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甘木市未確認ダンジョン編
ダンジョンアタックとブレイク・・・そして
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9月14日が来た。
天気はあいにくの雨模様だが、甘木中学校に設置された仮の作戦会議室にいる面々からは、それを憂鬱がる人はいない。
「たとえブレイクしても、雨であれば昆虫モンスターが飛ぶのを阻止してくれるんだよ」
湿気ると飛びづらくなるのは、モンスターでも一緒みたいだ。
僕は周囲を見回してメンバーを確認する。
この中に、僕のスキルを受けていない人はいない。
全員が春日市の駐屯所若しくは甘木市に到着した際に、物は試しとして受けて倒れた。
鬼教官も、誰にも復讐されないように準備して受けて倒れた。
「変化して倒れたのは初めてだ」と頭を掻きながら両手を上げた。
「さて、この場にいるメンバーはもう作戦を気入れいると思うが、私から再度説明する」
西部方面隊隊長の城島さんからの説明が始まった。
全員が手を後ろに回して起立して耳を傾ける。
「まず、このダンジョンが広域であることを考え、3チームともインカムで交信しながら進むこと。その中で、ダンジョンブレイクの兆候があれば、インカムで伝えて即撤退。入り口から何キロ地点で確認できたか分かれば、いつ頃ブレイクするか分かる。第一目標は完全攻略だが、ブレイクの危険があるダンジョンだということを忘れるな!」
「「「「はい!」」」」
僕も随分と自衛隊の魂を引き継いだのか、自然と返事が出ている。
それからダンジョンの入り口まで移動すると、そこには警察と自衛隊がずらりと整列していた。
事前に僕のスキル範囲を確認して、地面に白線が引かれている。
そこには、日野さんの姿もあった。
彼も緊張した面持ちで僕たちを見送ってくれた。
入り口前で一度止まり、2列に並んで対面同士で装備を確認する。
何一つとして欠けてはいけない装備だ。
ヘルメット、ライト、防弾防刃服、ジャケット、簡易酸素ボンベ、安全ブーツ、携帯食と水を入れたリュック、着火剤、僕以外の人はライフ、替えのマガジン、サバイバルナイフ。
「それでは、突入班アタック開始!」
2列で並んでいた僕らは、その場でライトをつけて次々にダンジョンに突入していく。
まず、最初の広場に到着し、各々の装備を再度確認していく。
「へ?」
思わず声が出てしまった。
「どうした? 瀬尾くん」
「えっと・・・」
自衛隊の装備なので返却しなければならないので隠してても意味はない。
僕は自分の靴を指差した。
「右足にダッシュ、左足に体力増が付いてます」
「ブフォ!」
「ちょっと!」
「うわー。色々勿体無い」
これが僕専用の靴なら手を挙げて喜んだのだが、あくまで自衛隊の備品だ。
「・・・後で返します」
「・・・うむ」
鬼教官も渋そうに頷いた。
他の装備は全部ハズレで、面白いスキルとしては、瞬き連続10回可能というものがあった。
瞬きなんて日常生活で自然にするものであって、スキルとしてするものじゃない。
装備を確認した人たちから順次部屋を抜けていく。
それから途中の分かれ道で、第2チームと第3チームが分かれた。
僕らは先頭を鬼教官、2番目を佐藤さん、3番目を僕、4番目を桐谷さん、最後を右宮さんで進んでいく。
そして、あの場所にまた僕は辿り着いた。
「ここかい? 君がカマキリタイプと戦ったのは」
「戦ったってほどじゃないです。僕は生き延びただけです」
すっかり綺麗になっている広間だが、右手と右足から痛みを感じる。
あの時のカマキリからは恐怖しか感じなかった。
今の僕なら、もう少しましに戦えるだろうか?
かつての敵の幻覚を見ながら、次の部屋へ移動しようとする鬼教官たちの後をついていく。
3番目の広間に辿り着いて、鬼教官がインカムに手を当てた。
「こちら第1チーム。第2第3チーム聞こえるか?」
『第2チーム聞こえます』
『第3チーム聞こえます』
「第1チームは3番目の広間に辿り着いた。だが、まだモンスターとあっていない。第2第3はどうだ?」
「第2は今3番目の広間に来ましたが、モンスターはいません。今までも遭遇無しです」
『第3も3番目の広間に来ましたが、敵はいません』
「了解した。把握していると思うが、最悪に備えるように」
『了解であります』
『承知しました』
インカムを切って、鬼教官が僕らに厳しい表情で口を開いた。
「ダンジョンブレイクがもう始まっているかもしれん」
突然の言葉に、僕たちは言葉を失った。
「何度かブレイク間際のダンジョンを攻略したことがある。その際によく見られた兆候が津波現象だ」
「津波・・・ですか?」
「ああ、ダンジョンの入り口付近から中間までのモンスターが一匹もいなくなる。そして大群を持って入り口に押し寄せてくるのだ」
「・・・」
「そんな時に知らずにダンジョンにいたら・・・」
いたら・・・。
じり・・・と足が来た道を戻ろうとする。
多分、僕の顔は情けない表情になっているだろう。
「瀬尾くんはここで待つか?」
鬼教官が僕に提案してきた。
「我ら自衛官はどんな危険な環境であっても、命令があった以上、それを遂行しなければならない。だが、君は今回協力者という立場だ。強制されることはない。インカムで退避の合図を聞いたらダッシュで入り口まで走ればいい。そして予定通りにあの場所でスキルを使ってくれればいいだけだ」
それだけ言って、鬼教官は僕に答えは待たずに先に進み出した。続けて佐藤さんたちも僕の肩にポンっと手を置いて進んで行く。
正直言って怖い。
僕がダンジョンに来たのは、ただちょっと人の役に立ってヒーローになれたらいい。
ダンジョンのボスを生命力吸収で動けなくすれば、あとは遠距離で全てが終わる。
