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12月18日【お隣さん】
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糸車の音はひと晩中、本当にひと晩中、一時も鳴り止むことはありませんでした。ゆみこさんが目覚めた時も、やっぱり糸車はカラカラ回り、すばるの子らは糸を紡いでいたのです。
「おはようございます」
ゆみこさんが朝の挨拶をしますと、すばるの子らはにっこり笑います。
「ずっと休みなく働いていて、疲れませんか」
ゆみこさんの心配をよそに、すばるの子らは、ちっとも疲れておらず、眠そうにもしていないのです。「平気です」と彼らが答えた通り、本当に平気なのでした。それもそのはず。ゆみこさんたちが寝たり起きたりして過ごす時間は、すばるの子らにとって、ほんの一瞬に過ぎないのですから。
リビングは、ひと晩のうちに全く様変わりしていました。床に溢れていた光の粒は、みんな糸に紡がれて、束になっています。
その糸の美しいことといったら。どんな高級な絹よりも艶やかで、綿や羊毛よりも柔らかいのです。そして羽みたいに軽いので、ゆみこさんがリビングを歩くたびに、積み上げられた糸の束が、ふわりと揺れて漂うのでした。
「この糸を、少しずつ少しずつ、宇宙風に乗せてなびかせて、遠くの場所まで伸ばすんです。そうすると、遠くのお空に、星が光ります。冬は、北風が強いから、たくさん飛んでいくんです」
ああ、それで、冬の星空は一等綺麗なのだろうと、ゆみこさんは思いました。
地上の草花が寂しいぶんを補うように、どんな季節よりも星が綺麗に瞬いているのは、北風に乗って、宇宙から光の糸が届くからなのでしょう。
「今年は、光の粒があんまり多すぎるから、ぼくたち全部は紡げないと思っていたけれど」
「すてきなお家があったおかげで、ゆっくり、糸紡ぎができました」
「お手伝いもしてもらったし」
「お飲み物もいただいたし」
「クリスマスツリーを眺めながら、糸紡ぎをするの、楽しかったね」
「おかげで糸紡ぎがはかどりました。ありがとう、ゆみこさん」
すばるの子らは、ゆみこさんにお礼を言いました。とんでもない、お礼を言うのはゆみこさんの方なのです。あんなにたくさんあった光の粒が、みんな糸の束になってくれたおかげで、ゆみこさんのお家は、再び宇宙へ漕ぎ出していけるのです。
ありがとう。
こちらこそ、ありがとう。
ゆみこさんとすばるの子らは、互いにお礼を言い合いました。
子供たちも目を覚まし、それぞれがすばるの子らにお礼とさよならを言いますと、オパールの人が櫂を持ち、ゆみこさんのお家はゆっくりと動き始めます。
窓の外で、青白く光るすばるの子らが、ゆみこさんたちに手を振っているのが見えました。子供たちも、両手をいっぱい大きく振ります。閉じた窓越しに、すばるの子らの歌声が聞こえてきます。
めぐる巡るは糸車 からから巡って糸を巻く
つむの先から結びまで
始めは終わり 終わりが最初
めぐる巡るは真っ赤な血潮 どくどく巡って命を灯す
指の先から心の臓まで
始めは終わり 終わりが最初
めぐる巡るは柱の時計 ちくたく巡って時間を刻む
みっつの針が追いかけ合って
始めは終わり 終わりが最初
めぐる巡るは十二月 ぐるぐる巡って年を取る
春から夏へ 夏から秋へ
秋から冬へ また春へ
始めは終わり 終わりが最初
からから どくどく めぐるよ巡る
ちくたく ぐるぐる めぐるよ巡る
始めは終わり 終わりが最初
六つの歌声に見送られながら、ゆみこさんのお家は、すばるのたもとを後にしました。天の川水系の支流に乗って、目指すは宇宙の果ての風穴です。
「あすこあたりは寒いから、これを持っていくと良いですよ。なに、たくさんありますので、少しくらい、大丈夫」
