月曜日の巫女

桜居かのん

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一輪の薔薇

一輪の薔薇40

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「怖い思いをさせてすまなかった。



・・・・・・来てくれてありがとう」







頭のすぐ上から声がした。

自分の髪の毛に、藤原の頬が寄せられているのがわかる。

薄いTシャツから、藤原の体温が伝わってくるかのようだ。



もういい。



何で藤原がこんな事をしたかなんて理由、考えたくない。

好きな人にこんな場所で抱きしめられている、それだけで、私には奇跡のような気がした。


私は、もっとその距離を縮めたくて、もっと触れていたくて、両手をおずおずと私を抱きしめる人の背中に回す。

そしてぎゅっと服を掴んだ。





「・・・・・・うん」





私の言葉で、抱きしめられる力が強くなった。

耳に藤原の息がかかり、私は思わず声が漏れた。




藤原の息に、熱に、クラクラして、自分の身体が崩れ落ちそうになるのを、必死に広い背中に掴まって耐える。


大きな身体から与えられる力を一身に受けて、私は泣きそうになっていた。


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