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母との約束
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腰から背中にかけて、馴染みのある不快感に包まれて目が覚めた。
「どうしよう」
最上学年に上がってから1ヶ月、これでおねしょは5日連続だ。陽子は頭の中で母への言い訳と、証拠隠滅の方法を同時に考えていたが、どちらも有効な手段がないと知っているのだろう。口をぽかんと開き、ただ布団に包まれながら、天井を見つめていた。
母親の足音が聞こえてくる。毎朝恒例のおねしょチェックがこれから始まるのだ。
「陽子起きてる」
母が呼びかけてくる。陽子はどうしたらよいのか分からず、まだ寝ていることにして沈黙を貫いた。母は返事を待たずに私の足のほうから布団をめくり上げる。
「やっぱりおねしょしたのね。約束どおり夜も学校もおむつに戻すわよ」
母は布団に顔を埋める私に、冷たく言いつけた。寝たふりを決め込んでいる私の布団を剥ぎ取り、腕をひいて布団の染みの上に立たせる。
「約束したわよね。20回おもらししたらおむつに戻すって。6年生に上がったからおむつを外してあげたけど、今日からは学校にもおむつして行くのよ」
私は母に懇願する。学校だけはパンツで行きたいのだ。
「…皆に馬鹿にされるから嫌」
母は陽子のパジャマを脱がしながら弱みをつく。
「一昨日なんか授業中にウンチ漏らしちゃったんだから、おむつで当然です。貴方にはまだ、パンツは早かったのよ」
陽子は5年生までパンツタイプの紙おむつのお世話になっていた。昼も夜もおもらしが治らない陽子は何度も学校でおむつを汚し、保健室でおむつを取り替えてもらっていたのだ。
だが5年生の冬、体育の着替えのたびに保健室に向かう陽子を不審に思った男子が、陽子のランドセルを調べ、紙おむつを持ち込んでいる事をクラス中にばらしてしまったのだ。
それまで学校ではつんけんした、意地っ張りなキャラクターで通してきた陽子だが、この件で執拗に男子から冷やかしを受けるようになり、おむつがばれた後も優しくしてくれた数人の女子以外とは口をきけなくなってしまったのだった。
危機感を感じた陽子は春休みに親に相談し、春休みの間におもらしをしなかったら、6年生からはパンツで通学させて欲しいと持ちかけた。
陽子のおむつ離れの遅さを心配していた母親は快諾し、春休みの間陽子が失禁しないように、何度もトイレは大丈夫かと声をかけて、夜は定期的に起こしに行ってトイレを確認し、協力した。結果として、春休みの間に夜の失敗はあったものの大幅な改善が見られたとしてパンツでの通学が始まった。
母はまだ早いのではないかと危惧していたが、パンツで通学することで排尿管理の意識が高まり、改善が見られるのではないかと期待してパンツで学校に送り出した。
しかし結果は散々なものだった。この1ヶ月で授業中の失禁6回、おねしょは14回と失敗続きで、下だけ体操着に着替えてお土産袋をもって帰宅する陽子を見て母はおむつに戻すべきなのではと思案していたのだ。
母はクローゼットから封の開けられた女児向けおむつを取り出し、陽子の前に突き出した。5年生まで陽子が使っていたものだった。
「早く服を脱ぎなさい。今日からこれを履いて学校に行くのよ」
陽子は従うわけにもいかず沈黙を貫いた。おむつを履いて学校に行けば、体育の時に着替えることができずにまた皆におむつを疑われてしまうのだ。
なんとしてもパンツで学校に行きたい陽子だが、昨日おねしょした時に母からは念入りに次の失敗でおむつに戻す事を告げられていた。
母との約束と、再びおむつを履く屈辱との板ばさみになり言い訳もできずただただ押し黙っているだけだった。
母は濡れたパジャマに包まれて立ち尽くす陽子を見かねて、陽子のパジャマを強引に脱がし始める。
