32 / 151
阿蘇灼熱ダンジョン編
新装備到着
しおりを挟む
桜が舞い散り出した。
装備について色々進捗を聞いているが、かなりの大作が作られているようだ。
当初は松下魔力電機と東京通信だけで装備を作り、松尾食糧工業と大鷲製薬が食事やモンスター対策を担当することになっていた。
だが、松尾食糧工業と大鷲製薬は自社内で何とかいけたらしいが、松下魔力電機と東京通信はそうはいかなかった。
詰め込みたいものが多すぎたのだ。
まず、冷却装置は当たり前に付いていないといけない。
そこから、対精霊・ゴーレム用に蝿王クラスの外殻、耐火耐熱性能の向上、通信システムの伝達速度、カメラと録画装置、全ての機能を支えるバッテリー。
僕らが最初に用意した冷却装備は、今作られている物からするとおもちゃでしかない。
最終的に特定案件共同企業体というものをいくつかの企業とつくったそうだ。
「蝿王クラスの外殻って何を持ってくるつもりですか?」
「・・・縄文杉を購入したそうだ」
「はぁ?」
一瞬何を考えているのかと思った。
「あれは木ですよ? 燃えると思いますけど」
「不燃剤を塗布するそうだ。どんなメカニズムか分からんが、とりあえず簡単には燃えないらしい」
その程度で灼熱の中を歩けるかが不安だが、難しければ戻ればいいだけのことだ。
そこからは個人個人で性能が変わり、僕は右足の加重の効果が直接攻撃に使えるように、凶悪なスパイクが取り付けられた。
全て画像なので、実物がどうなっているかすぐにでも見たい気持ちに駆られる。
「戻ってきたよー」
天外天のメンバーが、体の計測から戻ってきた。
今回の装備は体に密着するため、細かく体の寸法を計測された。
頭部だけでも6箇所計測されるとは思わなかった。
見た感じだと、冬のスポーツ選手が着るようなスーツでその上に外殻がセットされるようになっている。
「よかった・・・痩せれて」
「甘味禁止の効果が出たよ。よかったー」
「ダイエット成功記念に自分にご褒美が欲しい」
「アクセサリーとかブランド物にしなさい。食べ物はまだ禁止よ。・・・リバウンドしたいの?」
鬼木さんの容赦のない一言に、3人は身体を震わせて黙った。
「それにしてもカッコいいわね。全身白一色。プロトタイプアーマーって感じが出てるわ」
「これからどんどん性能が良くなって、いずれ型落ち品になるんでしょうね」
「それでも十数年後とかでしょ。一着・・・1億じゃきかないかも。売り出すなら2億か3億かな?」
「そんなに高いんですか!?」
「戦闘機と一緒よ。開発費用がかかる上に、オーダーメイドでしょ。まだ魔石に期待できるから採算が取れると考えているんでしょうけど、スモモの魔石でも手に入らないと割に合わないでしょうね」
上手くカバと会えるになら問題ないのだが、前回は2体いたからレアモンスターではないはずだ。
「喧嘩にならないように4つは必要ですよね」
「運次第だから、無理ない範囲でいいわよ。瀬尾くんが生きてないと大損になるんだから」
「でも、私たちは頑張らないとね!」
「そうね。このままだと瀬尾くんにおんぶに抱っこの状態から抜け出せないわ」
「ファイアーバードは仕方ないにしても、手の届くB級は倒せないと」
「自分に合う追加装備も付けてもらったからね。結果は出さないと」
スキルを自分に合わせることはできないので、元々持っている素材の性能を自分に合わせるしかない。
そういった物は受肉際でしか手に入らないため、加工できる素材は高級品になる。
それがふんだんに使われた専用装備。
探索者なら誰もが夢見る装備だ。
ただ、それだけに結果を企業から求められる。
使った素材はグラム単位で測られて、どのように組み込んだか記録されて探索者の装備した感覚を聞いて微調整が入る。
金額は僕は今まで知ることなかった世界だ。
「スキルだけでどんな場所でも行けるってことはないんですね」
「空想の世界だけよ。空気の薄い空高くを酸素ボンベ無しで飛んだり、ガス溜まりがあるかもしれない地下施設を装備無しで探索したり、水圧を考えずに泡に入って深海に行ったりするのは」
鬼木さんの毒吐きが止まらない。
視線も遠くを見ていて、過去に何かあったような気がする。
それから装備が出来上がって僕らの元に届いたのは1ヶ月後のことだった。
てっきり松嶋さんたち4人が持ってくると思ってたら、予想外の大名行列で、急遽一の宮体育館を使用することになった。
