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ドラゴン来襲編
和歌山で恋愛教室
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その日は顔合わせがメインだったため、近況やお互いのことを話し、明日には和歌山県へ移動することが告げられた。
「東京へ来たと思ったら、すぐに和歌山だよ」
『へー、移動が大変だね。ちゃんと駅弁は吟味して買うようにね。でないと、あれ食べたかったのに! ってなっちゃうよ』
「駅弁でそんなに時間をかけませんよ。僕はどれも初めて食べるものだし」
『だからこそだよ! 初めて食べる駅弁が不味かったりしたら、もう二度と駅弁なんか食べるかってなるよ! 京平くんにそんなトラウマは似合わない! 私がしっかり調べて、後でメッセ送るね!』
「はいはい。莉乃さんが選んだのを食べますよ。感想は何文字以内がいいですか?」
『3文字で!』
「美味いで終わりじゃないですか!」
たわいのない会話を楽しみ、宮古島の様子を聞いて、水着姿を見れなかったのをちょっとだけ残念に思った。
それから荷物をまとめていると、何となくそれが目についた。
「・・・使うタイミングがないよな」
進化の実・・・。
危険な状況になったら使おうと心に決めていたが、まだそんな状況にはならない。
ドラゴン相手なら、使う覚悟が出来るかもしれない。
僕は進化の実が入った巾着を首から下げた。
何となく身につけていた方がいい気がした。
次の日の朝。
着替え諸々が入ったバッグを持って新幹線で新大阪に行き、そこから車を借りて和歌山市まで移動した。
「来る場所の予測とか出来ているんですか?」
「予測はある程度出来てるよぉ。海外の事例からぁ、オレンジ畑に降り立つらしいよぉ。だからぁ、私たちが最初に待機する場所は和歌山のみかん畑なんだよねぇ~」
「ここから移動って西に行くにしても東に行くにしても難しそうですが」
「自衛隊のヘリが待機している。俺のスキルで敵の心配はしなくていい」
俺の道に敵は無しだったか?
ふざけた名前のスキルだが、移動に関してはこれほど心強いものはない。
「そのスキルがあればダンジョンでもスムーズに進めそうですけど?」
「・・・あくまで進む方向にいないだけで近づけはする。無差別攻撃なんかも意味をなさない」
「全く安全なスキルじゃないんですね」
「まぁ、フツーの速度の場合だよねぇ。私の抵抗無効を使えばぁ、空気抵抗も無視するからぁ、すっごいスピード出るよぉ。絶対に的にはされないからぁ、安心してぇ」
電車の中でそんな会話をしながら、僕らは和歌山市に到着して空腹を覚えたので、近くのお好み焼きっぽい料理を提供する店に入った。
「せち焼き?」
「お兄ちゃんたち、和歌山は初めてかい?」
「そうですね。僕は熊本から、2人は?」
「私たちは東京だよぉ」
「だったらせち焼きも初めてだよね。和歌山発祥なんだよ。たっぷり食べていってくれ」
そう言うと、店主は鉄板に上に麺を出して焼き始め、その横でキャベツや肉を焼いて店主のタイミングで全部を混ぜ、ソースを絡め、卵を落とし、しっかり混ぜて焼き固めた。
見た目は関西お好み焼き。
だけど、食感は焼きそば風で口の中が楽しかった。
宿泊するホテルは、緊急性を考えて一緒のフロアーにしてもらった。
色々条件をつけたが、全部承諾してくれたホテルには感謝しかない。
ホテルで荷物を下ろしたら、僕らは一度土尾さんの部屋に集まることになった。
僕はベッドに座って、続けてゴロリと横になった。
「ドラゴンか・・・」
莉乃さんの斬撃特化の短剣を使えない物にしたあの皮が装備出来れば、日本の探索者や自衛隊、警察も死亡率が減るだろうな。
もちろん、強力な一撃を喰らって内蔵破裂とかすれば折角のドラゴンの皮も無駄なのだが、斬撃にはスキルがなくても耐性が多いにある。
天外天用に鱗をもらうことできるだろうか?
