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阿蘇ダンジョン攻略編
攻略セオリーを無視する人
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下から見るお城は、20階建てのビルに匹敵する高さのように見える。
現実にはあり得ない高さの城に僕はため息をついた。
今僕らがいる空間は、地下の広すぎる空間。
この城のためにある空間と言っても過言ではなさそうだ。
光は何故か城の外壁が発していて、それなりに明るくなっている。
「中に入って上がるしかないのか」
正直言って面倒臭い。
でも、この城の大きさから、天守閣にボスがいることは明らかだ。
次の階へのポータルもそこにあるか、倒した後の隠し部屋か・・・。
どちらにせよ、上るしかない。
「なぁ、京平・・・」
「何だ?」
「ここにあの武者の本体がいるのか?」
何を聞いてくるかと思ったら、彼なりに何かを考えているような質問だった。
「多分な。あの一番上の階まで行く必要があるけど」
途中は落とし穴から壁を抜いての攻撃やら色々あるだろうな・・・。
「・・・わざわざ行く必要・・・無くねー?」
「・・・何を言っているんだ?」
「だってさ、城だろ? メインは木だろ? だったら・・・いいだろ?」
「木下・・・お前」
木下の考えていることを理解して、僕の身体が大きく震えた。
木下が荷物を僕に投げ渡す。
僕は中身が溢れないように受け止めた。
「・・・ここに本体がいるんだろ? ならもういいよな? 手加減なんて面倒臭いことしなくてもよ!」
木下の体が揺らめく。
コイツが発する熱が空気を歪めているんだ!
「ホント・・・お前のスキルはムカつくよな・・・こっちが苦労して倒そうとしているヤツを一瞬で倒しやがって・・・。マジでイラついたぞ」
何だかブツクサ言いながらも、木下の身体が膨張・・・いや、巨大化していってる!?
確かにそれができれば、この階は一瞬で終わる。
わざわざ上の階に行く必要がなくなる。
でも・・・普通の探索者には、そんな事は不可能だ!
「だからよ・・・見せてやるぜ! 最高火力だ! 燃やし尽くすぞ! 火輪子!!」
それは、ただ人の形をした巨大な炎の塊だった。
顔がなく、髪も炎で作られ、ただ人の形をしているだけ。
だが、その熱量は桁違いで僕は慌ててそれから離れて岩陰に隠れる。
冷却システムがフル稼働している。
灼熱のダンジョンよりもアレの方が明らかに熱くて危険なのだろう。
地面は黒く変色するどころか、一部は真っ赤になっていて溶け始めている。
「化け物かよ! クソ!」
またヤツとの力の差を感じてしまった。
劣等感か・・・嫉妬か・・・僕の胸を埋め尽くす。
その炎の人形が、城に向かって両手を伸ばす。
城からも弓や銃みたいなもので応戦しているようだが、炎の人形が気にしている様子はない。
そして・・・その両手は城を貫き、炎が燃え移っていく。
・・・ダンジョン攻略のセオリーを完全に無視した攻略方法。
・・・全く参考にならない・・・火攻。
炎の人形が腕を振り上げた。
それはまずい・・・。
絶対にこっちまで被害が来る!
