人類はレベルとスキルを獲得できませんでした。

ケイ

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ドラゴン来襲編

ドラゴン探知機

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それからも、僕は入江さんから女性の心というものを色々と聞いて、次会ったときはいくつか実践しようと心に決めた。

「そろそろドラゴン対策の話をしたい」

土尾さんにそう言われてハッとした。
そういえば聞きたいことがあったんだ。

「ドラゴンが何処に来るのかどうやって分かるんですか?」
「探知機がある」
「探知機?」

日常ではほぼ出会えない対象の探知機?
ドラゴン特有の何かを捉えているとしても、その何かをどうやって計測したのか。

「自衛隊からの支給品だ」

外部バッテリーがついたノート型PCを僕に渡してきた。
それを僕が開くと、内側は全部が画面で日本地図が現れ、タップなどで操作できるようになっていた。

「この探知機に自衛隊がドラゴンの襲撃予測地を教えてくれる」

土尾さんが画面を操作して、広域が見れるようにし、日本を画面の左上に移動と右下の方にそれは現れた。

「天空大陸・・・」
「そうだ」
「この地図は衛星ですか?」

旧暦に使用されていた衛星は、今でも稼働していて正確な地図やGPSなどはいまだに衛星に頼りきっている。
専門家からはいずれ寿命が来るから、代わりの衛星を打ち上げる話が出てはいるが、空をドラゴンたちが占有している以上、人類になす術はない。

「衛星からの映像に、自衛隊の特別隊員からのデータを合わせているらしい」
「この赤い点がドラゴンなんですね」
「そうだ」

右下の天空大陸の近くを赤い点が動き回っているが、まだそんなに多くはない。

「聞いた話だとぉ、ワイバーン種が主らしいよぉ」
「・・・ドラゴンとワイバーンって何が違うんですか?」
「うーん、プテラノドンみたいな翼竜でぇ、火を吐いてくるやつがワイバーン、背中に翼があってぇ、火と言わず何でもかんでも魔法を撃ってくるのがドラゴンかなぁ?」
「それで合ってる」
「ドラゴンが襲ってきた過去の事例ってありますか?」
「ある。確かニュージーランドにアイスドラゴンが来襲したことがあったはずだ」
「北の島がぁ、氷河期と同じ光景になったってあるねぇ」

入江さんが自分の携帯で調べた当時の画像を見せてきた。
おそらく海沿いの地域なのだろうが、完全に氷で覆われていた。
短い動画で、軍とドラゴンの戦闘も観た。

「映画を観ているみたいですね」
「物理法則に反している生物だ。現実感がないというのは理解できる」
「物理法則に反しているんですか?」
「あんな巨体が、あの程度の翼で飛べるわけないんだ。鳥は小さいが、それでも骨を軽量化してようやく空を飛べる。そのドラゴンの図体からして、内臓や筋肉の柱となるべき骨が軽量化されてしまったら、地上に降りた瞬間折れてしまうはずだ。それがないということは、物理法則とは別の何かで飛んでいることになる」

いつになく饒舌に説明してくれた。
ドラゴンについて詳しく調べたのだろう。
僕は動画を巻き戻してもう一度確認をする。
表面を氷が覆っている。
阿蘇の火龍が火を纏っていたのと同じ現象だ。
ワイバーンであればそういうことはないのだが、もしここにドラゴンが来るのであれば、とどめの刺し方を考えないといけない。

「ドラゴンキラーって和歌山県の何処かに配備されましたよね?」
「何処だったかなぁ?」
「和歌山と三重の境だ」

と言うことは、僕らは独自にワイバーンたちの倒し方を考えないといけないのか。

「空飛ぶA級モンスターの倒す手段って何かありますか?」
「みかんを食べにワイバーンが降りてくる」
「そこを瀬尾くんが踏み潰すぅ」
「・・・そう上手く行くか心配なんですが」

せめて僕が、ワイバーンが飛んでいる高度まで行くことができればいいのだが。

そんな荒唐無稽なことを考えていたせいだろう。
次の日の朝、田んぼのど真ん中に大きめのトランポリンが設置されていた。

「・・・予想はできるのですが、訊いていいですか?」
「・・・」
「・・・」

2人とも解答拒否してくれた。
とりあえず、用意していたベルゼブブの籠手を装備してトランポリンに乗ってジャンプする。
通常の競技用のそれよりも大きく作ってあるトランポリンは、安全性がいくつも無視されていて、スキル無しだと落下の際に骨折だけでは済まない設計になっていた。

「これ、完全に僕専用で作られていますよね?」
「・・・」
「・・・」

2人は答えない。
・・・卑怯者!

