月曜日の巫女

桜居かのん

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欠けてゆくもの

欠けてゆくもの25

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私は少し収まっていた怒りが再燃するのを身体の中で感じながら、一歩一歩藤原の側に進み、その座っている真横に立つと、藤原を見下ろした。


「よくここだとわかったな」


目を瞑ったままの藤原の声は、とても静かだった。


「犬が連れてきてくれたの」


「犬?」


初めてすぐ横に立っている私を、目を開けてちらりと見た。


「茶色い大きな犬。

日本犬だと思うけど、藤原の式神とかじゃないの?」


藤原はそれを聞いてまた前を向くと、はは、と軽く笑った。


「そうか。

いや、俺の式神じゃない。そもそも式神でもないしな」


じゃぁ、あの子は何だったのだろう。

聞きたい。

でも私にはここに来た理由がある。


「なんで加茂君にあんなことしたの」


「お前には関係ない」


「関係ない!?」


自分の声が一気に大きくなる。

血が上ると言うというのはこういうことだと全身で理解した。


「震えて、怯えてて、最後は訳の分からない状態になって倒れたんだよ?!

なんであんな酷い事するの!?」


藤原は再度私に軽く視線を向けると、こう言った。


「俺のテリトリーで勝手な事をした罰だ」


「ただ私に邪気を見せただけでしょ?!

それで高校生にあんなことしなくても!」


「高校生だから、何?」


冷たい目に圧力を感じて、思わず身体が後ろに下がりそうになる。


「高校生だろうがなんだろうが、陰陽師である以上、従うものには従わなければならない」


自分以外の意見は一切聞かないと切り捨てるような言葉に、私は怯みそうになった。

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