僕は荷物を抱き抱えて、身を縮めて可能な限り岩陰に身を隠す。
その直後に轟音が響いた。
人形の腕が振り下ろされたのだろう。
熱風が僕のとこまで襲いかかり、岩肌や壁を焼いていく。
熱風がおさまり、城を覗いてみるとそれは燃えながら倒壊していた。
元いた場所には木下が元の姿に戻って座っている。
流石にあれだけの力を放ったから疲れたのだろう。
それでも、近づく僕に気づいてムカつく笑みを浮かべている。
「これでクリアだろ?」
「・・・はぁ~」
思わずため息が出てしまった。
「何だよ・・・変な事は言ってないだろ?」
「木下・・・フラグとかお約束といった事も知っておくといいよ」
「はぁ? 何のことだ?」
ドカーン! と燃え落ちた城が中から爆発して、そこから1人の武者が姿を現した。
「下手に余裕かますとこういうことになる。組合の資料室の雑知識コーナーにその手の本があるから、それも見てた方がいいぞ」
「・・・分かった」
「やれそうか?」
「やるっきゃねーだろ!」
勢いをつけて立ち上がり、木下は一歩前に出る。
「コイツは俺の獲物だ。京平は手を出すなよ」
元より手を出すつもりはない。
僕は数歩下がって2人から距離をとった。
「お前が相手か」
武者が今までのヤツよりスムーズに言葉を発した。
「不満か?」
「いや、むしろ楽しみであるな。先ほどの一撃は全く情報がなかった。まだまだ手札はあるのだろう?」
「教えねーよ。これから分かることだからな!」
「その通りだ」
木下が炎の大剣を作り出して両手で構える。
武者も大太刀を抜いて肩に担ぐように構えた。
2人とももう喋らない。
無言で睨み合い・・・一瞬で動いた。
武者が振り下ろす。
木下が突進しながら受け止める。
木下が武者の胴に蹴りを放つ。
武者が蹴りを受け止め木下の足を払う。
ボフッと武者の足が素通りした。
木下の軸足は何事もなかったかのように立っている。
物理攻撃無効かよ!
木下が両足を地面につけて剣に力を込める。
武者は払った足が宙に浮いていたせいか、バランスを崩して後ろへ下がった。
「うぉら!」
木下が剣を振り回す。
技術がないため、完全に乱撃状態だ。
もう斬ると言うより切るの方だな。
だが、単純に力が相手を上回る場合、この乱撃が技術の差を埋めることになる。
武者が下がる。
木下が前に出る。
武者が木下の攻撃を受ける度に水蒸気が発生していた。
属性で優位にありながらも武者は木下の攻撃を受け止めきれないようだ。
たまらず武者が土属性のスキルを使って地面から壁を作り出す。
それは正確に武者と木下を分断させたが、木下の横には既に渦巻く炎のドリルが出現していた。
「ぶち破れ!」
炎のドリルが壁を貫く。
その奥で武者が、破壊された壁に驚きを隠せず構えるのが遅れた。
水の玉がドリルの前に現れる。
2つはぶつかって水の玉は飛び散って蒸発し、ドリルは大きさが3分の1まで小さくなって武者に斬り散らされた。
それから遠距離戦に切り替わる。
木下は炎のドリルと槍を放ち、武者は水の槍をメインに小さな水の弾を混ぜて放つ。
お互いに迎撃は手持ちの武器を振って打ち落としている。
武者の方が手数が多く、木下の大剣もその姿を変えて、片手剣になって左手に縦が作られて水の弾を防いでいる。
木下の足下に大きな穴が現れた。
木下は浮遊で回避するが、直後に突風が発生して身体が押される。
木下もドリルと槍を計5本作り出し、武者に向けて撃つ。
武者は移動して避けるが最後に放ったドリルがカーブして武者に向かう。
武者が大太刀で迎え撃ち、ドリルが真っ二つに斬られた。
その後ろから木下が振りかぶった片手剣を大剣に変えて振り下ろす。
武者が正面に水の盾を作ろうとしたが、その途中で木下が切り裂いた。
「もういっちょ!」
空中で縦に一回転して大剣が襲いかかる。
武者は大太刀に水を纏わせて受け止めた。
だが勢いが勝ったらしく、木下の大剣が武者の大太刀を押し込む。
「ふん!」
「ふぐ!」
兜の飾りの一部が切れ落ちた。
武者は不利を悟って大剣を払い落として、一気に下がり周囲を水で囲んだ。
水の武者がやった同じ戦法だ。
「二番煎じは通じねぇよ!」
「果たしてそうかな!」
火の玉が無数に現れて武者を水ごと囲い出す。
水の武者の時はすぐに囲われたが、今回は一味違った。
ボンッボンッボン!
