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欠けてゆくもの
欠けてゆくもの1
しおりを挟む夢を見た。
長い長い木の廊下、横にはまっ白な沢山の障子。
綺麗に磨かれたその廊下を歩くと、目の前に大きな庭が広がった。
松の木、桜の木に、もみじの木。
大きな池には、美しい色の鯉が悠々と泳いでいる。
その池の畔に、一人の少年が立っていた。
平安時代の装束のような白い着物に烏帽子。
その後ろ姿に、なんだか見覚えがあるような気がした。
「東京はどうなることかと」
振り返ると、障子に陰が映り、奥の部屋で大人達が話しているようだった。
「段々と優秀な子供が産まれなくなったのは、我々にとって由々しき問題だ。
まぁ今回は、あの子のような逸材が産まれてくれて良かったが」
「やはり東京では血筋の問題か」
「もう少し京都の血も混ぜれば、出来の良い子が産まれるのでは?」
あはは、おほほ、と聞くに堪えない笑い声がする。
この嫌な感じに覚えがあった。
そうだ、以前もこんな嫌な事を聞いたんだった。
まだ池の畔に男の子は佇んでいる。
私は裸足のまま廊下から外に降りると、尖った石の上をじゃり、じゃりと音を立て歩く。
素足に、尖って冷たい石が刺すような痛みをもたらしたが、私はそんなことは気にもせず、その男の子に声をかけようと近づいた。
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