そう簡単に考えていた。
ダンジョンブレイクの話を聞かされた時も、高いとはいえ可能性がある程度だったはずだ。
でも、もうここに来てダンジョンブレイクは起こる。
・・・確実に起こる。
今僕らがやっていることは、それがいつになるかを確認することだ。
攻略ではなく、調査。
それも、僕のスキルが全く役に立たない状況の・・・。
走り込みはこの2ヶ月近く、ずっと行ってきたし、体力もそれなりについている。
身体強化もあるからみんなに遅れずついていけるはずだ。
・・・体が動かないのは、まだまだ僕の心が貧弱だからだ。
「でも、ちょっとぐらいの勇気なら絞り出せるよ」
みんなが進んだ道に向かって一歩ずつ歩き出す。
震えはするけどちゃんと走れるようになった足だ。
まだ、右宮さんの背中がみえる。
僕はその背に追いつくよう、少しだけ駆け足で追いかけた。
「気をつけて、そこ滑りやすいよ」
「ありがとうございます」
洞窟型のダンジョンに共通する足場の悪さ。
右宮さんに教えてもらいながら僕らは5つ目の広間を目指す。
4つ目まではまだ余裕で歩けたのだが、急に難易度が上がっている。
「こんな所でモンスターとの戦闘は避けたいですよね」
「そうだね。贅沢は言えないけど、動きを阻害される場所ではやりたくないね」
岩の隆起が激しく、表面も少し濡れているため足場を確認する必要がある。
もし逃げることになったら、素早く滑らないように登らないといけないのか。
後ろを向いて岩の大きさを再確認して頭に入れる。
このダンジョンに入って、僕はずっと地形や道を確認している。
駐屯所で訓練した空間把握は無駄にはなっていない証拠だ。
「瀬尾くん、ロープ出しておいてくれ」
先頭から鬼教官の声が響いた。
「はい」
返事をしてリュックから黄色と黒のロープを取り出して肩に引っ掛けた。
「5つ目までの通路が長い。しかもモンスターが出ない。5つ目の洞窟次第だが、一度そこで他のチームと連絡を取る」
全員が頷く。
鬼教官の中で、次の広間が1つの基準なのだろう。
僕は鬼教官の経験に基づく勘に頼るだけだ。
鬼教官の手が「静かに進む」のサインを出す。
可能な限り足音を殺して先へ進む。
そしてその奥からあの虫たちの特徴的な音が聞こえ始めた。
「・・・ハチタイプがいる」
「クワガタタイプもだ」
「第一波からB級が来るのか!」
鏡で虫たちを確認して鬼教官がインカムをオンにする。
「こちら第1チーム、5番目の広場でモンスターを確認。既にB級がいる。急いで退避しろ。もう間も無く来るぞ!」
こそりと僕らも避難しながら、ゆっくりと音を出さずに手で合図を出し合う。
逃げるのは、鬼教官が1番、次に僕、3番目に桐谷さん、4番目に右宮さん、最後が佐藤さんと決めていた。
『こちら第2チーム! こちらも確認した! クソ! B級までいやがる!」
『こちら第3。運良くこっちは居なかったわ。すぐに戻ります!』
ここからはスピード勝負になる。
身長が2メートルぐらいの鬼化した鬼教官がいち早く滑る岩の場所へ辿り着いて背を預けて手を組んだ。
「こい!」
僕は身体強化を使って肩のロープを外し、端を握って鬼教官の手を踏んで飛び上がった。
鬼教官の力もあって、岩を余裕で飛び越え、着地して足の加重を発動する。
「準備できました!来てください!」
言葉を合図に、ロープに重みがかかる。
それとほぼ同時にインカムから声が届いた。
『こちら第2チーム! 気づかれました! 杉山陸曹が交戦中!』
「急いで戻れ! 俺が助けに行くまで引きながら生き延びろ!」
『私も戻り次第助けに行くわ! 根性見せなさい!』
貴島陸曹もインカムを通して激励を飛ばす。
その間に桐谷さん、右宮さん、佐藤さんが岩から飛び降り、鬼教官の重みが伝わったときを狙ってロープを思いっきり引く。
「うぉお!?」
鬼教官の変な声が聞こえて、岩のてっぺんにその姿が見える。そこから一気に飛び降りて僕を見て笑った。
「先に行くぞ。戻れるな?」
「はい!」
ロープを手放して鬼教官に笑みを返し、再度走り出す。
鬼教官には追いつけないが、佐藤さんたちには追いついた。
鬼教官は宣言通り突き進み姿が見えなくなる。僕たちは広間をどんどん突破して第3チームと合流した。
「鬼畜鬼は!」
貴島陸曹からの言葉に、一瞬誰のことか分からずに固まると、佐藤さんが前にでて答えた。
「教官は先行して杉山陸曹の元へ向かわれました!」
「私も向かう! お前たちは作戦通りに!」
「はっ!」
貴島陸曹が入り口とは別の道へ走っていき、僕たちは先に外に出た。
「作戦はCです! 第2チームが交戦中! 鬼教官と貴島陸曹が救出に向かいました! 間も無くブレイクが始まります!」
佐藤さんたちは周囲に散らばって盾を持った人たちの後ろに立ってライフルを構えた。
他の人たちも緊張して銃を構え直し入り口に銃口を向けた。
僕は中央に据え付けられた、僕が1人ギリギリ寝そべって入れる用のシェルターに入って、スキル発動のタイミングに備える。
入り口には幾つものロープが伸びていて、僕はその端を握っている人たちが失敗しないよう願う。死傷者が出るか出ないかは、後はその人たちと僕に掛かっていた。
心臓が高鳴る。
音がうるさい! 重要なタイミングを聞き取れなかったらどうする!
そして・・・その時は訪れた!
先ず貴島陸曹と第2チームの3人が出てきて、次々にロープの先の輪を右腕に通す。
僕から見て右から順次に準備して、1番左の人がロープを二つ手に取る。最後に杉山陸曹を背負った鬼教官が出てロープを受け取り自分の腕と杉山陸曹の腕に通す。
「やれえええええええええええええ!」
叫び声と同時に穴から大量の虫が飛び出す。
羽根があるものはそれを振るわせ飛び立とうとし、土を掘るタイプのものはその牙を地面に突き立てる。
だけど、まだまだそこは僕の範囲内だ!