しばらくのんびりとしながらお茶を飲んでいると携帯にメッセージが届いた。
土尾さんからで、部屋に来てもいいという内容だった。
僕は土尾さんから聞いていた1503号の扉をノックするとガチャっと扉が開いた。
「どうぞ」
「失礼します」
中に入ってまず目についたのは、僕たち3人の装備品だった。
「誰が持ってきたんですか?」
「警察の運搬部署がある。チェックしても構わない」
僕の装備は一塊にしてあった為、遠慮なく一つ一つ確認する。
まあ、専用装備じゃなく、僕のフィールド用の装備なので、多少いじられていても問題はない。
ただ、ベルゼブブの籠手は念入りにチェックした。
今回のドラゴンとの戦闘では、この装備が重要になる。
尻尾攻撃や体当たりを喰らった場合、衝撃で骨折したり内臓を痛めるのはよくある話だからだ。
「この装備は何処か別の場所に保管するんですか?」
「いや、ここに置いておく。見張は俺」
「・・・外出した際に盗られたりは・・・」
「このフロアー全部屋を公安が借りた。24時間体制で誰かしらが見張につく予定」
流石国家権力。
長くても1ヶ月ぐらいか・・・。
天空大陸がどこに向かうかによるが、この件が終わるまで、僕も自分の装備に注意しておこう。
「遅くなったぁ。ごめんねぇ」
片手にお酒やジュースを入れたコンビニ袋を持って、入江さんが入ってきた。
「はい、返すねぇ」
そう言って入江さんは土尾さんにカードキーを渡す。
土尾さんはそれを無造作にテーブルの上に置いた。
「とりあえずぅ、いろいろ買ってきたよぉ。土尾くんはビールでよかったよねぇ? 瀬尾くんはファンタにしたぁ」
「ありがとうございます」
「いいんだよぉ」
入江さんは袋の中から梅酒を取り出して、プシュ! と栓を開けた。
「乾杯しよぉ」
「ああ」
土尾さんも栓を開けて缶を前に出す。
僕もそれに倣って缶を前に出した。
「かんぱーい」
「乾杯」
「乾杯」
入江さんの缶のちょっと下に土尾さんが持っている缶を当て、さらにその下に僕が缶を当てる。
それからみんな揃って口をつけた。
変わらない葡萄の味が炭酸と一緒になって舌の上で弾けていく。
「はぁ~、落ち着くねぇ」
「そうだな」
「・・・」
のんびりとした時間が流れる。
2人はその空気を楽しむかのように目を閉じている。
「2人は・・・付き合っているんですか?」
僕の質問に、2人は大きく目を開いて固まった。
「・・・えっとぉ、何を見てそう思ったのかなぁ?」
「何だか居心地がよさそうにしてたというのが理由です」
「そっかぁ~。でもぉ、違うんだよぉ。私たちはぁお互いのことを理解しているだけぇ。ただそれだけなんだよぉ」
入江さんがにっこりと微笑む。
素敵な笑顔だ。
「そうだな、いい理解者だ」
土尾さんも微笑んでビールを飲む。
「・・・そうですか。・・・ちょっと相談なんですが・・・好きな人について」
「えぇ、恋話なのぉ? いいよぉ、相談乗ってあげるぅ。お姉さんに任せなさぃ」
ムフーっと鼻息を鳴らして入江さんが胸を張る。
「俺は無理だ」
土尾さんは早々にギブアップして摘みを楽しみ出した。
柿の種のわさび味を大量に掴んで口の中に入れている。
「実は、好きだということは伝えていて」
「ほぅほぅ」
「相手も満更じゃないはずなんですけど、まだ言ってない事があるとかで・・・」
「ほぉー」
入江さんは目を閉じて顎に手をあて考える。
真剣かどうかは分からないが、いいアドバイスがもらえたら嬉しいのだが。
「彼女さんは年上? 年下?」
「年上です」
「なるほどぉ~。光源氏ですねぇ」
「光源氏ですか?」
古代の文学小説で恋愛ものなのだが、世界で最初の育成ものとしても有名だ。
だが、あれは幼い少女を育てる話だったはず。
「光源氏はねぇ、最初は年上の女性に恋するんだよぉ」
「・・・そうでしたっけ?」
「みんな最後の紫の上しか知らないからねぇ。つまりぃ、大人な女性を好きになっちゃったんだぁ。大変だぞぉ?」
そんなに大変なのか・・・。
「年上になるとぉ、色々秘密が多くなるからねぇ。隠し方にもバリエーション増えるからぁ、見抜くのきついよぉ~」
