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宝箱探索編

2人でのアタック

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莉乃と一緒にドラゴンについて話をした。
沖縄にはドラゴンは行かなかったらしいが、黒いワイバーンの話は興味が出た。

「はぐれと同じようなものかな?」
「どうだろ。私が行ったときは、もうほとんど虫の息だったからね、確認のしようがなかったよ」
「凄いですね。A級に近かったとしても、それなりの防御力を持っているはず。誰が決め手の一撃を入れたのか知りたいな」
「ゴタゴタ混乱してたからね。私が聞いても誰か分からない状態だった」

そんなに強い人がいたらもっと話題になっててもおかしくないと思うのだが・・・。
僕の頭に反神教団の名前が浮かんだが、それにしては超レアスキルの被害がない。
沖縄に参加した人たちに聞いても、殺人や盗難などの話はなかった。
日本全土が混乱した中で、動くなら絶好の機会だったはずなのに・・・。

「莉乃さんも気をつけてください。僕のスキルが通じない奴がいますから」
「黒ずくめに黒仮面ね・・・凄いよね」
「凄い、んですか?」
「凄いよ。京平くんは仮面をつけた事ある?」

子供の頃に、じーちゃんばーちゃんと一緒に行った祭りぐらいだろうか。
もうほとんど覚えていない。

「あれを着けるとね、足元が見えないんだよ」
「・・・斬る瞬間は見てないけど、あいつは2人の首を一撃で斬ってた」
「それが出来るってことは、相当な腕前、達人って事よ」

そんな人が何で反神教団なんかに加わっているのか分からない。
神を倒してレベルとスキルを人類に与えるだったか?
混乱を生みそうな行動理念だ。

「でも、私もレベルがあったら欲しいかも」
「まあ、確かにレベルを上げれば強くなって、モンスターも余裕で倒せるから欲しいでしょうけど」
「それだけじゃないよ。ゲームにありそうなパラメーターを上げれば、困っている人が救われるんだよ」
「困っている人?」
「うん。難病に指定されている子とか、心が弱くて社会に馴染めない子とかそう言う人たちが助かると私は思う」

力・体力・知力・精神・魅力・器用・運。
パッと思いつくだけでも、誰もが求めそうなパラメーター。
運動やっている人でもレベルを上げるだけでトップと戦えるとなれば、多少無理してでも上げるだろう。
ましてや、難病指定の病気で、僕が知っているぐらい有名な、年齢とともに筋力が失われていく病気、その患者などは力と体力のパラメーターが上がれば、おそらく普通に生活が出来るだろう。

「うーん。確かにそれは良さそうですね。でも、1番最初にレベルをMAXまであげる人がいるとしたら、確実に悪人ですよ。心優しい人は、他人を犠牲にして自分のレベルを上げようとはしませんから。そうなった場合・・・地球は大混乱だ」
「そうだね。そこが難しいところだね」

世の中はうまく行かない。
そういうふうに作られている。
創造神が世界を作る際に、その辺りを大雑把に作ったんだろう。
全ての責任を神様に押し付けて、僕は思考を放棄した。

しばらくベッドに寝そべって休んでいると、僕の上に莉乃さんが乗ってきた。

「・・・何で乗ってるんですか?」
「私の魅惑的なボディーで誘惑してるの」
「こっちは答えを待っているんですけど?」
「うん、まだ待って。まだ勇気が出ないから」
「なら誘惑しないでください! こっちは我慢が限界なんだっよ!」

腹筋で莉乃さんを跳ね上げて背中に手を回し、グルリと回転して彼女の上に乗った。

「単純な力なら僕の方が上ですよ。危機感を持ってください」
「私、岐阜の探索者にナンパされたよ?」
「そいつの特徴を教えてください。使えなくなるぐらい吸収します」
「せ」
「生命力を!」
「そう言おうとしたよ?」
「・・・」

