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黄泉比良坂編
大覚醒
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エイジが突然僕の思考の迷宮に光を照らしたため、一瞬思考が止まってしまった。
「エイジ・・・あるのか?」
あの蝿の王を叩き落とすか、飛ぶ手段が。
「ありますぜ。ただ・・・少しだけリスクがあるんだぜ」
「あるならいい。それをしてくれ」
「だが主人、こいつは・・・」
僕は何も考えずに答えた。
今優先されるべきは蝿の王の討伐だ。
加えて言えば日野さんの救出も入っている。
上空で行われている戦いは、すでに日野さんの逃亡戦へと変わっていた。
本当なら日野さんがヤツを地上に叩き落として僕と共闘することがベストだったのだが、相手が強すぎる。
僕自身も力の差がありすぎて、勝利への道筋が全く掴めない状況だった。
そんな状況の中、蝿の王を倒せる手段があるのなら、多少のリスクには目を瞑るべきだ。
「やってくれ、エイジ!」
僕が覚悟を決めてエイジに声をかける。
「多少のリスクなら僕が受け止める。それよりも今があの蝿の王の討伐が重要だ。そのための力を僕に貸してくれ!」
「・・・流石だぜ。俺様の主人は男の中の男だ。以前からそう考えていたが、今まさにそれが証明されたぜ!」
エイジが嬉しそうに、そして高揚した口調で声を上げる。
「お前らも聞いたよな! 半端な仕事は許さねぇ! 主人がこんなに男気を出して、俺様たちを最大限使ってくださるって言ってるんだ! 主人が激痛を受けてまで覚悟を決めたのなら、俺様たちはそれに応えるまで!!」
・・・激痛?
「エイ・・・」
「最低でも最高でもあの蝿は潰すぜ!」
ちょっと待て、なんだかマズイことを承認した気がする!
「ちょっとま・・・」
「後はどのくらい時間がかかるかだが、それは男気いっぱいの主人の領分だ! だが補助だけで済むと思うなよ! 自分たちで率先して動け!」
ヤバい!
エイジが僕の話を聞いてくれない!
「最高の主人をもって、俺様たちは幸せだぜ! モンスターの魔力を使用する過程で主人の体を通過させないといけない! その際に全身をバラバラにしそうなほどの痛みに耐えてあのモンスターを倒す! そのサポートに俺様たちを使ってくださる!」
ちょっと待て!
なんだその表現は!
全身をバラバラにしそうな痛みってなんだ!?
それって大丈夫なのか!?
「エイ・・・!」
「さあ行くぜ! 最大の奉仕をここで見せろ! 主人のポイントを稼ぐチャンスだぜぇぇぇぇぇええええええ!」
ダメだコイツ!
聞いてくれない!
耳がないのか? 無いよな! ふざけんなぁぁぁぁぁぁああああああああ!
「大覚醒!」
エイジの言葉が強く響く。
ドクンっと心臓が大きく鳴った。
右腕と右足の感覚が急に戻った。
え? と思う間も無く・・・それは来た!
「があああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
激痛が全身を襲う!
痛い痛い痛い痛い!
エイジを装備したときの激痛!
あの時はすぐ治ったけど、今回は違う!
あいつを倒さない限りこの痛みは治らない!
エイジの形が変わる。
右腕から僕の頭体足まで覆い、まるで鎧のように形を整えた。
「あるじ様! あるじ様聞こえますか!? ぼくです。加重です!」
僕の右肩に移動した口から、子供の声が聞こえた。
嬉しそうに呼びかけられたが、痛みが酷すぎて応えることができない!
「ほらほら、焦っちゃダメよ、加重。ご主人様は今、激痛に耐えていらっしゃるの。わたくし達の声に応えることはできないと思うわ。フフフ、でも自己紹介はしないといけませんね。衝撃無効です。今後ともよろしくいたしますわ」
左腕に移動した口から、落ち着きのある女性の声が出て来た。
まさか、僕が持ってるスキルが全て喋れるようになったのか!?
「ごわす! ごわす! 身体強化でごわす! 主君を守るでごわす!」
腹に移動した口からは男の太い声が出た。
エイジの時は気にしていなかったが、スキルにも性別があるのだろうか?
「じっさん。ほら主人がお待ちだぜ。自己紹介しときなよ」
エイジが何かに呼びかける。
他にスキルを持っていたか?
