月曜日の巫女

桜居かのん

文字の大きさ
上 下
51 / 200
欠けてゆくもの

欠けてゆくもの1

しおりを挟む

夢を見た。

長い長い木の廊下、横にはまっ白な沢山の障子。
綺麗に磨かれたその廊下を歩くと、目の前に大きな庭が広がった。
松の木、桜の木に、もみじの木。
大きな池には、美しい色の鯉が悠々と泳いでいる。

その池の畔に、一人の少年が立っていた。

平安時代の装束のような白い着物に烏帽子。

その後ろ姿に、なんだか見覚えがあるような気がした。



「東京はどうなることかと」


振り返ると、障子に陰が映り、奥の部屋で大人達が話しているようだった。


「段々と優秀な子供が産まれなくなったのは、我々にとって由々しき問題だ。

 まぁ今回は、あの子のような逸材が産まれてくれて良かったが」


「やはり東京では血筋の問題か」


「もう少し京都の血も混ぜれば、出来の良い子が産まれるのでは?」


あはは、おほほ、と聞くに堪えない笑い声がする。

この嫌な感じに覚えがあった。

そうだ、以前もこんな嫌な事を聞いたんだった。

まだ池の畔に男の子は佇んでいる。

私は裸足のまま廊下から外に降りると、尖った石の上をじゃり、じゃりと音を立て歩く。

素足に、尖って冷たい石が刺すような痛みをもたらしたが、私はそんなことは気にもせず、その男の子に声をかけようと近づいた。
しおりを挟む

処理中です...