スキルを発動させ、教官たち諸共生命力を奪い、その場に崩れ落とす。
「引けえええええ!!」
誰かが叫んで教官たちを繋ぐロープが引かれたのを見て、僕もシャッターの入り口を閉じた。
「全員引き上げたぞ! 撃て撃てええ!!」
「死ねや虫ども!!」
「素材は回収するぞ! 今回は少年の手助けもあるからウハウハだ!」
「日野! 瀬尾くんの上に虫どもを落とすなよ! 貴様の風で払い飛ばせ! 詠唱なんてしてんじゃねーぞ!」
「わかってる! クソジジイが! それよりもしかっと撃てや!」
「引きこもりども! 普段ボーッとしてんだろ! 働け!」
「ふざけんな、脳筋の戦闘狂どもが! テメーらはあんだけデカい的を外してんじゃねーぞ! この下手くそ!」
「ハンドガンごときが調子乗るなよ! おもちゃの訓練かよ!」
「お前覚えとけよ! 終わったら的撃ちでけちょんけちょんにしてやっからな!」
「いいぜ! 引きこもり如きには負けねーよ!」
各所で言い合いが始まった。
かなりの怒声で僕の周囲の人たちからは考えられないほど険悪な雰囲気だ。
それでも、シェルターに虫の欠片なのかガンガンと当たるのが聞こえる。
「テメー少年のシェルターに当ててんじゃねーよ! 見てたぞ下手っぴが!」
「はぁ? 出鱈目抜かしてんじゃねーぞ! お前の目で銃弾見えるわけねーだろうが!」
本当にお願いします。
しばらくすると銃の音が止み、静けさが戻る。
だが、緊迫感はまだ続いている。
「第二波来るぞ!」
誰かが叫んだ。
同時に銃の音が再開する。
ゴガンッと何かがシェルターに当たって転がった。
「ダンゴムシだ! 盾隊は踏ん張れ! スキルの範囲外に出すな!」
「クソ! 銃弾は通じない!」
「俺は瀬尾くん対応で無理だぞ!」
「スキルが効けば腹を見せるから盾で弾き返せ!」
どうやら、スキルが効く前にダンゴムシが転がって来たみたいだ。
それでも盾で押し返しているみたいだし、ダンゴムシは佐藤さんたちみたいに対策が出来ているから大丈夫だろう。
「こいつらダンゴムシの強化版だ! 腹も硬いぞ! 誰かぶち抜けるスキルホルダーいないか!?」
・・・信じてる。
その後も、クワガタタイプの殻に苦戦したり、ミミズタイプの毒体液が飛び散ったり、アリタイプの蟻酸が銃弾を弾くクワガタの殻にかかって「勿体ねー!」っと悲鳴が上がった。
そうして第二波が終了する。
「全員、銃弾を補充しろ! 第三波はA級が来るぞ!」
「火炎放射器も用意しろ! 蜘蛛が来るぞ! 子蜘蛛が出たら一匹たりとも逃すな! 奴らは増えるぞ!」
僕の熱対策は何かあるのだろうか?
中を見回すと水が入ったペットボトルが3つ1.5リットル分。
足りるか不安になりながらも、意外と余裕な自分にちょっと驚く。
「来たぞ!」
誰かが叫んだ。
「デケェ・・・」
「カブトムシかよ・・・」
「・・・少年のおかげで、軍隊ハチは雑魚扱いだな」
「銃弾が通らない奴の方が厄介とは思わなかった。地雷で一発だったのによ」
ズドンっと地響きがした。
その後にズルズルと地面が擦れる音がして、ガァァン! と大きな音が響く。
「危ねえ!」
日野さんの声が聞こえて直後、ズゥゥンと僕の横に何かが落ちた。
「中の奴が動けなくなったやつを押し飛ばしやがった!」
「日野ぉ! 集中しろ!」
「うっせえぞ! ちゃんとガードしてんだろうが!」
「カブトムシどもには銃は効かないぞ!」
「物理系は無理だ! 火炎放射器は?」
「ダメだ! 遠すぎて熱が通ってる気がしない! 効いてるか分からない!」
周囲の戸惑いが聞こえるが、僕の加重ならいけるかもしれない。
僕はインカムのスイッチを入れた。
「瀬尾です、聞こえますか?」
「鬼だ。聞こえるぞ、どうした?」
「カブトムシですけど、僕の加重で何とかなるかもしれません。一先ず、他の虫の退治と第四波に備えてください」
「分かった」
伝えることは伝えた。
「全員聞こえたな! これから第四波に備える! おそらくボスキャラが出るぞ! ダンジョンブレイクの衝撃に備えろ! 出てくるのはアラクネクラスだと思え!」
ダンジョンブレイクの衝撃?
初めてのことで分からないことだらけだ。
今の状況も戦闘という戦闘ではないし、スキルを使って寝ているだけ。
外を少し見たいなっと思うが、油断は禁物だと考え直す。
しばらくしてビシッと何か大きな亀裂音が響き渡る。
「来るぞ! 構えろ!」
ビシッビシッとその音は増え続け、最後にゴガーン! と大爆を起こした。
「この!」
ブオォンと僕の周囲を風が唸り、何かを弾いていく。
おそらく岩の破片だろうが、ゴン! ゴツ! と離れた場所で鳴る音に恐怖を感じる。
「・・・蝿の王」
誰かが呟いた。
「最悪だ! 確かにこいつも虫だけどよ!」
「5メートルはあるぞ! 眷属を呼ばせるな!」
彼方此方で警戒と注意が伝達されるが、僕は首を傾げた。
・・・モンスターが動いてない?
「お、おい・・・まさか」
「やばい! 防壁!」
「倒れるぞ! 避けろ!!」
ズシィン!