僕は莉乃さんから降りて、ベッドの端に座って頭を掻く。

「襲わないの?」
「彼女になってくれたら遠慮なく襲いますよ」
「ごめんね、まだ勇気が出なくて」

莉乃さんが僕の背中に抱きついてくる。
柔らかい感触が背中を刺激する。

「あたってますよ」
「・・・あててんのよ」
「はいはい・・・」

僕は振り返って莉乃さんを見る。
莉乃さんは僕を見て・・・目を閉じた。

僕は少しだけ唇にキスをした。

「・・・可愛いキスだね」
「うっさい・・・」


次の日、僕たちは組合と松嶋さんに2人でアタックすることを伝えた。
天外天はもう直ぐ解散することは分かっている。
でも、僕と莉乃はまだ探索者を続けるつもりだ。

「今のうち2人で慣れておくのはアリですね。ただ、スモモの魔石は4つ手に入れて欲しいです」
「B級はいらないんですか?」
「いりません。拾う必要はないので、ドラゴンバスターに使いたかったらいくらでも使ってください。あ、アイスドラゴンの素材を購入したので、今回のアタックが終わったら装備のアップグレードを行います。しばらく使えないのであしからず」

B級の価値が下がったのだろうか?
松嶋さんは微笑むだけで何も言わない。
・・・10個は持って帰ろう。

「今回は1日で戻る予定ですよ? それに、宝箱目当てで進みますので細かいダンジョンの情報は得られないと思います」
「問題ありません。スモモが得られるだけでも私たちにとっては十分に利益がありますのでご安心を。ところで・・・新しいCMを製作したのですが、瀬尾さんはご確認されましたか?」
「え? CMですか? まだそんな話も聞いてませんけど?」
「そうですか・・・いえ、大丈夫です。後でお話ししましょう」

CMか・・・僕があんまり乗り気じゃないことを知ってる人たちがどうしようか悩んでいるんだろう。
まだ僕の元に話は来ていないので、とりあえず置いておいて、僕たちは支部長に、ダンジョンに行くことを伝えた。

「そうか・・・ちょっときな臭いから、十分注意するように。カメラもしっかり録画しておけよ」

僕と莉乃は頷いて、組合の中で僕たち専用の部屋にしてもらった場所に行き、それぞれの装備に着替えた。

「泊まる予定はないので、リュックだけでいいのが楽ですね」
「カートも意外と荷物になるもんね。でも、荷物を全部預けて大丈夫?」
「リュックは莉乃さんの背中のジェットの邪魔になるから、僕が適任ですよ」

リュックの中には携帯食をメインに入れて背負った。
宿泊用の荷物を持つよりはるかに軽い。

「なんか気が引けるなー」
「莉乃さんは飛んでください。莉乃さんが飛んでる姿、僕は好きですよ」
「・・・ムフ!」

莉乃が口元を押さえて震えている。
なんか変な事を言っただろうか?
何となく微妙に恥ずかしくなったので、フェイスガードを下ろした。

ファイアバードの巣に着いて、莉乃が先陣を切ることになった。
僕がおんぶすれば? と言ってみたが、頭を抱えてすごく悩んでから「私がやる」と歯軋りをしながら言った。
そんなに悔しがること?

そんな苛立ちをファイアバードにぶつけているのか、空中で無双している。
旋回の速度が莉乃の方が速いらしく、ファイアバードが追いつけていない。韋駄天の真骨頂といったところか。
逆に僕の方が苦戦していた。
生命力吸収を使わないと、連続して突進してくるファイアバードと火の玉に翻弄されて反撃が難しい。
ようやく拳を出せたかと思ったら、突然軌道を変えて拳を避ける。
突進と火の玉は避けれるのに、反撃ができない!
ポータルまで、僕は避けながら、莉乃が倒すという体制で進んだ。
到着する頃には、僕の自信はズタボロに、莉乃は鼻息荒く胸を張っていた。

B級を捉えることが、これほど難しいとは思わなかった。
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