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阿蘇ダンジョン攻略編
地下1階の構造と仕掛け
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それから僕たちは最初の部屋から出ることにした。
出口は正面と左に一つずつ。
「左から行こう」
「理由は?」
「特にない。可能な限り早く階段を見つけたいけど、僕たちは探知スキルを持たないから、そういうのは運任せだ。行き止まりなら行き止まりで構わないと思っている。選んだ理由として強いてあげるのなら、判断に無駄な時間はかけたくない、かな」
「分かった。京平の言う通り、探知系のスキルがないのが辛いな。これからも俺が先頭で進むから、危ない箇所があったら注意を頼む」
木下が探知系のスキルについて語った。
・・・こいつは本当に変わったんだな。
昔のこいつなら、大火力頼りに無茶な突撃をしていただろう。
「木下」
「何だ?」
「甘木から出て何があった? あの時のお前しか知らないから、今の慎重なお前に違和感があるんだ」
「・・・まあ、お前からすりゃそうだろうな」
木下は歩みを止めて、フルフェイスの頭を掻きながら躊躇うことなく話し出した。
「まず、あの件があって俺たち家族は甘木に住むことができなくなった。当然のことだが、両親は周囲の白い目に耐えきれなかったようだ。引っ越す際に、色々と聞かれて、色々と諭されたよ。・・・京平は信じられないと思うけど、俺は最初、本当にお前と友達になりたくて声をかけたんだよ」
・・・あれのどこが?
1番最初に声をかけられたとき、僕は本を読んでいた。
そこに、こいつは僕の方に強めの張り手をかまして「よっ! お前ボッチか? 何だったら仲間に入れてやるよ!」と言い放った。
無理だろ。
どう考えたら、友達になりたくて声をかけてきた人と思うよ?
「お前はちょっと喋り方を考えろ」
「親にもそう言われたよ。無遠慮は時として暴力だってな」
木下は歩みを再開して僕の前を通り過ぎた。
「半年は苛立ちと後悔の行ったり来たりだったよ。その頃には親にダンジョンに入る許可は貰ってたから、いっそ一人暮らしまで許可をもらって富士市の探索者組合に登録したんだ。親も諦めてたのかね?」
ハハハ・・・と乾いた笑いが木下から溢れた。
「でも、おかげでブラックアイズに出会えた。色々教えてくれたよ。良いことも悪いことも。そこで俺は、何が良くて何が悪いかを改めて知る機会を得たんだ」
木下が振り返って僕を見る。
「あの時の俺は悪かった。二度と同じ過ちは犯さない」
そう言って、彼は最初の広間から出て行った。
僕はその後ろ姿をしばらく見つめ、フゥと息を吐いて歩き出す。
・・・アイツは本当に変わったんだな。
・・・だけど、僕の気持ちはそう簡単に折り合いはつかない。
いつか許すかもしれないが、それは今じゃない。
木下に続いて通路に出ると、そこは1階のような岩肌ではなく、木枠で固定された坑道が現れた。
「こうくるか」
「どうした、京平」
「木下・・・注意だけはしてくれ。多分、手の込んだ罠があるぞ」
「・・・物理なら問題ないぞ?」
「魔力系の罠もあり得る。転移でお前も飛ばされる可能性もある」
「それで下に行けるならいいんじゃないか?」
「上もあり得る」
「・・・なるほどね」
下手すると異界に飛ばされて戻って来れなくなる。
今、この状況でそれをくらうと、最悪になってしまう。
そう言ったにもかかわらず、木下が先頭で歩いていると、ブツンと音がした。
「あ」
「おい!」
下から槍が飛び出し、木下を貫いていく。
「木下?」
「大丈夫だ。物理なら問題ない」
槍が燃えて木下が傷一つなく立っている。
「どんな体になっているんだ?」
「俺にも分からん。触れたりは出来るんだが、傷つけようとすると抜けるらしい」
「・・・一回生命力吸収が効くか試して良いか?」
「・・・あれをくらうと、あの時のこと思い出しそうだよな・・・」
だが、僕のスキルの影響がなければ、二重で安全を確保できる。
木下も了承してスキルをかけたら、見事に倒れたのですぐに切った。
「くらうのかよ!」
「・・・精霊と同じじゃないのか?」
「俺も初めて知った。どういう立ち位置? 炎帝って、もしかして人扱い?」
木下も混乱しているようだが、僕のスキルとの相乗効果は見込めないようだ。
それからさらに進んでいくと、鎧を着込んだスケルトンや死霊系のモンスターが現れた。
全て炎を纏っているかと思いきや、四属性全てのモンスターが出てきた。
その全てがB級のため、僕は装備の耐久力頼みで、攻撃を受けてのカウンター狙いで倒して行く。
木下は危なげなく倒していた。
生物系のモンスターなら加重がMAXにした僕の方が早いだろうが、生命力吸収が効かないモンスターはこいつの方が相性がいいようだ。
「どぁ! うぉ! ぼふ!」
ただ、罠に悉くかかっていく。
ポンコツか!