体育館に並べられた四つの装備。
僕と天外天メンバーの専用装備だ。
そして、僕らの後ろには震えそうになる程お偉い方々が並んでいた。
まず、企業からは松下魔力電機の楠木雄輝社長、東京通信の十時博之社長、松尾食糧工業の伊藤茂社長、大鷲製薬の上原孝太郎社長、あの場にはいなかったが、協力企業体に参加した会社で、本畑自動車工業の三部彰宏社長、東海重科学工業の岡本真矢社長、緑菱産業の柿木真純社長など。
次に、探索者相互組合から鍛冶圭之介代表が来た。
支部長が「何しに来たんだ」と気安く話をしていたが、本当に滅多に表に出ない人で有名だ。
自衛隊からは西部方面隊隊長の城島さんは当然のように来ていたが、その横に胸章をいくつも付けた将官がいた。
司令官の竹本龍司陸将だった。
それから、警察からは警察庁長官が来ていた。
梶原署長も少し硬い表情で僕を紹介してくれた。
最後に・・・防衛大臣の石橋徹大臣が来ていた。
「期待している。頑張ってくれたまえ」
しっかりと握手をして声をかけてくれた。
それから松嶋さん、兼良さん、大森さん、石井さんから装備と持っていく道具や食料について説明があった。
植木さんの装備が完全に魔法特化型になっていた。
彼女も何か考えがあって色々とお願いしていたらしい。
お披露目会はツツがなく進み・・・次の日、僕と天外天は阿蘇のファイアーバードの巣の前に集まった。
今回の目標は、最低2泊、最長4泊。
映像と音声について通常時と戦闘時は全てライブ発信。
求められる成果は、A級1個、スモモ魔石4個、B級可能な限り。
そして・・・全員の生還!
装備について色々進捗を聞いているが、かなりの大作が作られているようだ。
当初は松下魔力電機と東京通信だけで装備を作り、松尾食糧工業と大鷲製薬が食事やモンスター対策を担当することになっていた。
だが、松尾食糧工業と大鷲製薬は自社内で何とかいけたらしいが、松下魔力電機と東京通信はそうはいかなかった。
詰め込みたいものが多すぎたのだ。
まず、冷却装置は当たり前に付いていないといけない。
そこから、対精霊・ゴーレム用に蝿王クラスの外殻、耐火耐熱性能の向上、通信システムの伝達速度、カメラと録画装置、全ての機能を支えるバッテリー。
僕らが最初に用意した冷却装備は、今作られている物からするとおもちゃでしかない。
最終的に特定案件共同企業体というものをいくつかの企業とつくったそうだ。
「蝿王クラスの外殻って何を持ってくるつもりですか?」
「・・・縄文杉を購入したそうだ」
「はぁ?」
一瞬何を考えているのかと思った。
「あれは木ですよ? 燃えると思いますけど」
「不燃剤を塗布するそうだ。どんなメカニズムか分からんが、とりあえず簡単には燃えないらしい」
その程度で灼熱の中を歩けるかが不安だが、難しければ戻ればいいだけのことだ。
そこからは個人個人で性能が変わり、僕は右足の加重の効果が直接攻撃に使えるように、凶悪なスパイクが取り付けられた。
全て画像なので、実物がどうなっているかすぐにでも見たい気持ちに駆られる。
「戻ってきたよー」
天外天のメンバーが、体の計測から戻ってきた。
今回の装備は体に密着するため、細かく体の寸法を計測された。
頭部だけでも6箇所計測されるとは思わなかった。
見た感じだと、冬のスポーツ選手が着るようなスーツでその上に外殻がセットされるようになっている。
「よかった・・・痩せれて」
「甘味禁止の効果が出たよ。よかったー」
「ダイエット成功記念に自分にご褒美が欲しい」
「アクセサリーとかブランド物にしなさい。食べ物はまだ禁止よ。・・・リバウンドしたいの?」
鬼木さんの容赦のない一言に、3人は身体を震わせて黙った。
「それにしてもカッコいいわね。全身白一色。プロトタイプアーマーって感じが出てるわ」
「これからどんどん性能が良くなって、いずれ型落ち品になるんでしょうね」
「それでも十数年後とかでしょ。一着・・・1億じゃきかないかも。売り出すなら2億か3億かな?」
「そんなに高いんですか!?」
「戦闘機と一緒よ。開発費用がかかる上に、オーダーメイドでしょ。まだ魔石に期待できるから採算が取れると考えているんでしょうけど、スモモの魔石でも手に入らないと割に合わないでしょうね」
上手くカバと会えるになら問題ないのだが、前回は2体いたからレアモンスターではないはずだ。