「いつまでも濡れた格好じゃ風邪をひくでしょう。おむつ履けばもう怒らないから着替えましょう」
母なりに、もう怒らないと譲歩したつもりだったが、陽子は6年生になっても子供扱いを受けている事を自覚させられ、嗚咽とともに泣き出してしまった。
母は構わずパジャマを脱がし続け、陽子を裸にしてしまった。
「ほら、後は自分でおむつ履いて、着替えたらリビングにいらっしゃい。朝ごはん食べて学校に行くのよ」
陽子は裸のまま動こうとしない。自分からおむつを履くという事が許せないのだ。自分から着替えようとしない陽子に母親も煩わしさを感じ始めていた。
「いつまでぐずっているの。学校に遅れるでしょう。おむつはいて学校に行かないと、また皆の前でお尻を洗われる事になるのよ」
陽子の学校ではウンチをおもらしすると校庭の水場で先生にお尻を洗われてしまう。一昨日は男子に冷やかされながらウンチのついたお尻を先生からホースで洗われたのだ。
学校でウンチを漏らした時に皆の前でお尻を洗われないためには、おむつとお尻拭きを持参して、保健の先生に綺麗にしてもらうしかないのだ。
しかし陽子は黙りこくっている。しびれを切らした母はおむつを手に取り、陽子に強引に履かせる事にした。足をとり、おむつを通したら強引に腰まで引き上げた。
「まったく、着替えも自分でできない6年生なんて初めて聞いたわ。お洋服もお母さんが選んじゃうわよ?」
おむつを履いてしまった屈辱で、陽子は放心状態になっていた。反応が無いことをみるとブラウス、キャミソール、スカート、チェックの靴下をクローゼットから取り出し、陽子に着せていく。
「はいできた。ランドセルをもってリビングに行くわよ。」
机の上に置かれていたランドセルをぐずる陽子に持たせて、2階にある陽子の部屋から階段を下りたところにあるリビングまで陽子の背中を押しながら進んでいく。
食卓についても陽子は朝食に口をつけようとしなかったが、母が怒りの表情を見せ始めると急いで食べて、通学していった。
「どうしよう」
最上学年に上がってから1ヶ月、これでおねしょは5日連続だ。陽子は頭の中で母への言い訳と、証拠隠滅の方法を同時に考えていたが、どちらも有効な手段がないと知っているのだろう。口をぽかんと開き、ただ布団に包まれながら、天井を見つめていた。
母親の足音が聞こえてくる。毎朝恒例のおねしょチェックがこれから始まるのだ。
「陽子起きてる」
母が呼びかけてくる。陽子はどうしたらよいのか分からず、まだ寝ていることにして沈黙を貫いた。母は返事を待たずに私の足のほうから布団をめくり上げる。
「やっぱりおねしょしたのね。約束どおり夜も学校もおむつに戻すわよ」
母は布団に顔を埋める私に、冷たく言いつけた。寝たふりを決め込んでいる私の布団を剥ぎ取り、腕をひいて布団の染みの上に立たせる。
「約束したわよね。20回おもらししたらおむつに戻すって。6年生に上がったからおむつを外してあげたけど、今日からは学校にもおむつして行くのよ」
私は母に懇願する。学校だけはパンツで行きたいのだ。
「…皆に馬鹿にされるから嫌」
母は陽子のパジャマを脱がしながら弱みをつく。
「一昨日なんか授業中にウンチ漏らしちゃったんだから、おむつで当然です。貴方にはまだ、パンツは早かったのよ」
陽子は5年生までパンツタイプの紙おむつのお世話になっていた。昼も夜もおもらしが治らない陽子は何度も学校でおむつを汚し、保健室でおむつを取り替えてもらっていたのだ。
だが5年生の冬、体育の着替えのたびに保健室に向かう陽子を不審に思った男子が、陽子のランドセルを調べ、紙おむつを持ち込んでいる事をクラス中にばらしてしまったのだ。
それまで学校ではつんけんした、意地っ張りなキャラクターで通してきた陽子だが、この件で執拗に男子から冷やかしを受けるようになり、おむつがばれた後も優しくしてくれた数人の女子以外とは口をきけなくなってしまったのだった。