武者の水から槍が飛び出して火の玉を貫き消していく。
「なに!」
木下が慌てて火の玉の数を増やす。
武者は火の玉を迎撃していく。
木下が大剣を振って水を切り裂き、炎の槍を放つ。
炎の槍は武者の大太刀によって斬り落とされ、水の囲いはすぐに修復されていく。
・・・守備に回られたか・・・。
僕はドラゴンバスターを撃つべきか考えた。
撃てば確実に状況を木下優勢に傾けることができる。
ただし、最初に木下に任せてしまったことが二の足を踏ませていた。
「あームカつくぜ。二番煎じをした時点でおとなしくやられておけばいいのによ!」
木下の大剣が消えて両腕がオレンジ色に光出した。
しかも、また周囲の温度が上昇している。
「奥の手か! 良いだろう! 掛かってこい!」
「偉そうに言ってんじゃねーよ! お前はもう終わりだ。全て溶けて消え去れ!」
両腕が巨大化してオレンジ色の炎を纏いながら武者を包み込む。
「何だと!? 水の膜が!」
木下の手が武者を包むと同時に、ジュ! と短い音を発して水の膜が蒸発した。
「こ・・・これが貴様の奥の手か・・・」
「まだまだだよ。俺はまだ未熟だからな。この程度しかスキルを使うことができねーんだ」
「・・・そうか・・・貴様がもっと成長した時に・・・戦いたかった・・・」
武者の言葉が途切れて、抵抗がなくなったのか炎の手がパァン! と包んでいた武者を潰した。
またも熱風が発生して、僕はまた岩陰に隠れた。
木下の炎の手が消えると、そこにはリンゴの大きさの魔石が落ちていた。
通常ならA級の魔石と判断するところだが、そう判断するには、色が違いすぎた。
「虹色・・・」
絶対国とか企業とか組合とかが頭を抱えるヤツだ。
「木下・・・これは持って帰るから」
「んぁ? ああ・・・任せる」
こっちを見ずに、木下は大の字になって寝そべった。
やはり、巨大化はかなり体力を消耗するようだ。
アイツは、今日はこのまま動けないだろう。
時間も20時になる前。
休憩の後食事をすれば、21時にはなるだろう。
今日は身体を休めて明日に備えなければならない。
・・・木下が持つ荷物も確認したいしな・・・。
異界のせいか、地面が熱くなっていないこの場なら、木下のスキルを解除しても問題無いだろう。
お腹減ったしな・・・。
現実にはあり得ない高さの城に僕はため息をついた。
今僕らがいる空間は、地下の広すぎる空間。
この城のためにある空間と言っても過言ではなさそうだ。
光は何故か城の外壁が発していて、それなりに明るくなっている。
「中に入って上がるしかないのか」
正直言って面倒臭い。
でも、この城の大きさから、天守閣にボスがいることは明らかだ。
次の階へのポータルもそこにあるか、倒した後の隠し部屋か・・・。
どちらにせよ、上るしかない。
「なぁ、京平・・・」
「何だ?」
「ここにあの武者の本体がいるのか?」
何を聞いてくるかと思ったら、彼なりに何かを考えているような質問だった。
「多分な。あの一番上の階まで行く必要があるけど」
途中は落とし穴から壁を抜いての攻撃やら色々あるだろうな・・・。
「・・・わざわざ行く必要・・・無くねー?」
「・・・何を言っているんだ?」
「だってさ、城だろ? メインは木だろ? だったら・・・いいだろ?」
「木下・・・お前」
木下の考えていることを理解して、僕の身体が大きく震えた。
木下が荷物を僕に投げ渡す。
僕は中身が溢れないように受け止めた。
「・・・ここに本体がいるんだろ? ならもういいよな? 手加減なんて面倒臭いことしなくてもよ!」
木下の体が揺らめく。
コイツが発する熱が空気を歪めているんだ!
「ホント・・・お前のスキルはムカつくよな・・・こっちが苦労して倒そうとしているヤツを一瞬で倒しやがって・・・。マジでイラついたぞ」
何だかブツクサ言いながらも、木下の身体が膨張・・・いや、巨大化していってる!?
確かにそれができれば、この階は一瞬で終わる。
わざわざ上の階に行く必要がなくなる。
でも・・・普通の探索者には、そんな事は不可能だ!