確かに・・・莉乃さんの表情はいつもクルクル変化してて、出会って最初の時は何を考えているのか分からなかった。
「でもぉ・・・」
「でも?」
「心を開くとぉ、たーいせつにしてくれるよぉ」
ニィっと笑みを深める入江さん。
「ちゃんと待ってあげるといいかもねぇ。あとぉ、誰にも邪魔されないように守ってあげないとぉ」
「・・・うす」
ちゃんと守る。
お父さんとお母さんは仕事の事故で死んだと幼い頃聞いた。
じーちゃんばーちゃんは殺された。
莉乃さんは必ず守る。誰にも邪魔されはしない。
「東京へ来たと思ったら、すぐに和歌山だよ」
『へー、移動が大変だね。ちゃんと駅弁は吟味して買うようにね。でないと、あれ食べたかったのに! ってなっちゃうよ』
「駅弁でそんなに時間をかけませんよ。僕はどれも初めて食べるものだし」
『だからこそだよ! 初めて食べる駅弁が不味かったりしたら、もう二度と駅弁なんか食べるかってなるよ! 京平くんにそんなトラウマは似合わない! 私がしっかり調べて、後でメッセ送るね!』
「はいはい。莉乃さんが選んだのを食べますよ。感想は何文字以内がいいですか?」
『3文字で!』
「美味いで終わりじゃないですか!」
たわいのない会話を楽しみ、宮古島の様子を聞いて、水着姿を見れなかったのをちょっとだけ残念に思った。
それから荷物をまとめていると、何となくそれが目についた。
「・・・使うタイミングがないよな」
進化の実・・・。
危険な状況になったら使おうと心に決めていたが、まだそんな状況にはならない。
ドラゴン相手なら、使う覚悟が出来るかもしれない。
僕は進化の実が入った巾着を首から下げた。
何となく身につけていた方がいい気がした。
次の日の朝。
着替え諸々が入ったバッグを持って新幹線で新大阪に行き、そこから車を借りて和歌山市まで移動した。
「来る場所の予測とか出来ているんですか?」
「予測はある程度出来てるよぉ。海外の事例からぁ、オレンジ畑に降り立つらしいよぉ。だからぁ、私たちが最初に待機する場所は和歌山のみかん畑なんだよねぇ~」
「ここから移動って西に行くにしても東に行くにしても難しそうですが」
「自衛隊のヘリが待機している。俺のスキルで敵の心配はしなくていい」
俺の道に敵は無しだったか?
ふざけた名前のスキルだが、移動に関してはこれほど心強いものはない。
「そのスキルがあればダンジョンでもスムーズに進めそうですけど?」
「・・・あくまで進む方向にいないだけで近づけはする。無差別攻撃なんかも意味をなさない」
「全く安全なスキルじゃないんですね」
「まぁ、フツーの速度の場合だよねぇ。私の抵抗無効を使えばぁ、空気抵抗も無視するからぁ、すっごいスピード出るよぉ。絶対に的にはされないからぁ、安心してぇ」
電車の中でそんな会話をしながら、僕らは和歌山市に到着して空腹を覚えたので、近くのお好み焼きっぽい料理を提供する店に入った。
「せち焼き?」
「お兄ちゃんたち、和歌山は初めてかい?」
「そうですね。僕は熊本から、2人は?」
「私たちは東京だよぉ」
「だったらせち焼きも初めてだよね。和歌山発祥なんだよ。たっぷり食べていってくれ」
そう言うと、店主は鉄板に上に麺を出して焼き始め、その横でキャベツや肉を焼いて店主のタイミングで全部を混ぜ、ソースを絡め、卵を落とし、しっかり混ぜて焼き固めた。
見た目は関西お好み焼き。
だけど、食感は焼きそば風で口の中が楽しかった。
宿泊するホテルは、緊急性を考えて一緒のフロアーにしてもらった。
色々条件をつけたが、全部承諾してくれたホテルには感謝しかない。
ホテルで荷物を下ろしたら、僕らは一度土尾さんの部屋に集まることになった。
僕はベッドに座って、続けてゴロリと横になった。
「ドラゴンか・・・」
莉乃さんの斬撃特化の短剣を使えない物にしたあの皮が装備出来れば、日本の探索者や自衛隊、警察も死亡率が減るだろうな。
もちろん、強力な一撃を喰らって内蔵破裂とかすれば折角のドラゴンの皮も無駄なのだが、斬撃にはスキルがなくても耐性が多いにある。
天外天用に鱗をもらうことできるだろうか?