「お? ・・・おお、すまんな~。腐敗防止ですじゃ~。よろしくお願いしますじゃ~」
ゆったりとしたその口調に思わず頷きたくなるが、それよりも激痛が僕を責め立てる!
「さあ、主人。主人が俺様を進化させる際に願った力。炎の魔人や炎帝に負けない力。炎の魔人の魔力を使って全てのスキルを100%の状態に強制的に引き上げましたぜ! この力をどうするかは主人次第だぜ! 俺様たちは主人の全てを肯定し! 主人の望みを全て叶える! 空を飛びたいなら翼を作り、モンスターと対等に戦いたかったら身体を強化し、ダメージをくらわないために衝撃を無効化させ、大ダメージを与えるために獲物を重くする! どうよ、どうよ! これが主人の願った力! 大覚醒だ! さあ、声を合わせていこうぜ。こんな力を主人に与える俺様って本当に!」
エイジがテンション高く声を上げる。
そしてエイジの声に応じるかのように他の口が動いた。
「「「「「ワイルドだろぅ~(だね)(ですわ)(ごわす)(じゃ~)」」」」」
激痛で意識が正常に保てないまま体が震える。
倒せるのか・・・アイツを。
上空にいるアレを。
そして安部も・・・。
蝿の王を睨む。
「さあ、行ってくれ。主人」
背中の翼を動かす。
「姿勢制御は任せるでごわす!」
「風も気にしなくていいわよ」
大鎚を握りしめた。
「一瞬で最大重量まで上げるから! いつでも攻撃して! あるじ様!」
地面を蹴る!
痛みを堪えて慣れない翼を動かす!
ゴォォォォっと背中から何か出ているが分からない。
それよりも蝿の王にどんどん近づいている!
日野さんが僕に気づいた。
蝿の王も僕を見た。
大鎚を振りかぶる。
さあ、反撃の1発目だ!
ゴガァァァァァアアアアアアアン!
轟音を響かせて大鎚を顔面にぶち当てて振り抜く。
赤い光の粉が舞い散り、蝿の王は顔から煙を少し出して吹っ飛び、なんとか宙で堪えて体勢を戻した。
「キエエエエエエエエエエエエエエエ!」
「ガアアアアアアアアアアアアアアア!」
言葉を出そうにも痛みで出ない。
ただ叫ぶ。
相手に気迫負けしないように大声を出して。
「エイジ・・・あるのか?」
あの蝿の王を叩き落とすか、飛ぶ手段が。
「ありますぜ。ただ・・・少しだけリスクがあるんだぜ」
「あるならいい。それをしてくれ」
「だが主人、こいつは・・・」
僕は何も考えずに答えた。
今優先されるべきは蝿の王の討伐だ。
加えて言えば日野さんの救出も入っている。
上空で行われている戦いは、すでに日野さんの逃亡戦へと変わっていた。
本当なら日野さんがヤツを地上に叩き落として僕と共闘することがベストだったのだが、相手が強すぎる。
僕自身も力の差がありすぎて、勝利への道筋が全く掴めない状況だった。
そんな状況の中、蝿の王を倒せる手段があるのなら、多少のリスクには目を瞑るべきだ。
「やってくれ、エイジ!」
僕が覚悟を決めてエイジに声をかける。
「多少のリスクなら僕が受け止める。それよりも今があの蝿の王の討伐が重要だ。そのための力を僕に貸してくれ!」
「・・・流石だぜ。俺様の主人は男の中の男だ。以前からそう考えていたが、今まさにそれが証明されたぜ!」
エイジが嬉しそうに、そして高揚した口調で声を上げる。
「お前らも聞いたよな! 半端な仕事は許さねぇ! 主人がこんなに男気を出して、俺様たちを最大限使ってくださるって言ってるんだ! 主人が激痛を受けてまで覚悟を決めたのなら、俺様たちはそれに応えるまで!!」
・・・激痛?
「エイ・・・」
「最低でも最高でもあの蝿は潰すぜ!」
ちょっと待て、なんだかマズイことを承認した気がする!
「ちょっとま・・・」
「後はどのくらい時間がかかるかだが、それは男気いっぱいの主人の領分だ! だが補助だけで済むと思うなよ! 自分たちで率先して動け!」
ヤバい!
エイジが僕の話を聞いてくれない!
「最高の主人をもって、俺様たちは幸せだぜ! モンスターの魔力を使用する過程で主人の体を通過させないといけない! その際に全身をバラバラにしそうなほどの痛みに耐えてあのモンスターを倒す! そのサポートに俺様たちを使ってくださる!」
ちょっと待て!