「だからよ・・・見せてやるぜ! 最高火力だ! 燃やし尽くすぞ! 火輪子!!」
それは、ただ人の形をした巨大な炎の塊だった。
顔がなく、髪も炎で作られ、ただ人の形をしているだけ。
だが、その熱量は桁違いで僕は慌ててそれから離れて岩陰に隠れる。
冷却システムがフル稼働している。
灼熱のダンジョンよりもアレの方が明らかに熱くて危険なのだろう。
地面は黒く変色するどころか、一部は真っ赤になっていて溶け始めている。
「化け物かよ! クソ!」
またヤツとの力の差を感じてしまった。
劣等感か・・・嫉妬か・・・僕の胸を埋め尽くす。
その炎の人形が、城に向かって両手を伸ばす。
城からも弓や銃みたいなもので応戦しているようだが、炎の人形が気にしている様子はない。
そして・・・その両手は城を貫き、炎が燃え移っていく。
・・・ダンジョン攻略のセオリーを完全に無視した攻略方法。
・・・全く参考にならない・・・火攻。
炎の人形が腕を振り上げた。
それはまずい・・・。
絶対にこっちまで被害が来る!
僕は荷物を抱き抱えて、身を縮めて可能な限り岩陰に身を隠す。
その直後に轟音が響いた。
人形の腕が振り下ろされたのだろう。
熱風が僕のとこまで襲いかかり、岩肌や壁を焼いていく。
熱風がおさまり、城を覗いてみるとそれは燃えながら倒壊していた。
元いた場所には木下が元の姿に戻って座っている。
流石にあれだけの力を放ったから疲れたのだろう。
それでも、近づく僕に気づいてムカつく笑みを浮かべている。
「これでクリアだろ?」
「・・・はぁ~」
思わずため息が出てしまった。
「何だよ・・・変な事は言ってないだろ?」
「木下・・・フラグとかお約束といった事も知っておくといいよ」
「はぁ? 何のことだ?」
ドカーン! と燃え落ちた城が中から爆発して、そこから1人の武者が姿を現した。
「下手に余裕かますとこういうことになる。組合の資料室の雑知識コーナーにその手の本があるから、それも見てた方がいいぞ」
「・・・分かった」
「やれそうか?」
「やるっきゃねーだろ!」
勢いをつけて立ち上がり、木下は一歩前に出る。
「コイツは俺の獲物だ。京平は手を出すなよ」
元より手を出すつもりはない。
僕は数歩下がって2人から距離をとった。
「お前が相手か」
武者が今までのヤツよりスムーズに言葉を発した。
「不満か?」
「いや、むしろ楽しみであるな。先ほどの一撃は全く情報がなかった。まだまだ手札はあるのだろう?」
「教えねーよ。これから分かることだからな!」
「その通りだ」
木下が炎の大剣を作り出して両手で構える。
武者も大太刀を抜いて肩に担ぐように構えた。
2人とももう喋らない。
無言で睨み合い・・・一瞬で動いた。
武者が振り下ろす。
木下が突進しながら受け止める。
木下が武者の胴に蹴りを放つ。
武者が蹴りを受け止め木下の足を払う。
ボフッと武者の足が素通りした。
木下の軸足は何事もなかったかのように立っている。
物理攻撃無効かよ!