しばらくのんびりとしながらお茶を飲んでいると携帯にメッセージが届いた。
土尾さんからで、部屋に来てもいいという内容だった。
僕は土尾さんから聞いていた1503号の扉をノックするとガチャっと扉が開いた。
「どうぞ」
「失礼します」
中に入ってまず目についたのは、僕たち3人の装備品だった。
「誰が持ってきたんですか?」
「警察の運搬部署がある。チェックしても構わない」
僕の装備は一塊にしてあった為、遠慮なく一つ一つ確認する。
まあ、専用装備じゃなく、僕のフィールド用の装備なので、多少いじられていても問題はない。
ただ、ベルゼブブの籠手は念入りにチェックした。
今回のドラゴンとの戦闘では、この装備が重要になる。
尻尾攻撃や体当たりを喰らった場合、衝撃で骨折したり内臓を痛めるのはよくある話だからだ。
「この装備は何処か別の場所に保管するんですか?」
「いや、ここに置いておく。見張は俺」
「・・・外出した際に盗られたりは・・・」
「このフロアー全部屋を公安が借りた。24時間体制で誰かしらが見張につく予定」
流石国家権力。
長くても1ヶ月ぐらいか・・・。
天空大陸がどこに向かうかによるが、この件が終わるまで、僕も自分の装備に注意しておこう。
「遅くなったぁ。ごめんねぇ」
片手にお酒やジュースを入れたコンビニ袋を持って、入江さんが入ってきた。
「はい、返すねぇ」
そう言って入江さんは土尾さんにカードキーを渡す。
土尾さんはそれを無造作にテーブルの上に置いた。
「とりあえずぅ、いろいろ買ってきたよぉ。土尾くんはビールでよかったよねぇ? 瀬尾くんはファンタにしたぁ」
「ありがとうございます」
「いいんだよぉ」
入江さんは袋の中から梅酒を取り出して、プシュ! と栓を開けた。
「乾杯しよぉ」
「ああ」
土尾さんも栓を開けて缶を前に出す。
僕もそれに倣って缶を前に出した。
「かんぱーい」
「乾杯」
「乾杯」
入江さんの缶のちょっと下に土尾さんが持っている缶を当て、さらにその下に僕が缶を当てる。
それからみんな揃って口をつけた。
変わらない葡萄の味が炭酸と一緒になって舌の上で弾けていく。
「はぁ~、落ち着くねぇ」
「そうだな」
「・・・」
のんびりとした時間が流れる。
2人はその空気を楽しむかのように目を閉じている。
「2人は・・・付き合っているんですか?」
僕の質問に、2人は大きく目を開いて固まった。
「・・・えっとぉ、何を見てそう思ったのかなぁ?」
「何だか居心地がよさそうにしてたというのが理由です」
「そっかぁ~。でもぉ、違うんだよぉ。私たちはぁお互いのことを理解しているだけぇ。ただそれだけなんだよぉ」
入江さんがにっこりと微笑む。
素敵な笑顔だ。
「そうだな、いい理解者だ」
土尾さんも微笑んでビールを飲む。
「・・・そうですか。・・・ちょっと相談なんですが・・・好きな人について」
「えぇ、恋話なのぉ? いいよぉ、相談乗ってあげるぅ。お姉さんに任せなさぃ」
ムフーっと鼻息を鳴らして入江さんが胸を張る。
「俺は無理だ」
土尾さんは早々にギブアップして摘みを楽しみ出した。
柿の種のわさび味を大量に掴んで口の中に入れている。
「実は、好きだということは伝えていて」
「ほぅほぅ」
「相手も満更じゃないはずなんですけど、まだ言ってない事があるとかで・・・」
「ほぉー」
入江さんは目を閉じて顎に手をあて考える。
真剣かどうかは分からないが、いいアドバイスがもらえたら嬉しいのだが。
「彼女さんは年上? 年下?」
「年上です」
「なるほどぉ~。光源氏ですねぇ」
「光源氏ですか?」
古代の文学小説で恋愛ものなのだが、世界で最初の育成ものとしても有名だ。
だが、あれは幼い少女を育てる話だったはず。
「光源氏はねぇ、最初は年上の女性に恋するんだよぉ」
「・・・そうでしたっけ?」
「みんな最後の紫の上しか知らないからねぇ。つまりぃ、大人な女性を好きになっちゃったんだぁ。大変だぞぉ?」
そんなに大変なのか・・・。
「年上になるとぉ、色々秘密が多くなるからねぇ。隠し方にもバリエーション増えるからぁ、見抜くのきついよぉ~」
確かに・・・莉乃さんの表情はいつもクルクル変化してて、出会って最初の時は何を考えているのか分からなかった。
「でもぉ・・・」
「でも?」
「心を開くとぉ、たーいせつにしてくれるよぉ」
ニィっと笑みを深める入江さん。
「ちゃんと待ってあげるといいかもねぇ。あとぉ、誰にも邪魔されないように守ってあげないとぉ」
「・・・うす」
ちゃんと守る。
お父さんとお母さんは仕事の事故で死んだと幼い頃聞いた。
じーちゃんばーちゃんは殺された。
莉乃さんは必ず守る。誰にも邪魔されはしない。
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