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阿蘇灼熱ダンジョン編

第二回灼熱ダンジョン2日目午後

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大狼を倒して食事をとったが、やはりA級との戦闘で精神力の方が消耗していたのか、莉乃さんと高城さんがまだ立ち上がれそうにない。
本来なら座れないぐらい熱い床でくつろいでいるので、僕はデッキを作ることにした。

「あったかくて気持ちいいよ?」
「冷却装備を突き抜けて熱が届いている証拠です。そのままいると、お尻や背中だけ冷却できない事態になりますよ」

僕の忠告に、地面でくつろいでいた2人が急いで立ち上がった。
デッキを組むと4人がその上に上がって横になる。
麻生さんも大狼の鼻に薬剤を振りかけるほど接近したのだ。
精神的に疲労してもおかしくない。
植木さんに至っては、カバに噛みつかれそうだったし。

「でも、今回も京平くんがいたから順調に進んだんだよねー」

莉乃さんが残念そうに呟く。

「え? 僕は手を出してないですよ?」
「真ん中に立ってたでしょ。狼さんは1番京平くんを警戒していて近寄らなかったんだよね。本当なら、この部屋を縦横無尽に走り回って素早さを生かした戦いをしていたはずだから」

確かに、天井を掴む力があるのなら、壁を走り回っていた可能性もある。
僕の方に来ても、手出ししない予定だったから問題なかったのに・・・無駄な警戒だったね、狼さん。

次の広間はみんな笑顔で戦っていた。
A級を倒して心に余裕ができたのだろう。
B級モンスターを次々と倒してあっという間に制圧した。

「狼に比べたら、この程度」

高城さんの残像がみんな笑顔だ。
・・・コワイ。

しかし、相変わらずバランスのいいパーティだ。
ソロから見ると協力してモンスターを倒す姿が羨ましい。
僕自身も生命力吸収に頼らない火力を手に入れたのはいいが、B級魔石を消費するという一般から見ると高価な一撃しかできない。
同行してくれる人が、一緒にここに来てくれるのなら問題ないんだがな。

「どうしたの? なんか変な顔してるよ?」

莉乃さんが横に来て僕の顔を覗き込む。

「いえ・・・パーティいいなーって思ったので」
「何だ~。それなら京平くんも一緒に狩ろうよ!」

腕を組んで、他の3人のもとへ僕を連れて行く。

「でも、僕が入るとバランス崩れませんか?」
「みんなで合わせれば良いんだよ!」
「生命力吸収使えなくなりますけど」
「使えなくてもA級狩れたし!」
「和とか乱れ・・・」
「あー! もう!」

莉乃さんが僕の頭を掴んで引き寄せる。
お互いのフェイスガードがゴツンといってぶつかった。

「今は楽しんだもの勝ちだよ。悩むのはその後。笑顔笑顔」

確かに・・・今ある問題は大した内容じゃない。
だったら、この状況を楽しもう。
多少油断しても問題ない。
ミスしたら他の人が助けてくれる。

自然と笑みがこぼれた。

「分かりました。僕も遠慮なく狩ります」
「・・・」
「莉乃さん?」
莉乃さんは僕の腕を離して前に出て、拳を作って右手を上げる。

「気合い入れて狩るぞ!」

僕からは顔が見えない。
どんな顔をしているのか分からないが、とびっきりの笑顔を浮かべているのだろう。
僕も右手を上げ、左手を腰に当てる。

「おー!」


次の広間はB級のモンスターハウスだった。
ざっと見ても20体はいる。

「ここは植木先生の出番で」
「うむ! 苦しゅうないぞ。っとその前に魔石を2個貰うね」

ローブの魔石と杖の魔石を新しい物に交換して光が走り出す。

「撃ったらガス欠なんてみっともない真似したくないからね! キッチリやるよ!」

光が広間を走り、無数の棘が埋め尽くす。
もう中は見れない。
数秒おいて、植木さんがぐらりと体勢を崩すのと同時に棘が消滅していく。
中にはモンスターの姿は見えず、あるのはB級魔石のみ。

「一撃殲滅!」

高城さんに支えられながらも、笑顔でサムズアップする植木さん。
僕にはできない芸当に、純粋に賛辞を送って広間に入ろうとした。

「待って!」

莉乃さんの声が響いた。
僕の足が中に入ろうとしたとことで止まる。

「そっから先・・・罠だよ。スキルに引っかかった」
「広間まるごとの罠ですか?」
「どんな罠かは分からない。でも、広間は恐らく全部罠。まだ弱いけどアラームが頭の中で響いてる」

残念ながら、中にある魔石は諦めないといけないようだ。

「あー、せっかく倒したのに」

植木さんが嘆きの声を上げた。
もう一度広間の中を確認するが、奥に道があることだけ確認する。

あ、そういえばマップはどうするんだろ?
通常なら探索者の録画から組合がマップを作るのだが、今回は国が関わっている。
未探索のダンジョンはマップも貴重な情報源。
色々と争いが起きそうな気がする。

ひとまず入り口まで戻ることにした。
A級がいた場合は、僕が倒すことにして各広間を覗くが、B級モンスターしかいない。
さっきまで各部屋に居たような状態だったのに、まだ復活していないのだろうか?
最初の部屋まで戻るとカバがいた。
容赦なく生命力吸収+加重のコンボで倒した。
スモモが4個になった。
これでメイン企業は喧嘩をせずに済む。

「さて・・・戻るだけでも結構時間掛かりましたね」
「どこまで進むかによって、帰りの時間を計算しないと。今回はA級が居なかったけど、次も居ないとは限らないわ」

A級一体を倒すだけでも凄く体力を使う。
それを連続して行うと、疲労が溜まってヒューマンエラーを起こす可能性が出てくる。
僕らは、生命力吸収及びドラゴンバスター無しで1日で倒すA級を、2体までとした。

「そういえば、カバは出てましたね。やはり、固定湧きと考えて良さそう」
「僕らであれば、確実に1個手に入れることが出来るってことですね」

それだけでも企業が探索者に支援する価値がある。
もちろん、高ランク限定でファイアバードをクリアできる人たちだけだろうが。

「僕らの装備と同等物を装備したとして、今の探索者でファイアバードを抜けれるパーティっているんですかね?」

ドラゴンバスターや莉乃さんの飛行装備は無理だろうが、高城さんと麻生さんの対動物装備や植木さんの魔力増幅装備なんかは他の人でも使えそうな気がする。

「うーん・・・無理じゃない?」
「莉乃の飛行があればこそだしね」
「魔力増幅するにも慣れないと時間かかるわよ。制御大変だし、体力持ってかれるし」
「私と四葉の対動物装備も、なるべく近くで撃つ必要があるし、A級に近寄る度胸がいるかな」

量産型が出来ればB級魔石を持ってくる人が増えるかなっと考えていたが、どうやら甘い考えだったみたいだ。

2億や3億する装備は、そう簡単には作れないだろうな・・・。

別の広間に入ると、ジャイアントファイアゴーレムがいた。
遠慮なく僕が突進して胸部にドラゴンバスターを叩き込む。
その強烈な一撃に、ジャイアントは胸に大きな亀裂を生やし、仰向けに倒れた。
僕はそのままその胸に跳び乗って、再度高くジャンプして踏みつける。

「私たちの数十分は京平くんの10秒」
「おぅ・・・きつい」
「涙、拭きたいな~」
「あれ? ジャイアントみたいな通常種?」

頼むから僕が戦うたびに精神不安定になるのはやめていただきたい。
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