それからしばらくはジャンプの練習だった。
なんせ、トランポリンなんか小学校以来したことがなかったため、姿勢制御だけでも一苦労となっている。
その際に何度も枠外に落ちてはいるが、せいぜい擦り傷を負う程度なので、2日目には落下を恐れずに何度も飛び跳ねた。
もちろん身体強化はずっと使用している。
3日目には鳥と同じ高度まで跳ぶことが出来た。

「問題は飛び上がる早さかなぁ」
「一回であそこまで行ければいいんですけどね。早くても3回跳ばないと難しいですからね」

トランポリンのネットやバネの強度の調整にも限度があって、あの高さを実現するためには今の強度がベストらしい。

「いっそ、加重を使ったらどうか?」
「トランポリンが壊れますよ」

土尾さんは首を横に振った。

「タイミングだ。加重をかけた状態でトランポリンに乗り、沈んだところで解除する。そうすると体重差で1回目から高く飛べる」

なるほど、理屈は分かった。
僕は加重を使ってトランポリンに乗る。
5分も経てば、昆虫のA級モンスターをくの字に折り潰すことができる重さになるはずだ。
僕は軽くジャンプを始め、そこそこ深く沈んだタイミングで加重を解除した。

「うぉ!」

一気に上昇したため、姿勢制御が追いつかない。
体が変に回転しながら、胴体からネットの上に落下した。
そして見事に弾き飛ばされて枠外へ飛び出し、転がって土まみれになってようやく止まった。
・・・帰る前にどこかで水遊びできないかな。


ホテルに戻って莉乃さんに電話をかけた。
特に理由はないが、近況を共有するだけで少しは距離が縮まる気がする。

「莉乃さんは、姿勢制御をどうやってますか?」
『ワタシの場合は参考にならないと思うよ。目の前にあるものを蹴って、次のを蹴ってってしてるだけだし。方向は蹴ったら行きたい方向に行くから考えたこともなかったな』

完全に感覚型の天才でした。

『しかしトランポリンねー、見た目は面白いと思うけど、あれって慣れてないとなかなか上手く落ちることが出来ないんだよね』
「僕は一回である程度の高さまで上昇することが出来たので、連続して跳ぶ必要がなくなったのが救いですね」
『飛ぶ系のスキルでもあったの?』
「いえ、加重を利用する方法です。重いうちに跳び乗って、沈み切ったら加重を切って跳ぶって流れなんですけど」
『空中の敵を確実に無力化できる手段がないと的にされる戦法だね。私だったら即拒否だよ』
「僕も最初はなんだこれって思いましたけどね。でも、一般人が高いとこまで行く方法はこれしかなかったみたいです」

他にもいくつか候補はあったのだが、ドラゴンを地上に落とした後、さらに踏み潰すという作業があり、下手すると別の場所に移動しなければならないという事もあって、背中に背負う系の追加装備案は無しになった。

「沖縄はどんな感じですか?」
『うーん、天気が良くて、海水浴を毎日してる状況だよ。遠くに天空大陸が見えるのがちょっと怖いってことぐらいかな』
「そこから見えるんですか?」
『見えるよ。今日はちょっと雲で掠れてるけど、端っこが見えてる。竜族があそこに住んでいるって考えると怖いよね』
「大陸が飛んでいる時点で怖いですけどね。どんなシステムで地球の重力に反しているのかすごく気になります」
『落ちたりしたら大変だしね』

それこそ、世界規模の大洪水と海面上昇で国がいくつもなくなるだろうな。
現状維持が1番いいみたいだ。
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