それは轟音を立てて、僕の横に横たわった。
「マジか・・・悪魔クラスにまで効きやがった」
横たわったまま動かない蝿の王。
誰かが銃を撃った音がした。
「ダメだ。効かない!」
「俺がやる! 全員離れてろ!」
ドゴンッととてつもない物体と物体がぶつかる音が何度も響き渡る。
鬼教官が鬼の状態で殴っているのだろう。とてつもない音で、一瞬雷かと間違えるとこだった。
「クソ! 時間がかかる! 誰か! 基地の城島隊長を呼び出せ! あいつのスキルが必要だ!」
攻撃と休憩を交互に行い、決定打を見出せずに時間が過ぎていく。
「待たせた!」
「遅いぞ!」
「私のスキルの使用許可を取ったんだ! 年中許可のお前のとは違うんだよ! ドーピングするぞ! 中毒化はしないでくれよ!」
「キタキタキタ! ダ・・・イジョウ・・・ブ。コノ、テ、イド」
「全員、鬼教官から離れろ! 暴力が発動するぞ!」
「ゴアアアアアアアアアアアアアアア!!」
先ほどの雷かと思った音が連続して鳴り響く。
時々、ドゴーン! ドゴーン! と大きな音が鳴り響き、僕の体も揺らされる。
何度目かの音の後、それらに混じってベチャ! と何か液体が飛び散る音がした。
「頭が割れたぞ! 後少しだ!」
鬼教官はどうやら頭部を殴り潰しているようだ。
ベチャ! ベチャ! と更に液が飛び散る音が続き、最後にグチャ! と大きな音が鳴って全ての音が止んだ。
「うおおおおおおおおお!」
「蝿の王を倒した! 自衛隊の鬼教官はやっぱり最強だ!」
「すげぇ。森田もこっちくれば新鮮な蝿の王を解体できただろうに」
歓声が上がったので、僕はシャッターを開けて外を覗くと、ピクピクと動いているデカい蝿の足が目に映った。
・・・軽くトラウマになりそうでした。
周囲を見渡すと、カブトムシ以外は死屍累々といった感じで、虫の体液が飛び散っていて酷い臭いがする。
「瀬尾くん、カブトムシはいけるか?」
日野さんが手を振って声をかけてきた。
「いけます! ちょっと待っててください」
僕は一体のカブトムシによじ登り、加重を発動する。
10秒、20秒と過ぎていき、30秒を過ぎてようやくメキメキっと音を立て始めた。
「兜と羽の間なんですけど、やっぱり硬いですね」
徐々にカブトムシの首が折れ始め、顔が上を向いて口をワサワサと動かしている。
そして1分が経った瞬間、ベキベキベキ! と首が押し潰れてカブトムシは絶命した。
それを、僕は残り3体に行い、終わってみんなの元に戻ると「よくやった」と頭を撫でられ、ハイタッチをし、手荒い歓迎を受けることになった。
虫たちの死骸を残して、僕たちアタック組はみんな甘木中学の臨時基地に戻った。
城島隊長も戻っていて「よくやってくれた」と強い握手をしてもらえた。
基地の中ではご馳走が用意されていて、お腹が減っていた僕は匂いに釣られたが「まずは手洗いと着替えだ」と佐藤さんに首根っこ掴まれて着替え場で簡易のシャワーを浴び、服を着替えて食堂に向かう。
「うわー! 凄い豪華!」
目の前に考えられないほどの料理がテーブルの上に置かれている。
鳥、豚、牛、揚げ物、煮物、吸い物なんでもござれに僕のテンションが上がっていち早く席に着く。
僕の行動に苦笑して、鬼教官が僕の横に座り、他の人も肩をすくめて各々の席に着いた。
後から教えてもらったのだが、席次が決まっていたらしい。僕は協力者ということで上座に席を取ってたらしいのだが、下座に座ってしまったので、何も言わずに席を自由にしたとのことだった。
みんなが席に着き、城島隊長が入ってきて僕らを見て一瞬止まったが、鬼教官を見て頷き、真ん中に移動する。
「みなさんお疲れ様です!」
隊長の声に僕らは座ったままお辞儀をする。
「みな無事生きて戻ってきて、今回のアタックは最高の結果を残せました! 今回手に入れた素材は、最優先で君たちの装備に変わるでしょう! 君たちの功績に過不足ない報酬になってくれると思う」
隊長の言葉に、佐藤さんたちがソワソワしだした。
「さて、長い挨拶は君たちも不要だろう。存分に食べ、英気を養うように! それではグラスの準備を!」
僕以外はみんなビールを注いで、僕だけは烏龍茶を注いで手に持った。
「それでは改めて、おめでとう! 乾杯!」
「「「「「乾杯!」」」」」
みんなでグラスを合わせて健闘を讃えあい、僕は烏龍茶を飲んだ。
楽しい食事会は終わり、外に出ると雨が上がって空が見えていた。
「楽しかったー」
食事会の余韻に浸りながら道を歩く。
家まで送るよ、と言われたけど、歩いて帰りたくなったので断った。
風が心地よく僕の顔を撫でていく。
遠くでサイレンが鳴っていた。
火事かな?
被害が少ないことを祈る。
公園に近くに来たとき、僕の携帯が振動した。
「ばーちゃんからだ。なんだろ?」
携帯をタップして耳に当てる。
「もしもし、ばーちゃん?」
『京平ちゃん、元気かい?』
知らない男の声が受話器から聞こえた。
「・・・誰だ、お前は!」
『あれ? あれ? 分かっちゃった? 残念残念。ギャハハハハハ! 物真似には自信があったけどよ、流石にババアの真似は無理があったか! しゃーねーよな!』
不快な声が僕の耳を攻撃する。
僕は苛立ちを隠せずに声を荒げた。
「おい、質問に答えろ! お前は誰だ! ばーちゃんに何をした!?」
『俺を誰だって? つれない、つれないねー。一緒にダンジョンに入って、お前のスキルを10回ぐらいくらった中のによー』
思考が止まった。
ダンジョンに一緒に行ったのは木下と香野・・・僕の記憶はその2人。だけど、警察からはもう1人の名前が出ていた。
「浩か!」
『大正解でーーーす! おめでとうございまーす。景品はありませんが、そんな貴方に私こと安部浩より、貴重な情報をあげまーす!』
不快だ! 不快だ!
こいつの声が気持ち悪い。
「情報なんかいらない! ばーちゃんをどうした!」
『えー、冷たいこと言うなよ。僕ちゃん拗ねちゃうぜ? それにきちょーな情報だ。それこそ、お前のじーちゃんばーちゃんに関するな』
「てめー!」
『アハ! 優しい優しい俺様が教えてやるよ。あのな、貴重なスキル付きアイテムな、たとえ弱くても貴重なんだわ。病気耐性弱でも、すっげー貴重なんだわ。それをさ、ジジイババアに渡しちゃダメだろ。貴重過ぎて強盗来ちまうぜ? ほんと、何してんだって思っちまったよ?』
「俺の質問に答えやがれ!」
『おーおー、苛立ってんなー。まあ答えてやっか』
歯を食いしばる。
こめかみが痛くなる。