すばるの子らはそう言って、両手いっぱいの光の糸を、ゆみこさんに持たせてくれました。これで靴下を編んだら、きっととっても素敵でしょう。
座礁を抜けてからの旅路は、実に好調なものでした。宇宙風は追い風で、ゆみこさんのお家は、天の川をぐんぐん下ります。
子供たちは、すばるの子らが歌った歌をすこぶる気に入って、歌いながら、オパールの人の手伝いをしています。進路を確かめたり、時々窓をちょっと開けて、たもで星の欠片をすくったり。
子供たちがすくった星の欠片は、オパールの人がぎゅっと握ると、光る小魚になって、リビングを泳ぎ始めるのです。この作業は、お家が宇宙を行くのに、なにか必要なことなのでしょうか。気になって、ゆみこさんが尋ねますと、オパールの人は「周りを魚が泳いでいたほうが、気分が乗って、気持ちがいい」と、こともなげに言うのでした。
すばるを離れて、ずいぶん宇宙を進みました。きっと、進んだはずです。
すばるを目印にしていたときには、すばるの光が大きくなることで、進んでいることを実感できました。今は、窓の外の風景がなんにも変わりませんので、本当に進んでいるのか、ちょっと分からないのです。
ゆみこさんは、編み物をいったん中断して、窓のそばに寄りました。窓の外は真っ暗で、宇宙もいよいよ深くなってきているようです。大丈夫。ちゃんと、進んでいます。
「だいぶ近くなってきましたよ。ほら、あそこが風穴です」
ゆみこさんの不安を読み取ったかのように、石炭の局員さんが、宇宙の一画を指差しました。そこには、一切の星の光が灯らない、真っ黒で塗り潰された場所があります。あれが、宇宙の風穴です。
「今夜には、もう、着くんじゃないでしょうか」
そう言われて、ゆみこさんはほっと安心すると共に、少しだけ不安になります。宇宙の風穴で、いったい何が、ゆみこさんを待ち受けているでしょう。風穴から北風が吹かない理由が、ゆみこさんに分かるでしょうか。
でも、もうここまで来たからには、怖気づいてはいられないのです。
オパールの人が、せっせと櫂を動かします。窓の外は、星よりも闇の方が、多くなってきました。宇宙の静寂はさらに静けさを増し、誰もがじっと黙っていると、キーンと高い耳鳴りが聞こえます。
あんまり静かですと、なんだか深い宇宙の闇が、家の中にまで入ってきてしまいそうで、子供たちは一生懸命、歌を歌いました。さっきすばるの子らが歌っていた歌を歌い、それから、クリスマスの歌を歌いました。
闇はどんどん深くなり、歌声は高く響きます。歌うことをやめてしまったら、その途端に、お家が闇の中にとぷんと沈んでしまいそうです。それくらいの闇の中を、ゆみこさんのお家は進みます。美しい星々の光は、はるか後方に瞬くばかり。
(本当に、宇宙の果てに来てしまったんだわ)
ゆみこさんはぶるっと体をふるわせて、子供たちを抱き寄せました。子供たちは、頬っぺたを薔薇色に染めながら、声を張り上げて歌っています。ゆみこさんも、その歌に加わりました。石炭の局員さんも、メレンゲの王様も、オパールの人も歌いました。
椎の木の上で雪を降らせ続けている、雪雲さんも、歌っています。椎の葉の上の朝霜たちも、枝の上のハクセキレイも、落とし物箱の中の落とし物たちも、時計も、キャンドルの上の蛍たちも、みんな、歌います。
暗闇と静寂とが広がっている無限の空間で、ゆみこさんのお家だけが、光と音とを放っています。
広大な宇宙の中では、それは限りなく「無い」に等しい光と音でした。しかし宇宙の底知れない闇たちは、そんなささやかな光と音の前に、ほんの少しだけ、道を開けてくれました。
闇たちが開けてくれた細い細い道を、オパールの人は、上手に漕いで進んで行きます。
そしてとうとう、ゆみこさんたちは、闇の中に何かを見付けたのです。
