月曜日の巫女

桜居かのん

文字の大きさ
上 下
89 / 200
巫女という呪

巫女という呪11

しおりを挟む

私達は若者達で溢れかえる、JR渋谷駅に降りた。

加茂君は初めての渋谷に興奮しているようで、人混みも気にせず何度も角度を変えて、忠犬ハチ公をスマホで撮影している。

それを、近くを歩く女性達がちらちらと見ている。

あれは物珍しくて見ているんじゃないというのは、次ぎに加茂君の横にいる私に向けられる視線で分かった。


「ゆいちゃんありがと!次はやっぱり109でしょ!」


撮影に満足したのか、次は意気揚々とお目当ての白いビルに指を指す。

私はそんな無邪気な顔に何故かホッとさせられた。

横に並んで歩いていて、思ったよりも背が高いことに気がついた。

でも藤原の方がもっと高いな。

そう無意識に思った自分に驚いて、そして気持ちが一気に落ち込む。

その事を消さなくてはと、私は頭をまた振った。

すると加茂君に手を繋がれ、驚いて顔を見る。


「人混みではぐれるとまずいじゃない?僕が」


そう言うとにっこり笑い、ウィンクした。

そっか、きっと加茂君はわかってるんだ。

しおりを挟む

処理中です...