『お前のじーちゃんばーちゃんは、俺の横で寝てるぜ』
「・・・」
『・・・アハ!』
ふざけたその言葉に僕の神経が何本か切れた気がした。
「ふざけるな! じーちゃんとばーちゃんをどうした! 指一本でも触れてみろ! ぶちのめしてやる!」
遠くでサイレンが鳴っている。
携帯からも同じ音が鳴り響く。
『元気がいいなー。自慢の孫だったんだろうなー。残念なことに時間になってしまったよ』
「何を言って!」
『火葬はやっておくから、ゆっくり帰ってきてね』
言うだけ言って携帯が切られ声が聞こえなくなる。
「おい! おい! クソが!」
携帯をズボンに入れて走る。
遠くで・・・僕の家の方角からサイレンが聞こえる。
「嘘だ! 嘘だ!」
家の近くでは近隣の人が避難をしているのが見える。
「大丈夫だ! 絶対に違う!」
そして規制線が敷かれていてその内に・・・僕の家が燃えていた。
「うあああああああああああああああ!」
中に入ろうとした僕を消防士が抱き止める。
「危険だ! 離れなさい!」
「僕の家が! じーちゃんとばーちゃんが!」
叫び手を伸ばすが何も掴めない。
そのうち、ガラガラと家が崩壊していく。
それを見て力が抜けた僕を消防士が規制線の外に連れ出し消火作業を再開する。
「あああああ・・・」
じーちゃんとばーちゃんとの思い出が消えていく。
「憶えてるぞ・・・」
記憶を振り絞ってそれを頭に焼き付ける。
「貴様の声、学校での姿! 絶対に忘れるものか!」
目の前の光景を焼き付ける。
「必ず見つけてやる!」
恨みを心に焼き付ける。
「必ず捕まえてやる!」
そしてこの日僕は・・・
「必ず! 必ず!」
初めて人殺しを誓った。
「殺してやる!」
天気はあいにくの雨模様だが、甘木中学校に設置された仮の作戦会議室にいる面々からは、それを憂鬱がる人はいない。
「たとえブレイクしても、雨であれば昆虫モンスターが飛ぶのを阻止してくれるんだよ」
湿気ると飛びづらくなるのは、モンスターでも一緒みたいだ。
僕は周囲を見回してメンバーを確認する。
この中に、僕のスキルを受けていない人はいない。
全員が春日市の駐屯所若しくは甘木市に到着した際に、物は試しとして受けて倒れた。
鬼教官も、誰にも復讐されないように準備して受けて倒れた。
「変化して倒れたのは初めてだ」と頭を掻きながら両手を上げた。
「さて、この場にいるメンバーはもう作戦を気入れいると思うが、私から再度説明する」
西部方面隊隊長の城島さんからの説明が始まった。
全員が手を後ろに回して起立して耳を傾ける。
「まず、このダンジョンが広域であることを考え、3チームともインカムで交信しながら進むこと。その中で、ダンジョンブレイクの兆候があれば、インカムで伝えて即撤退。入り口から何キロ地点で確認できたか分かれば、いつ頃ブレイクするか分かる。第一目標は完全攻略だが、ブレイクの危険があるダンジョンだということを忘れるな!」
「「「「はい!」」」」
僕も随分と自衛隊の魂を引き継いだのか、自然と返事が出ている。
それからダンジョンの入り口まで移動すると、そこには警察と自衛隊がずらりと整列していた。
事前に僕のスキル範囲を確認して、地面に白線が引かれている。
そこには、日野さんの姿もあった。
彼も緊張した面持ちで僕たちを見送ってくれた。
入り口前で一度止まり、2列に並んで対面同士で装備を確認する。
何一つとして欠けてはいけない装備だ。
ヘルメット、ライト、防弾防刃服、ジャケット、簡易酸素ボンベ、安全ブーツ、携帯食と水を入れたリュック、着火剤、僕以外の人はライフ、替えのマガジン、サバイバルナイフ。
「それでは、突入班アタック開始!」
2列で並んでいた僕らは、その場でライトをつけて次々にダンジョンに突入していく。
まず、最初の広場に到着し、各々の装備を再度確認していく。
「へ?」
思わず声が出てしまった。
「どうした? 瀬尾くん」
「えっと・・・」
自衛隊の装備なので返却しなければならないので隠してても意味はない。
僕は自分の靴を指差した。
「右足にダッシュ、左足に体力増が付いてます」
「ブフォ!」
「ちょっと!」
「うわー。色々勿体無い」
これが僕専用の靴なら手を挙げて喜んだのだが、あくまで自衛隊の備品だ。
「・・・後で返します」
「・・・うむ」
鬼教官も渋そうに頷いた。
他の装備は全部ハズレで、面白いスキルとしては、瞬き連続10回可能というものがあった。
瞬きなんて日常生活で自然にするものであって、スキルとしてするものじゃない。
装備を確認した人たちから順次部屋を抜けていく。
それから途中の分かれ道で、第2チームと第3チームが分かれた。
僕らは先頭を鬼教官、2番目を佐藤さん、3番目を僕、4番目を桐谷さん、最後を右宮さんで進んでいく。
そして、あの場所にまた僕は辿り着いた。
「ここかい? 君がカマキリタイプと戦ったのは」
「戦ったってほどじゃないです。僕は生き延びただけです」
すっかり綺麗になっている広間だが、右手と右足から痛みを感じる。
あの時のカマキリからは恐怖しか感じなかった。
今の僕なら、もう少しましに戦えるだろうか?
かつての敵の幻覚を見ながら、次の部屋へ移動しようとする鬼教官たちの後をついていく。
3番目の広間に辿り着いて、鬼教官がインカムに手を当てた。
「こちら第1チーム。第2第3チーム聞こえるか?」
『第2チーム聞こえます』
『第3チーム聞こえます』
「第1チームは3番目の広間に辿り着いた。だが、まだモンスターとあっていない。第2第3はどうだ?」
「第2は今3番目の広間に来ましたが、モンスターはいません。今までも遭遇無しです」
『第3も3番目の広間に来ましたが、敵はいません』
「了解した。把握していると思うが、最悪に備えるように」
『了解であります』
『承知しました』
インカムを切って、鬼教官が僕らに厳しい表情で口を開いた。
「ダンジョンブレイクがもう始まっているかもしれん」
突然の言葉に、僕たちは言葉を失った。
「何度かブレイク間際のダンジョンを攻略したことがある。その際によく見られた兆候が津波現象だ」
「津波・・・ですか?」
「ああ、ダンジョンの入り口付近から中間までのモンスターが一匹もいなくなる。そして大群を持って入り口に押し寄せてくるのだ」
「・・・」
「そんな時に知らずにダンジョンにいたら・・・」
いたら・・・。
じり・・・と足が来た道を戻ろうとする。
多分、僕の顔は情けない表情になっているだろう。
「瀬尾くんはここで待つか?」
鬼教官が僕に提案してきた。