「木下! もうちょっと周囲を見ろ! 最初だから仕方ないレベルじゃないぞ!」
「わかんねーんだよ! 何を見たら分かるんだ!」
「天井とかに穴があるだろ! 浮遊してれば床は踏まなくていいだろ! 張っている糸をわざわざ燃やすな! 組合の資料で代表的な罠の紹介があっただろうが!」
如月さんがいなくなったからか?
富士ではどんなアタックをしていたんだ!
「いや・・・パーティ組もうとしたんだけど、誰にも組んでもらえなくて・・・」
ボッチになってしまったのかよ!
探索者は実力とスキル主義だから、確かにスキル0で飛び込む世界じゃないけどな!
「持ち前のコミュニケーションは発揮しなかったのか?」
「知り合いはできたよ。ただ、さきに兵庫県か高知県に行って素材からアイテムを手に入れることを勧められたよ。だから、高校を卒業するタイミングで行く予定だったんだけどな」
それよりも前に、炎帝を手に入れたと。
僕たちは左からグルリと部屋を回っていき、幾つもの罠に四苦八苦しながら階段を探す。
一つ安心したのは、この階には中ボスがいなかったことだろう。
出会ってないだけかもしれないが・・・。
僕らの後ろにはB級魔石がゴロゴロと転がっている。
「木下も、この救出が終わったらA級になるだろうな」
「ならねーだろ。力だけあっても中身が伴ってないのは自覚してる」
「いや、意地でもなってもらう」
「おい・・・嫌な予感しかしねーぞ」
「お前も味わえ。どこに行っても見られる苦しみを」
「ふざけんな! お前の私情じゃねーか!」
その通りだったので、僕は何も言わずに先へ進む。
ただ、こいつがA級になることはほぼ確定だろう。
ブラックアイズはこいつとの関係もあるから所属させるだろうな。
貴重な戦力だし。
「木下」
「A級にはなんねーぞ」
「それはどうでもいい」
「どうでもいいのかよ!」
僕たちは他の部屋と違い、装飾のある扉の前にたった。
「今日中に地下5階をクリアする。そこは絶対だ。明日は6階と7階。ここで見つかれば良し、いなかった場合は覚悟を決めろ」
「日和子を見捨てる覚悟かよ・・・」
「違う」
僕は一歩木下に近づいて、しっかり顔が見えるように彼を見た。
「死ぬ気で救い出す覚悟だ。罠なんかにかかっている暇はないぞ。このダンジョンの最下層が何階かなんて誰も分かっていないんだ。ただがむしゃらに探して探して見つけ出す。精神的なリミットは3日だと僕は言ったが、体力的に言えば・・・水さえ飲めば2週間はいける。こっちが諦めなければ、10階より下でも間に合うはずだ。いいな。罠にかかってる暇はない」
「・・・分かった」
木下が頷いたのを見て、僕も頷いてリュックから携帯食を一袋出して、そのうちの一本を半分にして木下に差し出した。
「この奥に何かが居る。これと水を一口飲んで行く。長期戦になってもいいように」
木下はそれを受け取って、兜だけ解除してそれを口の中に入れ、続いて差し出した水も口に含む。
驚いたことに、兜の中の木下は、ベースを2ランクぐらい美形にしたイケメンだった。
僕も半分を食べて、一口だけ水を飲む。
それからお互い、頷いて扉を一気に引いた。
中から風が溢れ出た。
風を纏った武者が、口元に笑みを待っていた。
・・・最悪だ。
「木下」
「何だ」
「絶対に全力を出すな!」
出口は正面と左に一つずつ。
「左から行こう」
「理由は?」
「特にない。可能な限り早く階段を見つけたいけど、僕たちは探知スキルを持たないから、そういうのは運任せだ。行き止まりなら行き止まりで構わないと思っている。選んだ理由として強いてあげるのなら、判断に無駄な時間はかけたくない、かな」
「分かった。京平の言う通り、探知系のスキルがないのが辛いな。これからも俺が先頭で進むから、危ない箇所があったら注意を頼む」
木下が探知系のスキルについて語った。
・・・こいつは本当に変わったんだな。
昔のこいつなら、大火力頼りに無茶な突撃をしていただろう。
