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子供時代
1 おもいだしました
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はっと目を覚ます。熱にうなされていた頭の痛みはいつの間にかすっかり引いてしまっていた。周りを見回す。やっぱり今世で見慣れた風景。
私、エミリア=シルヴェスターは今、前世の記憶を思い出してしまったのだった。…今でこそ我儘し放題の高飛車な5歳児の公爵令嬢な私だが、昔はごく普通の美少女を愛しBLに興奮する一般人だったらしい。胸がどこかざわめく。まだなにか忘れているような。
私がはね起きたまま、まだまとまらない脳内を整理していると、控えめなノック。一人の少年が入ってきた。
「お嬢様、具合はいかがですか?」
入ってきた少年に取り繕って微笑みかける。
「でいぶ。わたしはだいじょうぶです。ごしんぱいおかけしました。」
前世を思い出してみて初めて気づいたが、思った以上に舌足らずな声しているよなあ。うまく滑舌が回らない。じれったい。
そんなことを思いながら返答すると執事のデイヴは戸惑ったように私を見た。…ああ、元々わがままお嬢様だったものね。今じゃそんな傍若無人な振る舞い出来ないわ…。
戸惑った様子のデイヴを見ていると思わずため息が漏れる。それにしてもデイヴって結構イケメンよね。柔らかそうな茶髪は可愛いし物腰も柔らかいし。記憶が蘇るまでは当たり前だと思っていたけど、前世を思い出した今ではデイヴが特殊だとよくわかる。12歳でこの落ち着き…是非ともお兄様と絡ませたいわ。いえ、お兄様はまだ7歳だけど。おにショタ…ありかもしれないわね。
「…それはよかったです。ミシェル王子との婚約が決まって慌ただしかったですから、お疲れだったのでしょう。ゆっくり休むようにと旦那様が仰っておりましたよ。」
そういえばデイヴをまるきり大人にしたような格好いい人が前世に読んだ漫画にいたなあ。我儘なお嬢様に縛られる執事のような…苦労人最高is最高って語り合ったわ。懐かしい。
デイヴの話に生返事を返しながら思い出したての記憶を懐かしんでいた私はあるワードに引っ掛かりを覚える。
「みしぇる…おうじ?」
「ええ、ミシェル王子ですよ、ミシェル=スレドニア様です。お嬢様。」
この言葉に強く聞き覚えがあったのだ。間違えようもない一番お気に入りのあの漫画のメインヒーローと同名。…何故か、言いようもない嫌な予感がしたのだ。
「でいぶ、つかぬことをうかがいますが、このくにのだいさんおうじは、あれん=すれどにあさまですか?」
そういうと不思議そうな表情でデイヴは頷いた。……こんなこと、現実にあるとは思っていなかったけれど、…漫画の中の世界に転生してしまったのでは…?論素っ頓狂なことを考えているのはわかっている。厨二病かよって感じだけれども。思えば思い返すほど色々な名前が聞いたことがあるのだ。
デイヴだって、お兄様…セシル=シルヴェスターだって聞いたことがある。……もしこの仮定が正しいとしたら、私の最推しヒロインのアリスちゃんもいるってこと!?
「野茨の花よ」略してバラハナという漫画は、前世オタクだった私が一番最初に出会った漫画だった。
頭がいい一般人であるヒロインのアリスちゃんが特待生として王族含む上流階級の人間達の学校に通うことになり、そこで様々なイケメン男性たちと出会うという王道少女漫画だったけれど、私が初めてそれを読んだ時、その恋模様の行方、そして豊富な種類のイケメン達に萌えて仕方なかった記憶がある。
そこからオタク沼、そして腐の沼へととっぷりつかっていったのだ…それはともかく。アリスちゃんと言ったらもう本当に可愛くて、嫁にしたい美少女ナンバーワンだった。そんな子が現実にいる可能性があったらもう幸せでしかなくない!?あの感動を現実で味わいたい!
そしてアリスちゃんに仇なす悪役令嬢を…そこで止まった。…待って。悪役令嬢の名前って、エミリア=シルヴェスターだよね?それって…私?
天にも舞い上がる気持ちから一気に地獄に突き落とされた気分だった。
どうやら私は、大好きなアリスちゃんをいじめ抜いて最後は破滅に突き落とされる運命をもつ悪役令嬢、エミリア=シルヴェスターのようです。
「うっそおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
「お、お嬢様?どうなされましたか?」
そんな…信じられない。なんでよりによってエミリアなの。どうせ生まれ変わるならミシェル王子になりたかった!そしてアリスちゃんやその他かわいい女の子といちゃいちゃしたかった!もうこの際ミシェル王子じゃなくてもイケメンならなんでもいいから!
