談判に来ていた。
「おとうさま。」
「エミリア?どうしたんだい?」
でれぇっとした顔のお父様。小肥りな親父なので正直暑苦しい。よく見る転生ものの漫画だとお父様もイケおじなのにどうして私の父はこういつでも小肥り中年オヤジなのだろう。きっと小肥り狸の呪いがかかってるのだわ。除霊しなきゃ…じゃなくてですね。
「ぶどうのかていきょうしのせんせいがほしいのです。」
「武道!?」
お父様は素っ頓狂な声を上げた。声が若干ひっくり返っている。まあ、驚くのも仕方ない。武道など普通の令嬢は望まない。だって自分で守る必要ないもの。ボディーガードがついてるし。私も今までは普通の学習の家庭教師とマナーやダンスなどの先生はいたが、武道の先生などついていなかった。
「え、えっと、エミリア?ぶどうって、葡萄のことかな?」
「はい、ぶどうです」
「そ、そうだよね、葡萄が食べたいんだよね、」
「たたかうぎじゅつをみにつけたいのです」
「やっぱそっちの武道かぁ…」
武道は武道だ。ほかのなんだと思っているのだこの小肥り親父は。そう言いたい気持ちを押さえ込んで強請るように上目遣いでお父様を見つめた。
「だめ…ですか?」
「え、エミリア。今も執事兼ボディーガードでデイヴがついているだろう?足りないというのならボディーガードを増やそう!わざわざ私の可愛いエミリアが傷つく必要はないだろう?」
だいぶ困ったようなお父様。うーん、身の危険どうこうというか、守られるのが落ち着かないのだ。私はむしろ守ったり助けたり、そういうことの方が落ち着く。私は前世では空手や柔道、剣道などやっていたから知識はあるのだが残念ながら今の筋力では出来そうにない。そう考えると武道をもう一度学んで鍛え直したいと思ったのだ。何より身体を動かしてないと落ち着かないからね。うんうん。
「わたしがまなんでみたいのです。どうかおねがいします。…ね?」
「うーん…仕方ない、セリシアの許可がとれたら手配しよう。」
お父様はうーんうーんとうなったあと、とうとう折れたように答えた。セリシアとは私のお母様。む。私に甘いお父様ならと頼んでみたけれど、お母様の許可か…。お母様は正直かなり厳しい。貴族中の貴族というか。まさに貴族の女性、と言った雰囲気のお堅い人なのだ。貴族令嬢である私が武道をするなど渋い顔をするのが目に見えている。
「おかあさま。おねがいがあります。」
お母様の部屋にて。私はお母様の目をじっとのぞきこんだ。
「…何かしら、エミリア。」
お母様の顔は整っている。気が強そうな顔立ちだけれど、とっても美人だ。まとめられた金髪は輝いていて、綺麗な碧眼は鋭く私を射抜いている。
一見すると厳しく気難しそうなお母様だけれど、なんだかんだいって私たち兄妹を愛してくれているのはわかる、いいお母様だ。…しかしこの場では分が悪い。緊張して少し表情がこわばってしまう。
「ぶどうをしたいのです。せんせいをつけてください。」
「…武道?貴族の令嬢たるあなたがなんで武道なのかしら?」
「わたしはつよい、しんしなしゅくじょになりたいのです。」
じっと鋭い瞳にまっすぐ視線を返す。少したじろいだ様子のお母様。しかし認めてくれそうな雰囲気はない。…そうだ、前世でクラスメイトが武道始めたきっかけを使おう。あの技はなんとなく有効な気がした。
「…おかあさまを」
「なに?」
「おかあさまを、まもりたいのです。」
お母様の手をぎゅっと握って表情をのぞきこんだ。お母様は驚いたように目を見開いている。そんなお母様に追い打ちをかけてみる。…いける。
「いまはまだちいさなわたしですが、おおきくなったらだいすきなおかあさまをまもれるようなひとになりたいのです。…そのちからをみにつけさせてください。」
まっすぐ覗き込んでいると、お母様は目をそらしてしまった。失敗したかと思ったけれど、その頬は僅かに赤くなっている。
「………いいわ。強くなりなさい。」
「!!ありがとうございます!!」
嬉しい。お母様に抱き着くと、お母様は慌てたように引き離した。そういえば、貴族としてはしたなかったかしら。まあ、嬉しいのだから仕方ない。そうこうしているうちにこれから家庭教師でしょう、と部屋を追い出されてしまった。若干腑に落ちないところはあるが、まあ希望はかなったわけだからいいかなあ。ありがとう、お母様。
「……末恐ろしいなあ、エミリアは」
部屋を出るとお兄様が肩を竦めながら苦笑いしていた。…いつから見ていたんですか、お兄様。どうやら家庭教師の先生がいらっしゃったので迎えに来てくれたらしい。家庭教師の先生の授業にはお兄様も一緒に受けてくれているのだ。分からないところはお兄様も教えてくれるためとても頼もしい。お兄様は教えるのも上手なのだ。流石私のお兄様。
「おにいさま、ぶどうをならえることになりました!」
「あーうん、そうらしいね。」
微妙な表情をしたお兄様に武道の素晴らしさを熱く語ると、さらにお兄様は微妙な表情をしていた。解せない。