「木下」
「何だ?」
「甘木から出て何があった? あの時のお前しか知らないから、今の慎重なお前に違和感があるんだ」
「・・・まあ、お前からすりゃそうだろうな」
木下は歩みを止めて、フルフェイスの頭を掻きながら躊躇うことなく話し出した。
「まず、あの件があって俺たち家族は甘木に住むことができなくなった。当然のことだが、両親は周囲の白い目に耐えきれなかったようだ。引っ越す際に、色々と聞かれて、色々と諭されたよ。・・・京平は信じられないと思うけど、俺は最初、本当にお前と友達になりたくて声をかけたんだよ」
・・・あれのどこが?
1番最初に声をかけられたとき、僕は本を読んでいた。
そこに、こいつは僕の方に強めの張り手をかまして「よっ! お前ボッチか? 何だったら仲間に入れてやるよ!」と言い放った。
無理だろ。
どう考えたら、友達になりたくて声をかけてきた人と思うよ?
「お前はちょっと喋り方を考えろ」
「親にもそう言われたよ。無遠慮は時として暴力だってな」
木下は歩みを再開して僕の前を通り過ぎた。
「半年は苛立ちと後悔の行ったり来たりだったよ。その頃には親にダンジョンに入る許可は貰ってたから、いっそ一人暮らしまで許可をもらって富士市の探索者組合に登録したんだ。親も諦めてたのかね?」
ハハハ・・・と乾いた笑いが木下から溢れた。
「でも、おかげでブラックアイズに出会えた。色々教えてくれたよ。良いことも悪いことも。そこで俺は、何が良くて何が悪いかを改めて知る機会を得たんだ」
木下が振り返って僕を見る。
「あの時の俺は悪かった。二度と同じ過ちは犯さない」
そう言って、彼は最初の広間から出て行った。
僕はその後ろ姿をしばらく見つめ、フゥと息を吐いて歩き出す。
・・・アイツは本当に変わったんだな。
・・・だけど、僕の気持ちはそう簡単に折り合いはつかない。
いつか許すかもしれないが、それは今じゃない。
木下に続いて通路に出ると、そこは1階のような岩肌ではなく、木枠で固定された坑道が現れた。
「こうくるか」
「どうした、京平」
「木下・・・注意だけはしてくれ。多分、手の込んだ罠があるぞ」
「・・・物理なら問題ないぞ?」
「魔力系の罠もあり得る。転移でお前も飛ばされる可能性もある」
「それで下に行けるならいいんじゃないか?」
「上もあり得る」
「・・・なるほどね」
下手すると異界に飛ばされて戻って来れなくなる。
今、この状況でそれをくらうと、最悪になってしまう。
そう言ったにもかかわらず、木下が先頭で歩いていると、ブツンと音がした。
「あ」
「おい!」
下から槍が飛び出し、木下を貫いていく。
「木下?」
「大丈夫だ。物理なら問題ない」
槍が燃えて木下が傷一つなく立っている。
「どんな体になっているんだ?」
「俺にも分からん。触れたりは出来るんだが、傷つけようとすると抜けるらしい」
「・・・一回生命力吸収が効くか試して良いか?」
「・・・あれをくらうと、あの時のこと思い出しそうだよな・・・」
だが、僕のスキルの影響がなければ、二重で安全を確保できる。
木下も了承してスキルをかけたら、見事に倒れたのですぐに切った。
「くらうのかよ!」
「・・・精霊と同じじゃないのか?」
「俺も初めて知った。どういう立ち位置? 炎帝って、もしかして人扱い?」
木下も混乱しているようだが、僕のスキルとの相乗効果は見込めないようだ。
それからさらに進んでいくと、鎧を着込んだスケルトンや死霊系のモンスターが現れた。
全て炎を纏っているかと思いきや、四属性全てのモンスターが出てきた。
その全てがB級のため、僕は装備の耐久力頼みで、攻撃を受けてのカウンター狙いで倒して行く。
木下は危なげなく倒していた。
生物系のモンスターなら加重がMAXにした僕の方が早いだろうが、生命力吸収が効かないモンスターはこいつの方が相性がいいようだ。
「どぁ! うぉ! ぼふ!」
ただ、罠に悉くかかっていく。
ポンコツか!
