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この楽しき祭りにて-Side B-
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しおりを挟む今までこんなに気を張らないで済む時間なんてなかった。
こいつが俺の側を離れれば、それはこの時間の終わりを意味する。
初めて『怖い』、という感情を持った。
そして段々とこいつに関わるようになって、「怖がられたら」、「嫌われたら」という事を意識していることに気がついた。
今まで、誰にどんな風に思われようがなんとも思わなかったのに。
それがまた『怖い』と思ってしまう。
「ほんと大丈夫?」
さっきまで笑ってた東雲が側にきてしゃがむと、不安そうな顔で俺を覗き込んでいる。
そんな顔をさせるなんて情けないと思う気持ちと、純粋に自分を心配をしてくれる相手がいることに安心する。
「悪い。眠かっただけだ」
そういって、カップを持ってない手で東雲の頭を撫でた。
東雲はきょとんとした顔をした後、ふわりと笑った。
「無理はダメだよ?」
「あぁ」
俺はいつか、こいつの顔が溶けるほどの安心を与えてやれるのだろうか。
「コホン!
あーすみません、東雲さん、紅茶のおかわりいりますか?」
わざとらしく咳払いをしてから、誠太郎が声をかけ、東雲はそちらを振り向くと、いります!と嬉しそうに返事をした。
俺は思わず誠太郎を睨む。
そんな顔を向けられても、誠太郎は柔らかく眼を細めるだけだった。
まぁとりあえずは目の前の菓子でも食うか。
俺が菓子を食べているのを、二人が穏やかな顔で見てるなんて知らないままで。
END
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