「おとうさま。」
「エミリア?どうしたんだい?」
でれぇっとした顔のお父様。小肥りな親父なので正直暑苦しい。よく見る転生ものの漫画だとお父様もイケおじなのにどうして私の父はこういつでも小肥り中年オヤジなのだろう。きっと小肥り狸の呪いがかかってるのだわ。除霊しなきゃ…じゃなくてですね。
「ぶどうのかていきょうしのせんせいがほしいのです。」
「武道!?」
お父様は素っ頓狂な声を上げた。声が若干ひっくり返っている。まあ、驚くのも仕方ない。武道など普通の令嬢は望まない。だって自分で守る必要ないもの。ボディーガードがついてるし。私も今までは普通の学習の家庭教師とマナーやダンスなどの先生はいたが、武道の先生などついていなかった。
「え、えっと、エミリア?ぶどうって、葡萄のことかな?」
「はい、ぶどうです」
「そ、そうだよね、葡萄が食べたいんだよね、」
「たたかうぎじゅつをみにつけたいのです」
「やっぱそっちの武道かぁ…」
武道は武道だ。ほかのなんだと思っているのだこの小肥り親父は。そう言いたい気持ちを押さえ込んで強請るように上目遣いでお父様を見つめた。
「だめ…ですか?」
「え、エミリア。今も執事兼ボディーガードでデイヴがついているだろう?足りないというのならボディーガードを増やそう!わざわざ私の可愛いエミリアが傷つく必要はないだろう?」
だいぶ困ったようなお父様。うーん、身の危険どうこうというか、守られるのが落ち着かないのだ。私はむしろ守ったり助けたり、そういうことの方が落ち着く。私は前世では空手や柔道、剣道などやっていたから知識はあるのだが残念ながら今の筋力では出来そうにない。そう考えると武道をもう一度学んで鍛え直したいと思ったのだ。何より身体を動かしてないと落ち着かないからね。うんうん。
「わたしがまなんでみたいのです。どうかおねがいします。…ね?」
「うーん…仕方ない、セリシアの許可がとれたら手配しよう。」
お父様はうーんうーんとうなったあと、とうとう折れたように答えた。セリシアとは私のお母様。む。私に甘いお父様ならと頼んでみたけれど、お母様の許可か…。お母様は正直かなり厳しい。貴族中の貴族というか。まさに貴族の女性、と言った雰囲気のお堅い人なのだ。貴族令嬢である私が武道をするなど渋い顔をするのが目に見えている。
「おかあさま。おねがいがあります。」
お母様の部屋にて。私はお母様の目をじっとのぞきこんだ。
「…何かしら、エミリア。」
お母様の顔は整っている。気が強そうな顔立ちだけれど、とっても美人だ。まとめられた金髪は輝いていて、綺麗な碧眼は鋭く私を射抜いている。
一見すると厳しく気難しそうなお母様だけれど、なんだかんだいって私たち兄妹を愛してくれているのはわかる、いいお母様だ。…しかしこの場では分が悪い。緊張して少し表情がこわばってしまう。
「ぶどうをしたいのです。せんせいをつけてください。」
「…武道?貴族の令嬢たるあなたがなんで武道なのかしら?」
「わたしはつよい、しんしなしゅくじょになりたいのです。」
じっと鋭い瞳にまっすぐ視線を返す。少したじろいだ様子のお母様。しかし認めてくれそうな雰囲気はない。…そうだ、前世でクラスメイトが武道始めたきっかけを使おう。あの技はなんとなく有効な気がした。
「…おかあさまを」
「なに?」
「おかあさまを、まもりたいのです。」
お母様の手をぎゅっと握って表情をのぞきこんだ。お母様は驚いたように目を見開いている。そんなお母様に追い打ちをかけてみる。…いける。
「いまはまだちいさなわたしですが、おおきくなったらだいすきなおかあさまをまもれるようなひとになりたいのです。…そのちからをみにつけさせてください。」
まっすぐ覗き込んでいると、お母様は目をそらしてしまった。失敗したかと思ったけれど、その頬は僅かに赤くなっている。
「………いいわ。強くなりなさい。」
「!!ありがとうございます!!」
嬉しい。お母様に抱き着くと、お母様は慌てたように引き離した。そういえば、貴族としてはしたなかったかしら。まあ、嬉しいのだから仕方ない。そうこうしているうちにこれから家庭教師でしょう、と部屋を追い出されてしまった。若干腑に落ちないところはあるが、まあ希望はかなったわけだからいいかなあ。ありがとう、お母様。
「……末恐ろしいなあ、エミリアは」
部屋を出るとお兄様が肩を竦めながら苦笑いしていた。…いつから見ていたんですか、お兄様。どうやら家庭教師の先生がいらっしゃったので迎えに来てくれたらしい。家庭教師の先生の授業にはお兄様も一緒に受けてくれているのだ。分からないところはお兄様も教えてくれるためとても頼もしい。お兄様は教えるのも上手なのだ。流石私のお兄様。
「おにいさま、ぶどうをならえることになりました!」
「あーうん、そうらしいね。」
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