「木下! もうちょっと周囲を見ろ! 最初だから仕方ないレベルじゃないぞ!」
「わかんねーんだよ! 何を見たら分かるんだ!」
「天井とかに穴があるだろ! 浮遊してれば床は踏まなくていいだろ! 張っている糸をわざわざ燃やすな! 組合の資料で代表的な罠の紹介があっただろうが!」
如月さんがいなくなったからか?
富士ではどんなアタックをしていたんだ!
「いや・・・パーティ組もうとしたんだけど、誰にも組んでもらえなくて・・・」
ボッチになってしまったのかよ!
探索者は実力とスキル主義だから、確かにスキル0で飛び込む世界じゃないけどな!
「持ち前のコミュニケーションは発揮しなかったのか?」
「知り合いはできたよ。ただ、さきに兵庫県か高知県に行って素材からアイテムを手に入れることを勧められたよ。だから、高校を卒業するタイミングで行く予定だったんだけどな」
それよりも前に、炎帝を手に入れたと。
僕たちは左からグルリと部屋を回っていき、幾つもの罠に四苦八苦しながら階段を探す。
一つ安心したのは、この階には中ボスがいなかったことだろう。
出会ってないだけかもしれないが・・・。
僕らの後ろにはB級魔石がゴロゴロと転がっている。
「木下も、この救出が終わったらA級になるだろうな」
「ならねーだろ。力だけあっても中身が伴ってないのは自覚してる」
「いや、意地でもなってもらう」
「おい・・・嫌な予感しかしねーぞ」
「お前も味わえ。どこに行っても見られる苦しみを」
「ふざけんな! お前の私情じゃねーか!」
その通りだったので、僕は何も言わずに先へ進む。
ただ、こいつがA級になることはほぼ確定だろう。
ブラックアイズはこいつとの関係もあるから所属させるだろうな。
貴重な戦力だし。
「木下」
「A級にはなんねーぞ」
「それはどうでもいい」
「どうでもいいのかよ!」
僕たちは他の部屋と違い、装飾のある扉の前にたった。
「今日中に地下5階をクリアする。そこは絶対だ。明日は6階と7階。ここで見つかれば良し、いなかった場合は覚悟を決めろ」
「日和子を見捨てる覚悟かよ・・・」
「違う」
僕は一歩木下に近づいて、しっかり顔が見えるように彼を見た。
「死ぬ気で救い出す覚悟だ。罠なんかにかかっている暇はないぞ。このダンジョンの最下層が何階かなんて誰も分かっていないんだ。ただがむしゃらに探して探して見つけ出す。精神的なリミットは3日だと僕は言ったが、体力的に言えば・・・水さえ飲めば2週間はいける。こっちが諦めなければ、10階より下でも間に合うはずだ。いいな。罠にかかってる暇はない」
「・・・分かった」
木下が頷いたのを見て、僕も頷いてリュックから携帯食を一袋出して、そのうちの一本を半分にして木下に差し出した。
「この奥に何かが居る。これと水を一口飲んで行く。長期戦になってもいいように」
木下はそれを受け取って、兜だけ解除してそれを口の中に入れ、続いて差し出した水も口に含む。
驚いたことに、兜の中の木下は、ベースを2ランクぐらい美形にしたイケメンだった。
僕も半分を食べて、一口だけ水を飲む。
それからお互い、頷いて扉を一気に引いた。
中から風が溢れ出た。
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「何だ」
「絶対に全力を出すな!」
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