人類はレベルとスキルを獲得できませんでした。

ケイ

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阿蘇灼熱ダンジョン編

第二回灼熱ダンジョン3日目

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3日目の朝。
昨日はジャイアントファイアゴーレムを倒した後、行ったことのない通路に入って先を進んだら、ちょっとした空間があって、そこを休憩ポイントにすることが決まった。
通路は広間みたいに広くないので出現するモンスターも限られていて、だいたいお香で逃げていくから安心だ。
僕が起きている時も、精霊が1匹出てきたので捕まえようとしたら、凄い速さで逃げていった。
おかげで5人全員ぐっすりと睡眠が取れたので、優良休憩ポイントとしてこの場所を認識した。

それから僕らは、装備を点検しながら目標と現状を確認した。
予定宿泊、最低2泊、最長4泊。
予定魔石、A級1、スモモ4、B級あるだけ。
現状、2泊クリア。A級4個、スモモ4個、B級46個。
魔石だけで考えると、予定を大幅にクリアしている。
画面の向こう側では僕らの帰還を待ち望んでいる人がいっぱい居るだろうな。

「私は宝箱が欲しい・・・」

相変わらずのアイテム至上主義の莉乃さん。

「今回の報酬額で買えるんじゃないんですか?」
「多分、分割払いになると思う。単純にA級だけ見ても48億円。予算組みしていたとは思えないのよね」
「それにね、オークションとかで購入したアイテムって適性が微妙なの。余程相性が良くないと、微妙な効果しか出せないんだよ。それでも強いのは強いけど」
「斬撃特化や刺突特化みたいなスキルは、ほぼ変化がないから好まれるけどね」

となると、魔法関係を購入するのも、実は微妙なのだろうか?

「魔法関係で有名な話だと、火を出して大火傷したとか、屋内で水を出そうとしたら鉄砲水になって家が倒壊したとか。最初のは適性がなくて自分の魔法でダメージを受けた話、二つ目は逆に適性があって周囲に被害が出た話」
「購入してみないと分からない。それがアイテム!」

ギャンブル好きな人が買うそうな言葉を言って、植木さんが立ち上がった。
彼女に合わせて僕らも立ち上がり、デッキとテントを片付ける。
カートの荷物もそろそろキツくなってきた。

「カートがキツくなってきたので、B級は捨てましょう。40個あれば十分でしょ。スモモとA級のみ拾います」

みんなが頷いて、僕は先を進んだ。
昨日までの道は、ほぼ真ん中を進んだので、今回は1番左の道を選んで進んでいく。

しかし・・・次の広間までが長く、通路も狭くなっている。
身長173ある僕が背を屈めて先頭を歩くが、満足に戦えない。
しかも、襲ってくるのはトカゲ系や精霊、スライムと地形を有利に戦えるモンスターだ。

「すみません、ちょっと離れてください! 生命力吸収を使います!」

狭い道なので、みんなの姿が見えなくなってからスキルを使う。

「みなさん大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ、京平くん!」
「では進みます!」

完全に1人分しかスペースがない通路を抜けて、時々モンスターが出てくるのを踏み潰し、ようやく広間に辿り着いてスキルを切る。

「追いついた」
「ようやく広間ですか」
「それじゃ、確認します」

中を覗くと、鬼がいた。
赤い鬼で体に炎を纏っている。

「鬼・・・ですね。オーガかどうかは見分けることができません」
「鬼でいいと思うよ。日本だし」
「悪魔とか、こっちでもよく見るけど」
「ゴブリン、コボルト、スライム。定番もいるわね」
「オークは私は見たことないかも」

どうも僕は鬼に苦手意識がある。
理由は分かっているのだが、生命力吸収を使えばなんとかなるだろう。

「見た目同じですが、A級はいますか?」
「ちょっと見るね。・・・全部B級だね。罠も無し。私たちも行こっか」

全員で問題なく倒しました。

そのまま次の通路に行くと、さっきと同じで1人分の幅しかない。

「さっきと同じで行きましょう」

僕はスキルを使って最初に通路に出てボトリと落ちたトカゲを踏み潰す。
今回の通路はちょっと下り坂になっている。
戻る時が大変そうだ。
足場が悪い中、足を滑らさないように慎重に降りていくと、行き止まりになっていた。
しかも、スーツが快適すぎて分からなかったが、僕らは溶岩に向かって歩いていた。
僕はスキルを切ってすぐに戻り、天外天と合流する。