なんだその表現は!
全身をバラバラにしそうな痛みってなんだ!?
それって大丈夫なのか!?
「エイ・・・!」
「さあ行くぜ! 最大の奉仕をここで見せろ! 主人のポイントを稼ぐチャンスだぜぇぇぇぇぇええええええ!」
ダメだコイツ!
聞いてくれない!
耳がないのか? 無いよな! ふざけんなぁぁぁぁぁぁああああああああ!
「大覚醒!」
エイジの言葉が強く響く。
ドクンっと心臓が大きく鳴った。
右腕と右足の感覚が急に戻った。
え? と思う間も無く・・・それは来た!
「があああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
激痛が全身を襲う!
痛い痛い痛い痛い!
エイジを装備したときの激痛!
あの時はすぐ治ったけど、今回は違う!
あいつを倒さない限りこの痛みは治らない!
エイジの形が変わる。
右腕から僕の頭体足まで覆い、まるで鎧のように形を整えた。
「あるじ様! あるじ様聞こえますか!? ぼくです。加重です!」
僕の右肩に移動した口から、子供の声が聞こえた。
嬉しそうに呼びかけられたが、痛みが酷すぎて応えることができない!
「ほらほら、焦っちゃダメよ、加重。ご主人様は今、激痛に耐えていらっしゃるの。わたくし達の声に応えることはできないと思うわ。フフフ、でも自己紹介はしないといけませんね。衝撃無効です。今後ともよろしくいたしますわ」
左腕に移動した口から、落ち着きのある女性の声が出て来た。
まさか、僕が持ってるスキルが全て喋れるようになったのか!?
「ごわす! ごわす! 身体強化でごわす! 主君を守るでごわす!」
腹に移動した口からは男の太い声が出た。
エイジの時は気にしていなかったが、スキルにも性別があるのだろうか?
「じっさん。ほら主人がお待ちだぜ。自己紹介しときなよ」
エイジが何かに呼びかける。
他にスキルを持っていたか?
「お? ・・・おお、すまんな~。腐敗防止ですじゃ~。よろしくお願いしますじゃ~」
ゆったりとしたその口調に思わず頷きたくなるが、それよりも激痛が僕を責め立てる!
「さあ、主人。主人が俺様を進化させる際に願った力。炎の魔人や炎帝に負けない力。炎の魔人の魔力を使って全てのスキルを100%の状態に強制的に引き上げましたぜ! この力をどうするかは主人次第だぜ! 俺様たちは主人の全てを肯定し! 主人の望みを全て叶える! 空を飛びたいなら翼を作り、モンスターと対等に戦いたかったら身体を強化し、ダメージをくらわないために衝撃を無効化させ、大ダメージを与えるために獲物を重くする! どうよ、どうよ! これが主人の願った力! 大覚醒だ! さあ、声を合わせていこうぜ。こんな力を主人に与える俺様って本当に!」
エイジがテンション高く声を上げる。
そしてエイジの声に応じるかのように他の口が動いた。
「「「「「ワイルドだろぅ~(だね)(ですわ)(ごわす)(じゃ~)」」」」」
激痛で意識が正常に保てないまま体が震える。
倒せるのか・・・アイツを。
上空にいるアレを。
そして安部も・・・。
蝿の王を睨む。
「さあ、行ってくれ。主人」
背中の翼を動かす。
「姿勢制御は任せるでごわす!」
「風も気にしなくていいわよ」
大鎚を握りしめた。
「一瞬で最大重量まで上げるから! いつでも攻撃して! あるじ様!」
地面を蹴る!
痛みを堪えて慣れない翼を動かす!
ゴォォォォっと背中から何か出ているが分からない。
それよりも蝿の王にどんどん近づいている!
日野さんが僕に気づいた。
蝿の王も僕を見た。
大鎚を振りかぶる。
さあ、反撃の1発目だ!
ゴガァァァァァアアアアアアアン!
轟音を響かせて大鎚を顔面にぶち当てて振り抜く。
赤い光の粉が舞い散り、蝿の王は顔から煙を少し出して吹っ飛び、なんとか宙で堪えて体勢を戻した。
「キエエエエエエエエエエエエエエエ!」
「ガアアアアアアアアアアアアアアア!」
言葉を出そうにも痛みで出ない。
ただ叫ぶ。
相手に気迫負けしないように大声を出して。
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