それは、一軒のお家でした。宇宙の中にお家だなんて、そんなものが、ゆみこさんのお家のほかにあっただなんて、驚きです。誰もかれも驚いていて、窓の外をぽかんと見つめています。
オパールの人だけが、まだ自分の仕事に集中していて、驚く暇もないようでした。オパールの人が、櫂を真っ直ぐ突き立てますと、ゆみこさんのお家はぐるりと大きく旋回して、宇宙にぽつんとあったお家の横に停まりました。そうしてゆみこさんは、宇宙の果ての「お隣さん」になったのでした。
「どうしよう」
と、男の子が言います。
「どうしよっか。行ってみる?」
と、みーちゃんが言います。
宇宙の果てのお家は、ゆみこさんのお家と似た造りをしていますが、どの窓にも明かりは灯っていません。
ゆみこさんが、唇に人差し指を当てて、「しー」のポーズを取りました。ゆみこさんのお家にいる、全員が一斉に黙りますと、宇宙の果てはやっぱりとても静かです。つまり、お隣のお家からも、なんにも聞こえてこないのです。
空き家かしら。でも、それにしては、手入れは行き届いているようだし。
ゆみこさんは色々考えまして、そして、ついに結論を出しました。
「よし、決めた。なにもかも、明日にしましょう」
だって、もう夜遅いのです。タップダンスの上手な柱時計が、そのことを教えてくれています。
男の子とみーちゃんは、宇宙の果てで冒険がしたかったのでしょう。ぶーぶー文句を言いますが、ほんとのところ、ふたりだって、もう眠たいのです。
「もう、子供は寝る時間。それに、夜遅くによそのお家を訪問するのは、迷惑になりますからね」
それもそうです。まったく、ゆみこさんの言う通り。
「ですから、続きは、また明日」
子供たちは納得して、「はーい。また明日」と、お利口さんのお返事をしました。
また明日、お隣さんにご挨拶をしましょう。そして、お茶とお菓子をふるまって、たくさんお話をしましょう。そうしたら、北風が吹かない理由が、何か分かるかも。そして、宇宙の果てに、お友達ができるかも。
それって、なんて素敵なんでしょう。
でも、なにもかも、また明日。今夜はゆっくり、眠りましょう。
「おはようございます」
ゆみこさんが朝の挨拶をしますと、すばるの子らはにっこり笑います。
「ずっと休みなく働いていて、疲れませんか」
ゆみこさんの心配をよそに、すばるの子らは、ちっとも疲れておらず、眠そうにもしていないのです。「平気です」と彼らが答えた通り、本当に平気なのでした。それもそのはず。ゆみこさんたちが寝たり起きたりして過ごす時間は、すばるの子らにとって、ほんの一瞬に過ぎないのですから。
リビングは、ひと晩のうちに全く様変わりしていました。床に溢れていた光の粒は、みんな糸に紡がれて、束になっています。
その糸の美しいことといったら。どんな高級な絹よりも艶やかで、綿や羊毛よりも柔らかいのです。そして羽みたいに軽いので、ゆみこさんがリビングを歩くたびに、積み上げられた糸の束が、ふわりと揺れて漂うのでした。
「この糸を、少しずつ少しずつ、宇宙風に乗せてなびかせて、遠くの場所まで伸ばすんです。そうすると、遠くのお空に、星が光ります。冬は、北風が強いから、たくさん飛んでいくんです」
ああ、それで、冬の星空は一等綺麗なのだろうと、ゆみこさんは思いました。
地上の草花が寂しいぶんを補うように、どんな季節よりも星が綺麗に瞬いているのは、北風に乗って、宇宙から光の糸が届くからなのでしょう。
「今年は、光の粒があんまり多すぎるから、ぼくたち全部は紡げないと思っていたけれど」
「すてきなお家があったおかげで、ゆっくり、糸紡ぎができました」
「お手伝いもしてもらったし」
「お飲み物もいただいたし」
「クリスマスツリーを眺めながら、糸紡ぎをするの、楽しかったね」
「おかげで糸紡ぎがはかどりました。ありがとう、ゆみこさん」