木下が両足を地面につけて剣に力を込める。
武者は払った足が宙に浮いていたせいか、バランスを崩して後ろへ下がった。
「うぉら!」
木下が剣を振り回す。
技術がないため、完全に乱撃状態だ。
もう斬ると言うより切るの方だな。
だが、単純に力が相手を上回る場合、この乱撃が技術の差を埋めることになる。
武者が下がる。
木下が前に出る。
武者が木下の攻撃を受ける度に水蒸気が発生していた。
属性で優位にありながらも武者は木下の攻撃を受け止めきれないようだ。
たまらず武者が土属性のスキルを使って地面から壁を作り出す。
それは正確に武者と木下を分断させたが、木下の横には既に渦巻く炎のドリルが出現していた。
「ぶち破れ!」
炎のドリルが壁を貫く。
その奥で武者が、破壊された壁に驚きを隠せず構えるのが遅れた。
水の玉がドリルの前に現れる。
2つはぶつかって水の玉は飛び散って蒸発し、ドリルは大きさが3分の1まで小さくなって武者に斬り散らされた。
それから遠距離戦に切り替わる。
木下は炎のドリルと槍を放ち、武者は水の槍をメインに小さな水の弾を混ぜて放つ。
お互いに迎撃は手持ちの武器を振って打ち落としている。
武者の方が手数が多く、木下の大剣もその姿を変えて、片手剣になって左手に縦が作られて水の弾を防いでいる。
木下の足下に大きな穴が現れた。
木下は浮遊で回避するが、直後に突風が発生して身体が押される。
木下もドリルと槍を計5本作り出し、武者に向けて撃つ。
武者は移動して避けるが最後に放ったドリルがカーブして武者に向かう。
武者が大太刀で迎え撃ち、ドリルが真っ二つに斬られた。
その後ろから木下が振りかぶった片手剣を大剣に変えて振り下ろす。
武者が正面に水の盾を作ろうとしたが、その途中で木下が切り裂いた。
「もういっちょ!」
空中で縦に一回転して大剣が襲いかかる。
武者は大太刀に水を纏わせて受け止めた。
だが勢いが勝ったらしく、木下の大剣が武者の大太刀を押し込む。
「ふん!」
「ふぐ!」
兜の飾りの一部が切れ落ちた。
武者は不利を悟って大剣を払い落として、一気に下がり周囲を水で囲んだ。
水の武者がやった同じ戦法だ。
「二番煎じは通じねぇよ!」
「果たしてそうかな!」
火の玉が無数に現れて武者を水ごと囲い出す。
水の武者の時はすぐに囲われたが、今回は一味違った。
ボンッボンッボン!
武者の水から槍が飛び出して火の玉を貫き消していく。
「なに!」
木下が慌てて火の玉の数を増やす。
武者は火の玉を迎撃していく。
木下が大剣を振って水を切り裂き、炎の槍を放つ。
炎の槍は武者の大太刀によって斬り落とされ、水の囲いはすぐに修復されていく。
・・・守備に回られたか・・・。
僕はドラゴンバスターを撃つべきか考えた。
撃てば確実に状況を木下優勢に傾けることができる。
ただし、最初に木下に任せてしまったことが二の足を踏ませていた。
「あームカつくぜ。二番煎じをした時点でおとなしくやられておけばいいのによ!」
木下の大剣が消えて両腕がオレンジ色に光出した。
しかも、また周囲の温度が上昇している。
「奥の手か! 良いだろう! 掛かってこい!」
「偉そうに言ってんじゃねーよ! お前はもう終わりだ。全て溶けて消え去れ!」
両腕が巨大化してオレンジ色の炎を纏いながら武者を包み込む。
「何だと!? 水の膜が!」
木下の手が武者を包むと同時に、ジュ! と短い音を発して水の膜が蒸発した。
「こ・・・これが貴様の奥の手か・・・」
「まだまだだよ。俺はまだ未熟だからな。この程度しかスキルを使うことができねーんだ」
「・・・そうか・・・貴様がもっと成長した時に・・・戦いたかった・・・」
武者の言葉が途切れて、抵抗がなくなったのか炎の手がパァン! と包んでいた武者を潰した。
またも熱風が発生して、僕はまた岩陰に隠れた。
木下の炎の手が消えると、そこにはリンゴの大きさの魔石が落ちていた。
通常ならA級の魔石と判断するところだが、そう判断するには、色が違いすぎた。
「虹色・・・」
絶対国とか企業とか組合とかが頭を抱えるヤツだ。
「木下・・・これは持って帰るから」
「んぁ? ああ・・・任せる」
こっちを見ずに、木下は大の字になって寝そべった。
やはり、巨大化はかなり体力を消耗するようだ。
アイツは、今日はこのまま動けないだろう。
時間も20時になる前。
休憩の後食事をすれば、21時にはなるだろう。
今日は身体を休めて明日に備えなければならない。
・・・木下が持つ荷物も確認したいしな・・・。
異界のせいか、地面が熱くなっていないこの場なら、木下のスキルを解除しても問題無いだろう。
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