月曜日の巫女

桜居かのん

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欠けてゆくもの

欠けてゆくもの13

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私は呆然とした。
そんなの、好きになれる訳が無い。
だってその人のせいで、両親はバラバラになってしまったんだから。


「なら、嫌うのは当然じゃないですか」


納得するしかなかった。
そんな、家族を壊した存在と同じになるかもしれない私に、優しく出来るわけがない。


「いえ、だから違うんです」


「違わないですよ!だから、藤原は嫌いだって」


私はムキになって言った。
先生は何もわかっていない。
藤原があんな心が死んだようになるのは、全てそのせいだというのに。


「聞いて下さい、東雲さん」


かっとなっている私を宥めるように、先生はゆっくりと優しく声をかける。


「今、光明は、父親と一緒に居る元巫女の女性とは上手くやれているんです」


「えっ?」


全く予想外の言葉に私は声が漏れた。


「光明が本当に嫌っているのは、『巫女』という存在を作り上げ、いつも祭り上げようとしてる事なんです」


「いや、だから、藤原は巫女が嫌いだって」


「えぇ、『巫女』という制度を嫌っているんです。
そういう存在がいないと東京の陰陽師の長は長く務められない、絶対に必要だと、
光明自身を含め、全員が思い込んでしまっている現状を」


わからない。
それは結局巫女になった人を嫌うことと同じなのでは無いだろうか。
実の父親と一緒に居る元巫女を、本当はまだ恨んでいるのかもしれない。
だからこそ私が巫女になったら嫌うと言ってしまったんじゃないだろうか。

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