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聞き届けられない願い

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「モレーナ、もう充分だろう?」


 暗にもうやめようとセオが言っているのだとわかっても、モレーナの行動力は止まることはなかった。

 つい数時間前に様々な男女が睦み合う姿を見てきたのだ。
 女性が男性を攻めている姿もしっかりと覚えている。

 ようは、モレーナがセオを再びその気にさせればよいのだ。

 体勢を整えようとモレーナが動くとナカに入っていたセオの男根があっさりと抜けた。
 随分と小さくなったものだと思いながら、そっと指先で撫でる。

「ぅッ……モレーナ、やめなさい」

 先端をくるくると指先で撫でていると少しずつ固くなっていくことがわかった。
 既にモレーナとセオのお互いの液でぬるぬるとしているそれを今度は手のひら全体で握りしめてみる。更に固く太くなる姿に思わず感嘆の息が上がる。

(面白い……)

 初めて触る男根に興味がそそられたモレーナは顔を近づけてまじまじと見つめながら、握りしめた手を上下に動かす。
 時折、セオの甘い吐息が零れる。
 私がセオにこの声を出させているのだと思うと、モレーナの秘部からとろりと蜜が溢れた。

「モレーナッ、待って。はぁッ、ぅッ……待つんだ」
「やだ、待たない」

 そういえば、さっきも同じやり取りがあったような……と思い返す。その時は立場が逆だったが。

 びくりとセオが震えるので、右手の動きを激しくしてみる。この後はどうしたらよいのだろうか、と考えると舐めている人達の姿が脳裏をよぎった。
 ドキドキと胸を高鳴らせながら、舌を伸ばす。

 先端から出ていた汁は少し苦かった。
 先端から根元へとゆっくりと舐め上げると、今度は口を大きく開けて咥える。
 モレーナはどうするべきかを思い返しながら見よう見まねで顔を上下に動かす。

 セオがピクピクと反応しているから、これで正解なのだろう。

 その動きに慣れてくると今度は舌先で口内に含んだものを舐めてみる。また、動いた。
 どうしたらセオが気持ちよいのかが分かってきたモレーナは手と口を使ってセオの快感を必死に引き出していく。

「モレーナ、ッぅ、口、離して」
「やふぁ、ふぁなふぁない」

 咥えたままだと上手く話せないが、言いたいことは伝わっているはずだ。

 離すどころか勢いを増したモレーナにセオの我慢は限界だった。
 ドクドクとモレーナの口内で大きく脈打ち、どろどろとした精液を放つ。
 途中、その勢いに驚いたモレーナが口から離してしまい、顔面にかかってしまった。

 突然のことに呆気に取られながらも口の中に放たれたものを吐き出そうとは考えれず、ごくりと音をたてて飲み込む。


「セオ、今のって……」

 イッたんだよね? と確認の意味で問いかけようとしたモレーナは、苛立ちを抑えるように吐き出された溜息によって言葉が出なくなった。

(無理やりしちゃった……から、怒ってる?)

 顔に手をあててむくりと起きあがったセオの表情は隠れて見えない。それが余計にセオが怒っているのではないかという不安を増幅させた。

「……モレーナ」
「はいぃっ!」

 静かに呼ばれた名前に、反射的に正座して返事をした。


「私は君の為を思って止めたんだよ? ――これは君の自業自得だから、どうなっても知らないよ」


 にこりと微笑んでいるが、その表情は普段の穏やかなものとは似ても似つかなかった。
 セオは何が言いたいのだろう、と思いながらも首を振る。

「そうだな……。まずはモレーナ、自分で挿れて腰を振るんだ。私を無理やり犯すくらいなんだから、それくらいできるだろう?」
「え、でも……」

 先ほどセオはイッたばかりなのだから、そう簡単には挿れれない。
 そう言おうとして、なんとはなしに視線を下げたら、小さくなっているはずのセオの男根がいつの間にか大きくそそり立って天を仰いでいた。

(あれっ!?)

 ぱちぱちと瞬きしながらじっと眺めていると、「早くしなさい」と急かされる。

 これは、モレーナが望んでいた状況だ。
 何を怖気付いているのだと心の中で叱咤してセオに跨る。

 セオの鋭く光る視線がモレーナに突き刺さる。
 逸る鼓動を感じながら、セオを見つめ返した。
 左手で自分の蜜壷の位置を確認し、右手でセオの奮い立つものを握ると恐る恐る腰を下ろしていく。

「んッ……ふぁ……」

 ゆっくりとセオを自分のナカに埋めていく。全てが膣内に入るとふぅっと溜め息を吐いた。
 モレーナの恥毛がない分、セオの肌が直接当たるのでクリトリスからも甘い刺激が走る。

「モレーナ」

 それは、悪いことをした子どもを叱るような口調だった。
 慌てて腰を前後に揺らす。

「はッ、んぅ……」

 モレーナ自身でどう動くかを決めている分、感じる刺激は微々たるものだ。
 もっと激しく突かれたいと、今度は腰を上げては勢いをつけて下ろす。けれど、やっぱり満ち足りない。

「セオ、お願い、突いてぇ」

 ゆるゆると腰を揺らしながら『お願い』をする。
 セオは優しいからお願いを聞いてくれるはずだと信じて。

 けれど、返ってきたのは冷たい一言だった。


「君が始めたことだろう? 自分で腰を振ってイきなさい」
「無理なの、足りないのぉ!」

 言われた通りに腰を振っている。それでも足りないのだと、訴える。


 すると、セオはモレーナの腰を掴んだ。
 そのまま勢いよく腰を前後左右、上下へと激しく揺さぶる。

「んぁあアッ!?」

 あまりの気持ち良さに背をのけぞって喘ぐ。

 気持ちいい、イきそうだと思った矢先だった。
 モレーナの腰を揺さぶるセオの力が離れた。

「ンぅ……セオ?」

 どうしてやめてしまうのかと問いたかった。
 しかし、にっこりと綺麗な弧を描いて微笑むセオに、びくりと身震いをした。
 笑っているのに、冷たいのだ。

「ほら、わかっただろう? 君の腰の振り方次第で気持ちよくなれるんだ。イけるようになるまで、やってごらん」

 その有無を言わせない響きに、モレーナは再び自身の意志で腰を振る。
 先ほどセオに揺さぶられた動きを意識しながら、スピードをつけて、勢いよく。

 確かに最初に腰を揺らしていた時よりも感じる快感は強くなったが、やっぱり物足りなかった。
 けれど、セオは必死に腰を揺らすモレーナを下から眺めるだけだった――

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