「我ら自衛官はどんな危険な環境であっても、命令があった以上、それを遂行しなければならない。だが、君は今回協力者という立場だ。強制されることはない。インカムで退避の合図を聞いたらダッシュで入り口まで走ればいい。そして予定通りにあの場所でスキルを使ってくれればいいだけだ」
それだけ言って、鬼教官は僕に答えは待たずに先に進み出した。続けて佐藤さんたちも僕の肩にポンっと手を置いて進んで行く。
正直言って怖い。
僕がダンジョンに来たのは、ただちょっと人の役に立ってヒーローになれたらいい。
ダンジョンのボスを生命力吸収で動けなくすれば、あとは遠距離で全てが終わる。
そう簡単に考えていた。
ダンジョンブレイクの話を聞かされた時も、高いとはいえ可能性がある程度だったはずだ。
でも、もうここに来てダンジョンブレイクは起こる。
・・・確実に起こる。
今僕らがやっていることは、それがいつになるかを確認することだ。
攻略ではなく、調査。
それも、僕のスキルが全く役に立たない状況の・・・。
走り込みはこの2ヶ月近く、ずっと行ってきたし、体力もそれなりについている。
身体強化もあるからみんなに遅れずついていけるはずだ。
・・・体が動かないのは、まだまだ僕の心が貧弱だからだ。
「でも、ちょっとぐらいの勇気なら絞り出せるよ」
みんなが進んだ道に向かって一歩ずつ歩き出す。
震えはするけどちゃんと走れるようになった足だ。
まだ、右宮さんの背中がみえる。
僕はその背に追いつくよう、少しだけ駆け足で追いかけた。
「気をつけて、そこ滑りやすいよ」
「ありがとうございます」
洞窟型のダンジョンに共通する足場の悪さ。
右宮さんに教えてもらいながら僕らは5つ目の広間を目指す。
4つ目まではまだ余裕で歩けたのだが、急に難易度が上がっている。
「こんな所でモンスターとの戦闘は避けたいですよね」
「そうだね。贅沢は言えないけど、動きを阻害される場所ではやりたくないね」
岩の隆起が激しく、表面も少し濡れているため足場を確認する必要がある。
もし逃げることになったら、素早く滑らないように登らないといけないのか。
後ろを向いて岩の大きさを再確認して頭に入れる。
このダンジョンに入って、僕はずっと地形や道を確認している。
駐屯所で訓練した空間把握は無駄にはなっていない証拠だ。
「瀬尾くん、ロープ出しておいてくれ」
先頭から鬼教官の声が響いた。
「はい」
返事をしてリュックから黄色と黒のロープを取り出して肩に引っ掛けた。
「5つ目までの通路が長い。しかもモンスターが出ない。5つ目の洞窟次第だが、一度そこで他のチームと連絡を取る」
全員が頷く。
鬼教官の中で、次の広間が1つの基準なのだろう。
僕は鬼教官の経験に基づく勘に頼るだけだ。
鬼教官の手が「静かに進む」のサインを出す。
可能な限り足音を殺して先へ進む。
そしてその奥からあの虫たちの特徴的な音が聞こえ始めた。
「・・・ハチタイプがいる」
「クワガタタイプもだ」
「第一波からB級が来るのか!」
鏡で虫たちを確認して鬼教官がインカムをオンにする。
「こちら第1チーム、5番目の広場でモンスターを確認。既にB級がいる。急いで退避しろ。もう間も無く来るぞ!」
こそりと僕らも避難しながら、ゆっくりと音を出さずに手で合図を出し合う。
逃げるのは、鬼教官が1番、次に僕、3番目に桐谷さん、4番目に右宮さん、最後が佐藤さんと決めていた。
『こちら第2チーム! こちらも確認した! クソ! B級までいやがる!」
『こちら第3。運良くこっちは居なかったわ。すぐに戻ります!』
ここからはスピード勝負になる。
身長が2メートルぐらいの鬼化した鬼教官がいち早く滑る岩の場所へ辿り着いて背を預けて手を組んだ。
「こい!」
僕は身体強化を使って肩のロープを外し、端を握って鬼教官の手を踏んで飛び上がった。
鬼教官の力もあって、岩を余裕で飛び越え、着地して足の加重を発動する。
「準備できました!来てください!」
言葉を合図に、ロープに重みがかかる。
それとほぼ同時にインカムから声が届いた。
『こちら第2チーム! 気づかれました! 杉山陸曹が交戦中!』
「急いで戻れ! 俺が助けに行くまで引きながら生き延びろ!」
『私も戻り次第助けに行くわ! 根性見せなさい!』
貴島陸曹もインカムを通して激励を飛ばす。
その間に桐谷さん、右宮さん、佐藤さんが岩から飛び降り、鬼教官の重みが伝わったときを狙ってロープを思いっきり引く。
「うぉお!?」
鬼教官の変な声が聞こえて、岩のてっぺんにその姿が見える。そこから一気に飛び降りて僕を見て笑った。
「先に行くぞ。戻れるな?」
「はい!」
ロープを手放して鬼教官に笑みを返し、再度走り出す。
鬼教官には追いつけないが、佐藤さんたちには追いついた。
鬼教官は宣言通り突き進み姿が見えなくなる。僕たちは広間をどんどん突破して第3チームと合流した。
「鬼畜鬼は!」
貴島陸曹からの言葉に、一瞬誰のことか分からずに固まると、佐藤さんが前にでて答えた。
「教官は先行して杉山陸曹の元へ向かわれました!」
「私も向かう! お前たちは作戦通りに!」
「はっ!」
貴島陸曹が入り口とは別の道へ走っていき、僕たちは先に外に出た。
「作戦はCです! 第2チームが交戦中! 鬼教官と貴島陸曹が救出に向かいました! 間も無くブレイクが始まります!」
佐藤さんたちは周囲に散らばって盾を持った人たちの後ろに立ってライフルを構えた。
他の人たちも緊張して銃を構え直し入り口に銃口を向けた。
僕は中央に据え付けられた、僕が1人ギリギリ寝そべって入れる用のシェルターに入って、スキル発動のタイミングに備える。
入り口には幾つものロープが伸びていて、僕はその端を握っている人たちが失敗しないよう願う。死傷者が出るか出ないかは、後はその人たちと僕に掛かっていた。
心臓が高鳴る。
音がうるさい! 重要なタイミングを聞き取れなかったらどうする!
そして・・・その時は訪れた!
先ず貴島陸曹と第2チームの3人が出てきて、次々にロープの先の輪を右腕に通す。
僕から見て右から順次に準備して、1番左の人がロープを二つ手に取る。最後に杉山陸曹を背負った鬼教官が出てロープを受け取り自分の腕と杉山陸曹の腕に通す。
「やれえええええええええええええ!」
叫び声と同時に穴から大量の虫が飛び出す。
羽根があるものはそれを振るわせ飛び立とうとし、土を掘るタイプのものはその牙を地面に突き立てる。
だけど、まだまだそこは僕の範囲内だ!