危機感を感じた陽子は春休みに親に相談し、春休みの間におもらしをしなかったら、6年生からはパンツで通学させて欲しいと持ちかけた。
陽子のおむつ離れの遅さを心配していた母親は快諾し、春休みの間陽子が失禁しないように、何度もトイレは大丈夫かと声をかけて、夜は定期的に起こしに行ってトイレを確認し、協力した。結果として、春休みの間に夜の失敗はあったものの大幅な改善が見られたとしてパンツでの通学が始まった。
母はまだ早いのではないかと危惧していたが、パンツで通学することで排尿管理の意識が高まり、改善が見られるのではないかと期待してパンツで学校に送り出した。
しかし結果は散々なものだった。この1ヶ月で授業中の失禁6回、おねしょは14回と失敗続きで、下だけ体操着に着替えてお土産袋をもって帰宅する陽子を見て母はおむつに戻すべきなのではと思案していたのだ。
母はクローゼットから封の開けられた女児向けおむつを取り出し、陽子の前に突き出した。5年生まで陽子が使っていたものだった。
「早く服を脱ぎなさい。今日からこれを履いて学校に行くのよ」
陽子は従うわけにもいかず沈黙を貫いた。おむつを履いて学校に行けば、体育の時に着替えることができずにまた皆におむつを疑われてしまうのだ。
なんとしてもパンツで学校に行きたい陽子だが、昨日おねしょした時に母からは念入りに次の失敗でおむつに戻す事を告げられていた。
母との約束と、再びおむつを履く屈辱との板ばさみになり言い訳もできずただただ押し黙っているだけだった。
母は濡れたパジャマに包まれて立ち尽くす陽子を見かねて、陽子のパジャマを強引に脱がし始める。
「いつまでも濡れた格好じゃ風邪をひくでしょう。おむつ履けばもう怒らないから着替えましょう」
母なりに、もう怒らないと譲歩したつもりだったが、陽子は6年生になっても子供扱いを受けている事を自覚させられ、嗚咽とともに泣き出してしまった。
母は構わずパジャマを脱がし続け、陽子を裸にしてしまった。
「ほら、後は自分でおむつ履いて、着替えたらリビングにいらっしゃい。朝ごはん食べて学校に行くのよ」
陽子は裸のまま動こうとしない。自分からおむつを履くという事が許せないのだ。自分から着替えようとしない陽子に母親も煩わしさを感じ始めていた。
「いつまでぐずっているの。学校に遅れるでしょう。おむつはいて学校に行かないと、また皆の前でお尻を洗われる事になるのよ」
陽子の学校ではウンチをおもらしすると校庭の水場で先生にお尻を洗われてしまう。一昨日は男子に冷やかされながらウンチのついたお尻を先生からホースで洗われたのだ。
学校でウンチを漏らした時に皆の前でお尻を洗われないためには、おむつとお尻拭きを持参して、保健の先生に綺麗にしてもらうしかないのだ。
しかし陽子は黙りこくっている。しびれを切らした母はおむつを手に取り、陽子に強引に履かせる事にした。足をとり、おむつを通したら強引に腰まで引き上げた。
「まったく、着替えも自分でできない6年生なんて初めて聞いたわ。お洋服もお母さんが選んじゃうわよ?」
おむつを履いてしまった屈辱で、陽子は放心状態になっていた。反応が無いことをみるとブラウス、キャミソール、スカート、チェックの靴下をクローゼットから取り出し、陽子に着せていく。
「はいできた。ランドセルをもってリビングに行くわよ。」
机の上に置かれていたランドセルをぐずる陽子に持たせて、2階にある陽子の部屋から階段を下りたところにあるリビングまで陽子の背中を押しながら進んでいく。
食卓についても陽子は朝食に口をつけようとしなかったが、母が怒りの表情を見せ始めると急いで食べて、通学していった。
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