「どうしたの?」
「行き止まりです。溶岩の海に続いてました。流石に進めません」
「別の道に行きましょう」

来た道を戻り、鬼の広間を抜けようとして突然それは起きた。
僕たちの先頭を歩いていたのが植木さんと莉乃さん、それとカート。
その次を高城さんと麻生さんで最後を僕が歩いていた。
先頭の植木さんが広間から一歩出た瞬間、空気が変わった。
そして莉乃さんと高城さんが揃って上を見て緊迫した表情で叫ぶ。

「逃げて!」
「走るよ!」

突然の指示に僕は身体強化で麻生さんと高城さんを抱えて出口に飛び込む。
狭い道なのでまず2人を入れて、僕自身も背を屈め、足を曲げて転がり込んだ。
一瞬の後、大きか音を立てて広間が閉じた。
それは青い皮膚をした何かだった。
確認しようにももう広間には入れないし、青い何かも動こうとしないので、僕たちはその場を離れることにした。
下手に攻撃すると危険だと思い、体が少しだけ震えた。

「何だったんでしょうね」

みんなが思っていることを麻生さんが口にした。
僕には・・・一つ心当たりがある。

「火龍や蝿の王と同じ存在かもしれません。縄文杉と同じっと言った方が分かりやすいでしょうか?」
「A級の中でもとびっきりのやつね。知恵を持っているから何をしてくるか予想ができない」
「もしかして・・・同じことが他の広間でも起きる可能性がある?」
「今までは、あいつが僕らを気にも留めていなかったから何もしてこなかったのかもしれません。ですが、さっきみたいなのが何度も出来るとは思えない」

入り口を塞いだのは体の一部。
火龍や蝿の王と同じと考えると5メートル以上のモンスターになる。

僕らは通路の休憩場所まで戻ってカートに入れてた食料を取り出す。

「・・・カート潰されなくて良かったね」

僕の体が不覚にも止まってしまった。
想像しただけでも恐ろしい。
このカートが潰されていたら、前2日の成果が全てなくなる上に、食料も無くなるので即帰還することになる。

「ですが、今後同じことがあり得ると考えると、注意をしながら戦うことになりますね」
「集中力を欠くことになるわね」
「難しいところだね・・・。あれの気配を探りながら狼と戦闘か・・・」
「イメージを欠くから、私は注意を払えないんだよね。魔法が上手く発動できなくなっちゃう」
「せめて出てくる条件があればいいんだけど・・・」

戻っていると、次の広間ではダンジョン蜂のジャイアントが巣を作っていた。

「えー、私たちがここを通って1日も経ってないのに」

あの巣の中には女王がいるのだろう。
とりあえず僕が入ってスキルを使い、全部踏み潰した。

「ファイアビーの群体・・・」
「こいつらもここに生息していたんだ」

そういえば、噴火の際にこいつらもいた気がする。
そして、何と女王蜂からスモモ魔石が出てきた。

「カバと同格なんだね。群体だからもっと厄介になるんだけど。植木ちゃんの範囲じゃないと、近接だけだと囲まれちゃうね」
「なんかもう、人である時点で、もうコイツらには勝てない気がしてきた」

実際、アイテムなしに人がモンスターに勝つことは難しい。
アイテムを持っていない人間は、モンスターに例えるとゴブリンの上位互換ぐらいの能力しかないそうだ。

それから僕らは、頭上から落ちてくるものの恐怖に怯えながら入り口まで戻った。

運良くA級はいなかったので、体力を消耗せずに、みんな体力がある状態で最初の広場に戻ることができた。
カバはいたので確実に倒した。
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