月曜日の巫女

桜居かのん

文字の大きさ
上 下
9 / 200

月曜日の憂鬱9

しおりを挟む

高速を乗り継ぎ、見えてきたのは久しぶりのビル灯りの眩しい都心だった。
そして車は大きな堀に沿って走り、ある門の前に止まった。
そこにいる警官らしき人達が運転席に近づいてくる。
先生は窓を開け、
何か見せた後小さな声で話すと対応していた警察官が合図を送り門が開いた。
そこを車は進む。
少し進んだ先にぽっかりと広がった場所があり、そこに車は停まった。
あぁそうか、ここは皇居の中だ。
普通の人がこんなところに夜入れるものなのだろうか。


「少し歩きますが着いてきて下さい」


私は頷くと車を降りた。
そしてきょろきょろと周囲を見渡す。
車はこの一台だけ、人も誰もいない。
周囲は緑もあって静かだ。
なのになんだろうかこの変な感じは。
妙な顔をしていたのだろうか、
葛木先生が私の顔を見て声をかけた。


「気になりますか?」



「何か、あるんですか?」
「着いたらわかると思います」


いたって静かな葛木先生に私は少し怖くなった。
だが、その何かが気になって先生がつけた懐中電灯を頼りに薄暗い道を進む。

すると少し開けた場所に出て、目の前には小高い丘が見えた。
その小高い丘の上では松明が焚かれ、かなりの人がいるのがわかった。
その明かりがここまで照らしているせいか、自分の足下がわかるくらいに明るい。


「見えますか?」


「はい・・・・・・人が沢山いるみたいですが」


「それだけですか?」


まるで試すかのように聞こえてカチンときた。
何もかもがさっぱり分からないっていうのに。


「他に何があるんですか?というかほんと何なんですか?!

さっぱりわかんないです!」


私はさすがに苛立ってきていた。
質問するな、でもわかるな?なんて身勝手にもほどがある。
こっちはただの高校生で訳も分からず引っ張られてきたのに。


「すみません。東雲さんが怒るのも当然ですよね」


急に謝られてて思わず、いえ、なんて答えてしまった。


「でももう少し私の我が儘に付き合って下さい。
両手を出して貰えませんか?」


そういうと葛木先生が手のひらを上にした状態で両手を出してきた。
不審そうに先生を見れば促すような視線。
私は少し考えた後、おずおずと両手を先生に重ねた。


「目を瞑って。私の手の温度を感じて下さい。
呼吸はゆっくりと。
私が言うまで目は開けないで」


いつもの柔らかな先生の声よりも少し低い声。
私は言われるがまま目を瞑る。
不審がっているのに何かわかるなら試したい自分がいる。
先生と手を重ねるなんていつもの私なら恥ずかしいはずなのに何故か冷静だった。

じわり、と先生の手の温度を感じていたら、何か葛木先生が声を出している。
お経だろうか。
しまった!もしかして私、怪しい団体に誘われていたのかもしれない!
ニュースでもそういうのを見てるのに!

私は急に冷静になり、慌てて目を開け手を離そうとした。
なのに出来ない。
気持ちはとても焦っているのに、身体に熱いものが流れてくる。
そして葛木先生の声が心地いい。
私はその気持ちよさに流されないよう必死に抗った。
しおりを挟む

処理中です...