すばるの子らは、ゆみこさんにお礼を言いました。とんでもない、お礼を言うのはゆみこさんの方なのです。あんなにたくさんあった光の粒が、みんな糸の束になってくれたおかげで、ゆみこさんのお家は、再び宇宙へ漕ぎ出していけるのです。
ありがとう。
こちらこそ、ありがとう。
ゆみこさんとすばるの子らは、互いにお礼を言い合いました。
子供たちも目を覚まし、それぞれがすばるの子らにお礼とさよならを言いますと、オパールの人が櫂を持ち、ゆみこさんのお家はゆっくりと動き始めます。
窓の外で、青白く光るすばるの子らが、ゆみこさんたちに手を振っているのが見えました。子供たちも、両手をいっぱい大きく振ります。閉じた窓越しに、すばるの子らの歌声が聞こえてきます。
めぐる巡るは糸車 からから巡って糸を巻く
つむの先から結びまで
始めは終わり 終わりが最初
めぐる巡るは真っ赤な血潮 どくどく巡って命を灯す
指の先から心の臓まで
始めは終わり 終わりが最初
めぐる巡るは柱の時計 ちくたく巡って時間を刻む
みっつの針が追いかけ合って
始めは終わり 終わりが最初
めぐる巡るは十二月 ぐるぐる巡って年を取る
春から夏へ 夏から秋へ
秋から冬へ また春へ
始めは終わり 終わりが最初
からから どくどく めぐるよ巡る
ちくたく ぐるぐる めぐるよ巡る
始めは終わり 終わりが最初
六つの歌声に見送られながら、ゆみこさんのお家は、すばるのたもとを後にしました。天の川水系の支流に乗って、目指すは宇宙の果ての風穴です。
「あすこあたりは寒いから、これを持っていくと良いですよ。なに、たくさんありますので、少しくらい、大丈夫」
すばるの子らはそう言って、両手いっぱいの光の糸を、ゆみこさんに持たせてくれました。これで靴下を編んだら、きっととっても素敵でしょう。
座礁を抜けてからの旅路は、実に好調なものでした。宇宙風は追い風で、ゆみこさんのお家は、天の川をぐんぐん下ります。
子供たちは、すばるの子らが歌った歌をすこぶる気に入って、歌いながら、オパールの人の手伝いをしています。進路を確かめたり、時々窓をちょっと開けて、たもで星の欠片をすくったり。
子供たちがすくった星の欠片は、オパールの人がぎゅっと握ると、光る小魚になって、リビングを泳ぎ始めるのです。この作業は、お家が宇宙を行くのに、なにか必要なことなのでしょうか。気になって、ゆみこさんが尋ねますと、オパールの人は「周りを魚が泳いでいたほうが、気分が乗って、気持ちがいい」と、こともなげに言うのでした。
すばるを離れて、ずいぶん宇宙を進みました。きっと、進んだはずです。
すばるを目印にしていたときには、すばるの光が大きくなることで、進んでいることを実感できました。今は、窓の外の風景がなんにも変わりませんので、本当に進んでいるのか、ちょっと分からないのです。
ゆみこさんは、編み物をいったん中断して、窓のそばに寄りました。窓の外は真っ暗で、宇宙もいよいよ深くなってきているようです。大丈夫。ちゃんと、進んでいます。
「だいぶ近くなってきましたよ。ほら、あそこが風穴です」
ゆみこさんの不安を読み取ったかのように、石炭の局員さんが、宇宙の一画を指差しました。そこには、一切の星の光が灯らない、真っ黒で塗り潰された場所があります。あれが、宇宙の風穴です。
「今夜には、もう、着くんじゃないでしょうか」
そう言われて、ゆみこさんはほっと安心すると共に、少しだけ不安になります。宇宙の風穴で、いったい何が、ゆみこさんを待ち受けているでしょう。風穴から北風が吹かない理由が、ゆみこさんに分かるでしょうか。
でも、もうここまで来たからには、怖気づいてはいられないのです。
オパールの人が、せっせと櫂を動かします。窓の外は、星よりも闇の方が、多くなってきました。宇宙の静寂はさらに静けさを増し、誰もがじっと黙っていると、キーンと高い耳鳴りが聞こえます。
