上 下
54 / 134
宝箱探索編

新装備とアタックの日

しおりを挟む
祭りが終わって、街は通常に戻った。
莉乃と一緒に見た花火もまるで幻だったかのように感じる。

あれからまだ・・・僕は答えを貰っていない。

でも、指輪はつけてくれて、たまにそれに視線を落として微笑む彼女を何回か見た。
その顔を見るたびに、渡してよかった、と思った。
付いたスキルは、僕が確認しようとしたら隠されてしまった。

「秘密!」

強く拒否されたので、それ以来聞くこともできない。

それからまたしばらくのんびりした日が続いて、コートが必要になる季節になる頃に、僕たちの装備の更新が完了した。
今回は前回ほど大掛かりではなかったが、それでも厳重な警備のもと、一の宮体育館に運ばれていく。

「凄い」

思わず声が漏れた。

全てにカラーがついていた。
僕は白だが、所々光の加減で虹色に見える。
莉乃のはスカイブルー。
空を飛ぶ彼女にピッタリの色だ。
高城さんが赤色で、リーダーカラー。
また、動物系モンスターを翻弄する色なので、残像使いの彼女と相性がいい。
植木さんは本人に一番似合うピンク。
麻生さんは緑色だが、周辺に溶け込んで見えなくスキルから来てるのかな?

「他のエリアで使うことを考えてないですよね? 森の中でも目立つ色がいますよ?」
「そこは使用者の腕です」
「腕で何とかできる次元ですか?」

ピンクや赤が緑に混じることはないだろう。
植木さんとか、最大出力で魔法使ったら体力が尽きてしまうのに、どうするつもりだ。
ただ、僕以外の人はみんな気に入ったようで、みんな自分のカラーを嬉しそうに眺めている。

「やっぱり、自分の色の専用装備って、すっごく憧れるのよ。これぞ私! って思えるからね」

確かに、自分の物という感じは出てくる。
昔のアニメでも、赤い彗星や白い悪魔は有名な機体の証しみたいだし。

「性能も上がってますよ。瀬尾さんの装備は私が説明しましょう」

僕を連れて松嶋さんが白い専用装備の前に立った。
外見上は、前回から虹色のパーツが取り付けられただけのように見える。

「まずは、冷却システムが簡略化されました。これはアイスドラゴンの素材を使ったことによって効率がグッと上がった為ですね。前回と同じパフォーマンスを発揮できます。次に外装について、アイスドラゴンの鱗を縄文杉に覆うように取り付けました。これにより不燃性が格段にアップしましたので、大抵の火に関する攻撃は無効化できます。ただ、スキルではないので、超高熱には耐えることができませんのでご注意ください」

ここで一旦説明を切って、松嶋さんは息を整えた。

「メインの足です。今回アイスドラゴンの鱗を組み込んだことで、即撃ち即冷却が可能となりました。これにより、ドラゴンバスターの短時間撃ちが可能となりました!」

短時間撃ち、つまり20分待たなくていいということだろうか?

「具体的に言いますと、足のレバーを上げてドラゴンバスターを撃つところまでは一緒です。新装備は、それから足の内側にある冷却ボタンを押すと、熱を持った機械を即冷却してくれます。多少は待ちますが20分も待つ必要はありません。連続撃ちができれば一番よかったのですが、現段階ではこれが精一杯でした」
「冷却ボタンを押して発射可能になったら、何か合図はありますか?」
「ボタンを押すと、まずフェイスガードの右下に赤い丸が現れます。発射可能になったらそれが青に変わりますので、そちらで判断が可能となっています」
「およそ何秒かかりますか?」
「15秒です」

微妙な数字だ。
連発したい時にできないが、一撃必殺ではないので助かりはする。

「緊急では・・・使いづらそうですね」
「秒数を数える状況ではない時はきついですね」

僕以外の人たちが標的になったら、15秒を待つことができるか・・・。

「連続して撃ったらどうなりますか?」
「撃てません。セーフティとしてレバーが上がらなくなります。例え死にそうになっても上がりませんので、ご注意ください」

上がらないのか。
なら、今まで通り、一撃必殺のつもりで行ったほうがいいのだろう。
連発を期待して致命的な15秒になるのは避けたい。

「うむ、反応が悪いですね。凄く短縮できたと思ったのですが」
「命がかかった場面で15秒は長すぎます」
「そうですか・・・参考にして次回の更新に活かします」

他の人の装備はどう変わったのか。
気になるところだ。


みんなの表情でアップグレードに差が出たことがわかった。

植木さんと高城さんは笑顔で麻生さんは微妙そう。
莉乃は難しい顔をしている。

「ちょっと性能を打ち合わせる必要がありそうですね。良かった人からいきますか」
「じゃあ、私から。私のは光の反射を利用して、残像体が増えることになったわ。さらに、目があるモンスターには強力なレーザーを当てることができるの。対動物戦では確実に優位に立てるわね」
「次に私ね。私のは細かい制御が出来るようになったわ。最大出力で全体攻撃や超質量攻撃も魅力的だけど、土魔法の一番いい点って敵の足元を安定させないって思ってるの。前回よりもより深く落とし穴を作ったり、足を岩でロック出来るようになったはずよ」

モンスターへの撹乱や行動阻害系のバリエーションが増えたということか。

「次は難しそうな顔をしていた莉乃さん」
「うーん。背中のジェットの出力を上げて、手足に姿勢制御用の空気噴射器を付けてくれたんだけど、これって一つ間違えれば大事故起きそうなんだよね」
「狭い空間で使ったら壁に衝突ですね」
「韋駄天を前提にした装備だから、速さを重視してくれたみたいだけど・・・外なら慣れれば良さそうだけどね」
「それじゃ私か。私のは存在を薄くする装備になっていたよ。匂いも音も出さないたてない勘付かせない。バフ支援をメインに考えられてるの。私も攻撃するんだけどね」

何とも現場を知らない人たちが考えた、極端な装備に変わっていました。
どうしたものかと考えていたところ、莉乃が手を振って何か言いたそうにしていた。

「どうかしました?」
「一回これで行ってもいいんじゃないかな?」
「事故を起こすかもしれませんよ?」
「前の装備から、極端になったと言っても、基本的な性能は変わっていないから、私は自分のことだけを考えたら問題なさそう。何より、2人はアップグレードしてるから、連携次第だと思うよ」

莉乃の言うことも一理ある。
1日だけの探索なら問題ないし、青いやつに遭わなければ大丈夫だろう。

「それじゃ、いつ行きますか?」
「明日がいい人」
「「「はーい」」」

3人が手を挙げた。
僕はもうちょっとのんびりしたかったけど、しょうがないから付き合いましょう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。  運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。  憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。  異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。

処理中です...