…そんな心の声とは裏腹に、今後お嬢様に見切りをつける運命にあるデイヴは奇声を発したまま呆けた私を心配そうに揺さぶっていた。
私、エミリア=シルヴェスターは今、前世の記憶を思い出してしまったのだった。…今でこそ我儘し放題の高飛車な5歳児の公爵令嬢な私だが、昔はごく普通の美少女を愛しBLに興奮する一般人だったらしい。胸がどこかざわめく。まだなにか忘れているような。
私がはね起きたまま、まだまとまらない脳内を整理していると、控えめなノック。一人の少年が入ってきた。
「お嬢様、具合はいかがですか?」
入ってきた少年に取り繕って微笑みかける。
「でいぶ。わたしはだいじょうぶです。ごしんぱいおかけしました。」
前世を思い出してみて初めて気づいたが、思った以上に舌足らずな声しているよなあ。うまく滑舌が回らない。じれったい。
そんなことを思いながら返答すると執事のデイヴは戸惑ったように私を見た。…ああ、元々わがままお嬢様だったものね。今じゃそんな傍若無人な振る舞い出来ないわ…。
戸惑った様子のデイヴを見ていると思わずため息が漏れる。それにしてもデイヴって結構イケメンよね。柔らかそうな茶髪は可愛いし物腰も柔らかいし。記憶が蘇るまでは当たり前だと思っていたけど、前世を思い出した今ではデイヴが特殊だとよくわかる。12歳でこの落ち着き…是非ともお兄様と絡ませたいわ。いえ、お兄様はまだ7歳だけど。おにショタ…ありかもしれないわね。
「…それはよかったです。ミシェル王子との婚約が決まって慌ただしかったですから、お疲れだったのでしょう。ゆっくり休むようにと旦那様が仰っておりましたよ。」
そういえばデイヴをまるきり大人にしたような格好いい人が前世に読んだ漫画にいたなあ。我儘なお嬢様に縛られる執事のような…苦労人最高is最高って語り合ったわ。懐かしい。
デイヴの話に生返事を返しながら思い出したての記憶を懐かしんでいた私はあるワードに引っ掛かりを覚える。
「みしぇる…おうじ?」
「ええ、ミシェル王子ですよ、ミシェル=スレドニア様です。お嬢様。」
この言葉に強く聞き覚えがあったのだ。間違えようもない一番お気に入りのあの漫画のメインヒーローと同名。…何故か、言いようもない嫌な予感がしたのだ。
「でいぶ、つかぬことをうかがいますが、このくにのだいさんおうじは、あれん=すれどにあさまですか?」
そういうと不思議そうな表情でデイヴは頷いた。……こんなこと、現実にあるとは思っていなかったけれど、…漫画の中の世界に転生してしまったのでは…?論素っ頓狂なことを考えているのはわかっている。厨二病かよって感じだけれども。思えば思い返すほど色々な名前が聞いたことがあるのだ。
デイヴだって、お兄様…セシル=シルヴェスターだって聞いたことがある。……もしこの仮定が正しいとしたら、私の最推しヒロインのアリスちゃんもいるってこと!?
「野茨の花よ」略してバラハナという漫画は、前世オタクだった私が一番最初に出会った漫画だった。
頭がいい一般人であるヒロインのアリスちゃんが特待生として王族含む上流階級の人間達の学校に通うことになり、そこで様々なイケメン男性たちと出会うという王道少女漫画だったけれど、私が初めてそれを読んだ時、その恋模様の行方、そして豊富な種類のイケメン達に萌えて仕方なかった記憶がある。
そこからオタク沼、そして腐の沼へととっぷりつかっていったのだ…それはともかく。アリスちゃんと言ったらもう本当に可愛くて、嫁にしたい美少女ナンバーワンだった。そんな子が現実にいる可能性があったらもう幸せでしかなくない!?あの感動を現実で味わいたい!
そしてアリスちゃんに仇なす悪役令嬢を…そこで止まった。…待って。悪役令嬢の名前って、エミリア=シルヴェスターだよね?それって…私?
天にも舞い上がる気持ちから一気に地獄に突き落とされた気分だった。
どうやら私は、大好きなアリスちゃんをいじめ抜いて最後は破滅に突き落とされる運命をもつ悪役令嬢、エミリア=シルヴェスターのようです。
「うっそおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
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そんな…信じられない。なんでよりによってエミリアなの。どうせ生まれ変わるならミシェル王子になりたかった!そしてアリスちゃんやその他かわいい女の子といちゃいちゃしたかった!もうこの際ミシェル王子じゃなくてもイケメンならなんでもいいから!
…そんな心の声とは裏腹に、今後お嬢様に見切りをつける運命にあるデイヴは奇声を発したまま呆けた私を心配そうに揺さぶっていた。
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