スキルを発動させ、教官たち諸共生命力を奪い、その場に崩れ落とす。
「引けえええええ!!」
誰かが叫んで教官たちを繋ぐロープが引かれたのを見て、僕もシャッターの入り口を閉じた。
「全員引き上げたぞ! 撃て撃てええ!!」
「死ねや虫ども!!」
「素材は回収するぞ! 今回は少年の手助けもあるからウハウハだ!」
「日野! 瀬尾くんの上に虫どもを落とすなよ! 貴様の風で払い飛ばせ! 詠唱なんてしてんじゃねーぞ!」
「わかってる! クソジジイが! それよりもしかっと撃てや!」
「引きこもりども! 普段ボーッとしてんだろ! 働け!」
「ふざけんな、脳筋の戦闘狂どもが! テメーらはあんだけデカい的を外してんじゃねーぞ! この下手くそ!」
「ハンドガンごときが調子乗るなよ! おもちゃの訓練かよ!」
「お前覚えとけよ! 終わったら的撃ちでけちょんけちょんにしてやっからな!」
「いいぜ! 引きこもり如きには負けねーよ!」
各所で言い合いが始まった。
かなりの怒声で僕の周囲の人たちからは考えられないほど険悪な雰囲気だ。
それでも、シェルターに虫の欠片なのかガンガンと当たるのが聞こえる。
「テメー少年のシェルターに当ててんじゃねーよ! 見てたぞ下手っぴが!」
「はぁ? 出鱈目抜かしてんじゃねーぞ! お前の目で銃弾見えるわけねーだろうが!」
本当にお願いします。
しばらくすると銃の音が止み、静けさが戻る。
だが、緊迫感はまだ続いている。
「第二波来るぞ!」
誰かが叫んだ。
同時に銃の音が再開する。
ゴガンッと何かがシェルターに当たって転がった。
「ダンゴムシだ! 盾隊は踏ん張れ! スキルの範囲外に出すな!」
「クソ! 銃弾は通じない!」
「俺は瀬尾くん対応で無理だぞ!」
「スキルが効けば腹を見せるから盾で弾き返せ!」
どうやら、スキルが効く前にダンゴムシが転がって来たみたいだ。
それでも盾で押し返しているみたいだし、ダンゴムシは佐藤さんたちみたいに対策が出来ているから大丈夫だろう。
「こいつらダンゴムシの強化版だ! 腹も硬いぞ! 誰かぶち抜けるスキルホルダーいないか!?」
・・・信じてる。
その後も、クワガタタイプの殻に苦戦したり、ミミズタイプの毒体液が飛び散ったり、アリタイプの蟻酸が銃弾を弾くクワガタの殻にかかって「勿体ねー!」っと悲鳴が上がった。
そうして第二波が終了する。
「全員、銃弾を補充しろ! 第三波はA級が来るぞ!」
「火炎放射器も用意しろ! 蜘蛛が来るぞ! 子蜘蛛が出たら一匹たりとも逃すな! 奴らは増えるぞ!」
僕の熱対策は何かあるのだろうか?
中を見回すと水が入ったペットボトルが3つ1.5リットル分。
足りるか不安になりながらも、意外と余裕な自分にちょっと驚く。
「来たぞ!」
誰かが叫んだ。
「デケェ・・・」
「カブトムシかよ・・・」
「・・・少年のおかげで、軍隊ハチは雑魚扱いだな」
「銃弾が通らない奴の方が厄介とは思わなかった。地雷で一発だったのによ」
ズドンっと地響きがした。
その後にズルズルと地面が擦れる音がして、ガァァン! と大きな音が響く。
「危ねえ!」
日野さんの声が聞こえて直後、ズゥゥンと僕の横に何かが落ちた。
「中の奴が動けなくなったやつを押し飛ばしやがった!」
「日野ぉ! 集中しろ!」
「うっせえぞ! ちゃんとガードしてんだろうが!」
「カブトムシどもには銃は効かないぞ!」
「物理系は無理だ! 火炎放射器は?」
「ダメだ! 遠すぎて熱が通ってる気がしない! 効いてるか分からない!」
周囲の戸惑いが聞こえるが、僕の加重ならいけるかもしれない。
僕はインカムのスイッチを入れた。
「瀬尾です、聞こえますか?」
「鬼だ。聞こえるぞ、どうした?」
「カブトムシですけど、僕の加重で何とかなるかもしれません。一先ず、他の虫の退治と第四波に備えてください」
「分かった」
伝えることは伝えた。
「全員聞こえたな! これから第四波に備える! おそらくボスキャラが出るぞ! ダンジョンブレイクの衝撃に備えろ! 出てくるのはアラクネクラスだと思え!」
ダンジョンブレイクの衝撃?
初めてのことで分からないことだらけだ。
今の状況も戦闘という戦闘ではないし、スキルを使って寝ているだけ。
外を少し見たいなっと思うが、油断は禁物だと考え直す。
しばらくしてビシッと何か大きな亀裂音が響き渡る。
「来るぞ! 構えろ!」
ビシッビシッとその音は増え続け、最後にゴガーン! と大爆を起こした。
「この!」
ブオォンと僕の周囲を風が唸り、何かを弾いていく。
おそらく岩の破片だろうが、ゴン! ゴツ! と離れた場所で鳴る音に恐怖を感じる。
「・・・蝿の王」
誰かが呟いた。
「最悪だ! 確かにこいつも虫だけどよ!」
「5メートルはあるぞ! 眷属を呼ばせるな!」
彼方此方で警戒と注意が伝達されるが、僕は首を傾げた。
・・・モンスターが動いてない?
「お、おい・・・まさか」
「やばい! 防壁!」
「倒れるぞ! 避けろ!!」
ズシィン!
それは轟音を立てて、僕の横に横たわった。
「マジか・・・悪魔クラスにまで効きやがった」
横たわったまま動かない蝿の王。
誰かが銃を撃った音がした。
「ダメだ。効かない!」
「俺がやる! 全員離れてろ!」
ドゴンッととてつもない物体と物体がぶつかる音が何度も響き渡る。
鬼教官が鬼の状態で殴っているのだろう。とてつもない音で、一瞬雷かと間違えるとこだった。
「クソ! 時間がかかる! 誰か! 基地の城島隊長を呼び出せ! あいつのスキルが必要だ!」
攻撃と休憩を交互に行い、決定打を見出せずに時間が過ぎていく。
「待たせた!」
「遅いぞ!」
「私のスキルの使用許可を取ったんだ! 年中許可のお前のとは違うんだよ! ドーピングするぞ! 中毒化はしないでくれよ!」
「キタキタキタ! ダ・・・イジョウ・・・ブ。コノ、テ、イド」
「全員、鬼教官から離れろ! 暴力が発動するぞ!」
「ゴアアアアアアアアアアアアアアア!!」
先ほどの雷かと思った音が連続して鳴り響く。
時々、ドゴーン! ドゴーン! と大きな音が鳴り響き、僕の体も揺らされる。
何度目かの音の後、それらに混じってベチャ! と何か液体が飛び散る音がした。
「頭が割れたぞ! 後少しだ!」
鬼教官はどうやら頭部を殴り潰しているようだ。
ベチャ! ベチャ! と更に液が飛び散る音が続き、最後にグチャ! と大きな音が鳴って全ての音が止んだ。
「うおおおおおおおおお!」
「蝿の王を倒した! 自衛隊の鬼教官はやっぱり最強だ!」
「すげぇ。森田もこっちくれば新鮮な蝿の王を解体できただろうに」
歓声が上がったので、僕はシャッターを開けて外を覗くと、ピクピクと動いているデカい蝿の足が目に映った。
・・・軽くトラウマになりそうでした。
周囲を見渡すと、カブトムシ以外は死屍累々といった感じで、虫の体液が飛び散っていて酷い臭いがする。
「瀬尾くん、カブトムシはいけるか?」
日野さんが手を振って声をかけてきた。
「いけます! ちょっと待っててください」
僕は一体のカブトムシによじ登り、加重を発動する。
10秒、20秒と過ぎていき、30秒を過ぎてようやくメキメキっと音を立て始めた。
「兜と羽の間なんですけど、やっぱり硬いですね」
徐々にカブトムシの首が折れ始め、顔が上を向いて口をワサワサと動かしている。
そして1分が経った瞬間、ベキベキベキ! と首が押し潰れてカブトムシは絶命した。
それを、僕は残り3体に行い、終わってみんなの元に戻ると「よくやった」と頭を撫でられ、ハイタッチをし、手荒い歓迎を受けることになった。
虫たちの死骸を残して、僕たちアタック組はみんな甘木中学の臨時基地に戻った。
城島隊長も戻っていて「よくやってくれた」と強い握手をしてもらえた。
基地の中ではご馳走が用意されていて、お腹が減っていた僕は匂いに釣られたが「まずは手洗いと着替えだ」と佐藤さんに首根っこ掴まれて着替え場で簡易のシャワーを浴び、服を着替えて食堂に向かう。
「うわー! 凄い豪華!」
目の前に考えられないほどの料理がテーブルの上に置かれている。
鳥、豚、牛、揚げ物、煮物、吸い物なんでもござれに僕のテンションが上がっていち早く席に着く。
僕の行動に苦笑して、鬼教官が僕の横に座り、他の人も肩をすくめて各々の席に着いた。
後から教えてもらったのだが、席次が決まっていたらしい。僕は協力者ということで上座に席を取ってたらしいのだが、下座に座ってしまったので、何も言わずに席を自由にしたとのことだった。
みんなが席に着き、城島隊長が入ってきて僕らを見て一瞬止まったが、鬼教官を見て頷き、真ん中に移動する。
「みなさんお疲れ様です!」
隊長の声に僕らは座ったままお辞儀をする。
「みな無事生きて戻ってきて、今回のアタックは最高の結果を残せました! 今回手に入れた素材は、最優先で君たちの装備に変わるでしょう! 君たちの功績に過不足ない報酬になってくれると思う」
隊長の言葉に、佐藤さんたちがソワソワしだした。
「さて、長い挨拶は君たちも不要だろう。存分に食べ、英気を養うように! それではグラスの準備を!」
僕以外はみんなビールを注いで、僕だけは烏龍茶を注いで手に持った。
「それでは改めて、おめでとう! 乾杯!」
「「「「「乾杯!」」」」」
みんなでグラスを合わせて健闘を讃えあい、僕は烏龍茶を飲んだ。
楽しい食事会は終わり、外に出ると雨が上がって空が見えていた。
「楽しかったー」
食事会の余韻に浸りながら道を歩く。
家まで送るよ、と言われたけど、歩いて帰りたくなったので断った。
風が心地よく僕の顔を撫でていく。
遠くでサイレンが鳴っていた。
火事かな?
被害が少ないことを祈る。
公園に近くに来たとき、僕の携帯が振動した。
「ばーちゃんからだ。なんだろ?」
携帯をタップして耳に当てる。
「もしもし、ばーちゃん?」
『京平ちゃん、元気かい?』
知らない男の声が受話器から聞こえた。
「・・・誰だ、お前は!」
『あれ? あれ? 分かっちゃった? 残念残念。ギャハハハハハ! 物真似には自信があったけどよ、流石にババアの真似は無理があったか! しゃーねーよな!』
不快な声が僕の耳を攻撃する。
僕は苛立ちを隠せずに声を荒げた。
「おい、質問に答えろ! お前は誰だ! ばーちゃんに何をした!?」
『俺を誰だって? つれない、つれないねー。一緒にダンジョンに入って、お前のスキルを10回ぐらいくらった中のによー』
思考が止まった。
ダンジョンに一緒に行ったのは木下と香野・・・僕の記憶はその2人。だけど、警察からはもう1人の名前が出ていた。
「浩か!」
『大正解でーーーす! おめでとうございまーす。景品はありませんが、そんな貴方に私こと安部浩より、貴重な情報をあげまーす!』
不快だ! 不快だ!
こいつの声が気持ち悪い。
「情報なんかいらない! ばーちゃんをどうした!」
『えー、冷たいこと言うなよ。僕ちゃん拗ねちゃうぜ? それにきちょーな情報だ。それこそ、お前のじーちゃんばーちゃんに関するな』
「てめー!」
『アハ! 優しい優しい俺様が教えてやるよ。あのな、貴重なスキル付きアイテムな、たとえ弱くても貴重なんだわ。病気耐性弱でも、すっげー貴重なんだわ。それをさ、ジジイババアに渡しちゃダメだろ。貴重過ぎて強盗来ちまうぜ? ほんと、何してんだって思っちまったよ?』
「俺の質問に答えやがれ!」
『おーおー、苛立ってんなー。まあ答えてやっか』
歯を食いしばる。
こめかみが痛くなる。
『お前のじーちゃんばーちゃんは、俺の横で寝てるぜ』
「・・・」
『・・・アハ!』
ふざけたその言葉に僕の神経が何本か切れた気がした。
「ふざけるな! じーちゃんとばーちゃんをどうした! 指一本でも触れてみろ! ぶちのめしてやる!」
遠くでサイレンが鳴っている。
携帯からも同じ音が鳴り響く。
『元気がいいなー。自慢の孫だったんだろうなー。残念なことに時間になってしまったよ』
「何を言って!」
『火葬はやっておくから、ゆっくり帰ってきてね』
言うだけ言って携帯が切られ声が聞こえなくなる。
「おい! おい! クソが!」
携帯をズボンに入れて走る。
遠くで・・・僕の家の方角からサイレンが聞こえる。
「嘘だ! 嘘だ!」
家の近くでは近隣の人が避難をしているのが見える。
「大丈夫だ! 絶対に違う!」
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叫び手を伸ばすが何も掴めない。
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