月曜日の巫女

桜居かのん

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この楽しき祭りにて-Side A-

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「ほら、笑顔笑顔」



「無理!恥ずかしい!」



恥ずかしさで自分の顔が熱くなっているのがわかる。

あーもう、間違いなく私をからかって遊んでいるんだ、藤原のヤツは。

どうせ子供の私じゃ、何にもひっかからないでしょうよ!

悔しくて少し上目使いで睨みながら藤原の方を見たら、パシャパシャパシャと凄い勢いで音がした。



「い、一枚だけでは?」



「あー連写になってたな」



特に興味なさそうにスマートフォンを確認した藤原の態度に腹が立つ。



「じゃぁ一番まともな写真だけ先生に見せてよね!

私もう行かないと!」



恥ずかしさと腹立たしさで早く部屋を出ようと下に置いてあった荷物を取り、それを持って勢いよく振り向いたその時、何か服にぐい、と引っかかった感じがしたと同時にビリビリビリ!という音がした。




「・・・・・・」




背中に違和感がある。涼しい。

すると、ひょい、と藤原が私の背中に回った。



「背中、破けてるけどいいのか?ガムテ貸すか?」



私の背中が見えててもそういう反応なんだ・・・・・・。

怒りと羞恥心が怒濤のように押し寄せ、身体がわなわなと震えてきた。



「あー!もう着替える!

着替えるから藤原は外で門番やっててよ!」



ガムテを既に手に持ってきょとんとした顔をしている藤原の背中をぐいぐいと押しながら外に思い切り押し出すと、私はドアを勢いよく閉めた。



「もう帰りたい・・・・・・」



私は両手で顔を隠し、泣きそうになりながら呟いた。










急いで着替え終わると、出てきた私を不思議そうな顔で見た藤原に思い切りあっかんべーをして、ダッシュで教室に戻り、制服のままで戻ってきた私に驚いている加茂くんに接客出来ない事をとりあえず謝って裏方の仕事を再開した。





「ごめんね、実は借りた洋服破けちゃったの」


文化祭も終わり、その片付けをしだして一段落つくと、私は加茂君の側に行って紙袋を渡した。


「え?どこが破けたの?」


「背中のとこ。かなりビリビリと」


私は紙袋から出して破けた部分を加茂君に見せた。

だが加茂君はじっとそれを見て黙っていたが、やがて口を開いた。


「これ、どこで破いたの?」


「英語教師室借りててそこで」


「一人だったの?」


「最初は一人で着替えてて、着替え終わってからちょうど藤原が来たんだけど、私が部屋を出ようと動いた時、後ろにあった棚の何かにひっかけちゃったみたいで」


加茂君はメイド服を手にとって、じっと切れた部分を見ていたかと思うと、へーふーん、そっかあ~と独り言を言い出した。


「あの、弁償するよ、やっぱり高い?」


不安げに聞いた私に、加茂君が笑顔で答えた。


「大丈夫大丈夫。

弁償は藤原先生にお願いするから」


「え?なんで?」


「んー?管理責任?」


首をかしげながら可愛くいう加茂君に、私も首をかしげた。






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