あんまり静かですと、なんだか深い宇宙の闇が、家の中にまで入ってきてしまいそうで、子供たちは一生懸命、歌を歌いました。さっきすばるの子らが歌っていた歌を歌い、それから、クリスマスの歌を歌いました。
闇はどんどん深くなり、歌声は高く響きます。歌うことをやめてしまったら、その途端に、お家が闇の中にとぷんと沈んでしまいそうです。それくらいの闇の中を、ゆみこさんのお家は進みます。美しい星々の光は、はるか後方に瞬くばかり。
(本当に、宇宙の果てに来てしまったんだわ)
ゆみこさんはぶるっと体をふるわせて、子供たちを抱き寄せました。子供たちは、頬っぺたを薔薇色に染めながら、声を張り上げて歌っています。ゆみこさんも、その歌に加わりました。石炭の局員さんも、メレンゲの王様も、オパールの人も歌いました。
椎の木の上で雪を降らせ続けている、雪雲さんも、歌っています。椎の葉の上の朝霜たちも、枝の上のハクセキレイも、落とし物箱の中の落とし物たちも、時計も、キャンドルの上の蛍たちも、みんな、歌います。
暗闇と静寂とが広がっている無限の空間で、ゆみこさんのお家だけが、光と音とを放っています。
広大な宇宙の中では、それは限りなく「無い」に等しい光と音でした。しかし宇宙の底知れない闇たちは、そんなささやかな光と音の前に、ほんの少しだけ、道を開けてくれました。
闇たちが開けてくれた細い細い道を、オパールの人は、上手に漕いで進んで行きます。
そしてとうとう、ゆみこさんたちは、闇の中に何かを見付けたのです。
それは、一軒のお家でした。宇宙の中にお家だなんて、そんなものが、ゆみこさんのお家のほかにあっただなんて、驚きです。誰もかれも驚いていて、窓の外をぽかんと見つめています。
オパールの人だけが、まだ自分の仕事に集中していて、驚く暇もないようでした。オパールの人が、櫂を真っ直ぐ突き立てますと、ゆみこさんのお家はぐるりと大きく旋回して、宇宙にぽつんとあったお家の横に停まりました。そうしてゆみこさんは、宇宙の果ての「お隣さん」になったのでした。
「どうしよう」
と、男の子が言います。
「どうしよっか。行ってみる?」
と、みーちゃんが言います。
宇宙の果てのお家は、ゆみこさんのお家と似た造りをしていますが、どの窓にも明かりは灯っていません。
ゆみこさんが、唇に人差し指を当てて、「しー」のポーズを取りました。ゆみこさんのお家にいる、全員が一斉に黙りますと、宇宙の果てはやっぱりとても静かです。つまり、お隣のお家からも、なんにも聞こえてこないのです。
空き家かしら。でも、それにしては、手入れは行き届いているようだし。
ゆみこさんは色々考えまして、そして、ついに結論を出しました。
「よし、決めた。なにもかも、明日にしましょう」
だって、もう夜遅いのです。タップダンスの上手な柱時計が、そのことを教えてくれています。
男の子とみーちゃんは、宇宙の果てで冒険がしたかったのでしょう。ぶーぶー文句を言いますが、ほんとのところ、ふたりだって、もう眠たいのです。
「もう、子供は寝る時間。それに、夜遅くによそのお家を訪問するのは、迷惑になりますからね」
それもそうです。まったく、ゆみこさんの言う通り。
「ですから、続きは、また明日」
子供たちは納得して、「はーい。また明日」と、お利口さんのお返事をしました。
また明日、お隣さんにご挨拶をしましょう。そして、お茶とお菓子をふるまって、たくさんお話をしましょう。そうしたら、北風が吹かない理由が、何か分かるかも。そして、宇宙の果てに、お友達ができるかも。
それって、なんて素敵なんでしょう。
でも、なにもかも、また明日。今夜はゆっくり、眠りましょう。
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