「喧嘩にならないように4つは必要ですよね」
「運次第だから、無理ない範囲でいいわよ。瀬尾くんが生きてないと大損になるんだから」
「でも、私たちは頑張らないとね!」
「そうね。このままだと瀬尾くんにおんぶに抱っこの状態から抜け出せないわ」
「ファイアーバードは仕方ないにしても、手の届くB級は倒せないと」
「自分に合う追加装備も付けてもらったからね。結果は出さないと」
スキルを自分に合わせることはできないので、元々持っている素材の性能を自分に合わせるしかない。
そういった物は受肉際でしか手に入らないため、加工できる素材は高級品になる。
それがふんだんに使われた専用装備。
探索者なら誰もが夢見る装備だ。
ただ、それだけに結果を企業から求められる。
使った素材はグラム単位で測られて、どのように組み込んだか記録されて探索者の装備した感覚を聞いて微調整が入る。
金額は僕は今まで知ることなかった世界だ。
「スキルだけでどんな場所でも行けるってことはないんですね」
「空想の世界だけよ。空気の薄い空高くを酸素ボンベ無しで飛んだり、ガス溜まりがあるかもしれない地下施設を装備無しで探索したり、水圧を考えずに泡に入って深海に行ったりするのは」
鬼木さんの毒吐きが止まらない。
視線も遠くを見ていて、過去に何かあったような気がする。
それから装備が出来上がって僕らの元に届いたのは1ヶ月後のことだった。
てっきり松嶋さんたち4人が持ってくると思ってたら、予想外の大名行列で、急遽一の宮体育館を使用することになった。
体育館に並べられた四つの装備。
僕と天外天メンバーの専用装備だ。
そして、僕らの後ろには震えそうになる程お偉い方々が並んでいた。
まず、企業からは松下魔力電機の楠木雄輝社長、東京通信の十時博之社長、松尾食糧工業の伊藤茂社長、大鷲製薬の上原孝太郎社長、あの場にはいなかったが、協力企業体に参加した会社で、本畑自動車工業の三部彰宏社長、東海重科学工業の岡本真矢社長、緑菱産業の柿木真純社長など。
次に、探索者相互組合から鍛冶圭之介代表が来た。
支部長が「何しに来たんだ」と気安く話をしていたが、本当に滅多に表に出ない人で有名だ。
自衛隊からは西部方面隊隊長の城島さんは当然のように来ていたが、その横に胸章をいくつも付けた将官がいた。
司令官の竹本龍司陸将だった。
それから、警察からは警察庁長官が来ていた。
梶原署長も少し硬い表情で僕を紹介してくれた。
最後に・・・防衛大臣の石橋徹大臣が来ていた。
「期待している。頑張ってくれたまえ」
しっかりと握手をして声をかけてくれた。
それから松嶋さん、兼良さん、大森さん、石井さんから装備と持っていく道具や食料について説明があった。
植木さんの装備が完全に魔法特化型になっていた。
彼女も何か考えがあって色々とお願いしていたらしい。
お披露目会はツツがなく進み・・・次の日、僕と天外天は阿蘇のファイアーバードの巣の前に集まった。
今回の目標は、最低2泊、最長4泊。
映像と音声について通常時と戦闘時は全てライブ発信。
求められる成果は、A級1個、スモモ魔石4個、B級可能な限り。
そして・・・全員の生還!
1
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
異世界転生記 〜神話級ステータスと最高の努力で成り上がる物語〜
かきくけコー太郎・改
ファンタジー
必死に生活をしていた24歳独身サラリーマンの神武仁は、会社から帰宅する途中で謎の怪物に追いかけられてゴミ箱の中に隠れた。
そして、目が覚めると、仁は"異世界の神"と名乗る者によって異世界転生させられることになる。
これは、思わぬ出来事で異世界転生させられたものの、その世界で生きることの喜びを感じて"ルーク・グレイテスト"として、大切な存在を守るために最強を目指す1人の男の物語。
以下、新連載です!楽しんでいってください。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/586446069/543536391
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。


おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる