月曜日の巫女

桜居かのん

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一輪の薔薇

一輪の薔薇12

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「それはな、セックス、だよ」


自分の身体が一気に強ばる。

心臓が鷲づかみにされ、喉の奥が急に締め付けられたような気がした。


「なぁ、好きな男に、セックスしてこいと生贄に出された気分は、どうだ?」


藤原の口の端が上がる。

まるで、獲物を追い込んでいるのを楽しんでいるかのような顔だった。

脳内で警鐘が鳴っている。

私はベットから投げ出された足をばたつかせ、掴まれている手をふりほどこうと、力を入れた。


「痛っ!」


拘束されていた両手がもっと強く締め付けられ、痛さに声が漏れる。


「たかがこれくらいで。もっとこれから痛い目に遭うっていうのに」



ずっと私の顔の横に置かれていた藤原の右手が私の顔に伸び、人差し指でゆっくりと頬を撫で、そのぞくりとする感覚と恐怖で、私はぎゅっと目を閉じた。

その指が静かに、首筋、そして鎖骨に降りてくる。

私の身体を触れているその指に、全ての神経が集まっているかのようだ。

そして自分のシャツのボタンが一つ、外される音で、思わず目を開いた。
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