月曜日の巫女

桜居かのん

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清廉さと不純さと

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「藤原さんでしたよね?」




穏やかな笑みを浮かべた黒髪の女と茶髪で少しウェーブヘアの女が二人で話しかけてきた。



「えぇ」



「全然他の人と話してないようですけど」



「今日もテストの採点に追われて疲れていましてね」



苦笑い気味に答えると、黒髪の女は大変ですね~と笑顔で返してきた。



「もしかして嫌々参加ですか?」



ウェーブヘアの女が尋ねてくる。



「12月は特に忙しいので勘弁して欲しいと言ったんですけどね」



「お住まいは都心の分譲マンションにお一人とか」



「えぇ、まぁ」



黒髪が突然そんな話題をふってきた。

そう話しかけながら、ちらりと俺の腕時計を確認したのに気がついた。

腕時計と靴を見てまずは判断するタイプか、残念ながらどれも安物だよ。


黒髪の女は清楚そうに見せてるけど、本来のモノが全く違う。

伊達眼鏡をしてきても、それなりに視る力を押さえていても、それでも相手が強いモノを出していれば嫌でも視えてしまう。

一見清楚そうに見える女と一見遊んでそうに見える女は、外見と中身が逆だ。

どうしても下心を強く持つ者が近づいてくると即座に選別してしまうのが、無意識に癖付いている。



つくづく東雲にはこういう女達のようになって欲しく無いと思うが、あいつだけは清廉なまま大人になっていくのではと、勝手に期待してしまう。

ぼんやりそんな事を考えていたら、ウェーブヘアの女の声で意識を戻された。



「凄いですね、教師のお仕事ってそんなに安定してるんですか?」



「マンションは父のですよ。

単に住まわせてもらっているだけです。

教師なんて安月給に決まってるじゃないですか」



自己名義でそれも全額キャッシュで買ったマンションだが、そうでも言わないと食いつかれて恐ろしいことになるのは目に見えている。

それでも二人は俺と話すことを止めようとせず、思ったより相手が簡単に諦めない事に妙に感心した。


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