7 / 22
第一章・婚約破棄
アキム・グランフェルトの後悔
しおりを挟む
学園から帰った私とレギーナは屋敷に着いて馬車のドアを開けた御者が怯えるほど険悪な雰囲気だったようです。
レギーナは御者を睨んで馬車を降りて行ったので私は妹の態度を御者に謝り労いの言葉をかけました。
「ごめんなさいね、機嫌が悪いみたいなの。いつもありがとう」
「いえ、今朝はすみませんでした。レギーナお嬢様に強く言われて断れずに先に出てしまって」
「断れないのは分かっているわ。でも次は置いて行かないでね」
御者は深く頭を下げ、私が立ち去るのを待って馬車を厩舎へ向け走り出しました。
帰宅後着替えた私は、丁度書斎から出て来たお父様に断りを入れて、ナタリーにお医者様を呼んで欲しいと頼みます。
「ユーリアお嬢様、実は私前回のレギーナお嬢様の月経の時期からして、まだ妊娠したかどうか分からないのではないかと思うのですが……確かに遅れてはいるのです。ご自分でも身に覚えがあるから妊娠したと思ったのでしょうが、まだつわりなどの症状も無いようですし、産婆を呼んでも意味が無いかもしれませんよ」
産婆というあまり耳慣れない名前に、私はナタリーにそれは何か質問します。
「さんばとは誰? 呼ぶのはお医者様ではないの?」
ナタリーはやれやれといった感じで私に教えてくれました。
「妊娠出産は女達の仕事です。男性医師は関わりません。心配しなくてもきちんと専門知識を身につけて国家試験をパスした女性ですよ。私でも取り上げはできますが、妊娠中のアドバイスなどは専門家に頼む方が安心できます。実は私も勉強中なのですが、資格を取るのは間に合いそうにありませんね。でも勉強は続けてユーリア様の子は私が取り上げますからお任せ下さい」
ナタリーの言葉でまた顔が赤くなるのがわかりました。
「もう、気が早いわ。私の事はまだまだ先よ。今はレギーナよ。何かで妊娠したかどうか調べられるのではないの? ほら、胸の音を聞いたり、お腹を触ったり?」
「何ですかそれは? 妊娠を知るには本人から症状を聞いて判断するしか無いのです。お腹が大きくなれば触ったりもしますけど、初期のうちはつわりが出て初めてわかるというのが一般的です。つわりは出ない人もいますから、お腹が大きくなり始めるまで分からない場合もあります。ただの月経不順という事もありますし、稀に女性特有の病気というケースもありますから、油断はできませんよ」
病気だなんて考えもしなかった私は、途端に妹が心配になってしまいました。
「最後の月経時期から考えて妊娠していれば今は丸二ヶ月といったところですから、つわりが出始めるかもしれませんね。そこは個人差があるので何とも言えませんが」
「ナタリーは良く知っているのね。私も勉強しようかしら、和の国で役立つかもしれないもの。ねぇ、やっぱり産婆を呼んでくれる? 多分初めての事で不安だと思うからレギーナの相談相手になってくれると助かるわ」
それから程なくしてやって来たナタリーの手配した産婆は、嫌がるレギーナに苦戦しながらもしっかり話しをしてくれたようです。
「あの、あの子はどうでしたか?」
「レギーナお嬢様は月経予定日を二週間ちょっと過ぎただけで、まだはっきり妊娠しているとは言えませんね。あ……これお姉さんに聞かせても良いのかしら……恥ずかしがってなかなか教えてくれなかったのですが、その、タイミング的には妊娠している可能性が高いとだけ言っておきます。そろそろ症状が出て良い時期ですが、焦らずあと二、三週間様子を見ましょう」
どうやら妊娠報告はフライングだったようです。私が和の国に旅立ってから結果が分かるという事でしょうか。ナタリーは本当によく勉強しているようです。産婆の話は先にナタリーから聞いた物とほとんど一緒でした。
私は結果をお父様に伝えに行きます。
コンコン
「お父様、ユーリアです。入ってよろしいかしら?」
「ああ、入りなさい」
お父様は書類にサインをしながら私が話し始めるのを待ちます。報告したいけれど、今この部屋にはグランフェルト様もいらっしゃるのですが。
「何だ、産婆に来てもらってレギーナを診てもらったのだろう? 子供は順調に育っていると言っていたか?」
「ええ、それなんですけれど……」
チラリとグランフェルト様の方を見ると、彼は手に持っていたペンをストンと落とし、目を丸くして私を見ていました。ペンはコロコロと私の足元に転がってきたので、拾って彼に手渡します。
「はい、グランフェルト様、落としましたよ」
彼は恭しくペンごと私の手を握り、何だかいやに熱っぽい目で私を見てきました。
「ユーリア、様。もしやあの時私が言った言葉を気にして、こんなに変わられたのですか? ああ、あなたは何て可憐で美しい……内面の美しさも然ることながら、隠れていた本当のあなたは誰よりも綺麗だ」
彼の真剣な目と手から伝わる熱に私は背中がゾワっとしました。咄嗟に手を引きましたがガッチリ掴まれてビクともしません。
「アキム、娘の手を離しなさい。後悔しても遅い、その手はもうお前のものでは無いのだから」
グランフェルト様は力を緩めてくれたのでバッと手を引き、ペンを彼の机に放りました。
「ユーリア、グランフェルトの子供がどうだったのか話しなさい」
「でも……はい、わかりました。あの、その前にグランフェルト様に聞きたい事が……」
これを話す前に聞いてみたかった事を質問してみた。父の前では言いにくいかもしれないけれど。
「何でしょう。答えられることならば良いのですが」
「あの、妊娠を知ったときレギーナからは何と言われたのですか?」
グランフェルト様はそんな質問をされると思わなかったでしょう、少し不快そうな顔をしました。
「お父上の前で話す事では無いでしょう」
「ハッキリ妊娠したと言われましたか?」
「……いえ、月のものが来ないの、あなたの赤ちゃんが出来たかも、と」
「やっぱり。お父様、レギーナはまだ妊娠いているのかハッキリしていませんでしたわ。産婆の話ではつわり等の症状が出るまで判断できないとか。二、三週間様子を見るよう言われました。ただし、出来ている可能性は高いらしいです」
グランフェルト様がゴクリと喉を鳴らすのが聞こえました。どこか期待に目を輝かせているようにも見えます。それはどちらの感情ですの? 赤ちゃんが出来ていて欲しい? それとも出来ていて欲しくない?
彼は真面目で責任感が強い人だから、あの子に子供が出来たかもと言われて責任を取るつもりだったのかもしれません。でも本当に真面目ならば、婚約者の妹に手を出すべきでは無かったのです。
「旦那様、レギーナお嬢様に子供が出来ていなかった場合、私の処遇は?」
「変わらん。どちらにせよ、お前が娘を傷物にしたのだ。もうどこにも出せんだろう。お前たちは愛し合っていると私に言ったのだ、その愛を貫いてみせろ。そしてお前はユーリアの変わりに一生をかけて領民の為に尽くせ」
「はい……承知致しました」
グランフェルト様は暗く沈んでしまいました。どう見ても好きな女性との結婚が決まった人の顔ではありません。私は報告が済んだので書斎をあとにしました。
「私はこれで失礼しますわ。お父様、お仕事頑張って下さいませ」
パタンと書斎の扉を閉めて、喉が渇いたのでお茶をもらいに食堂へと足を進める。
初めてグランフェルト様に触れたけれど、背中がぞわっとしてただ気持ち悪いだけだったわ。あれは何だったのかしら。異性に触れたからと言ってあんな風に感じた事は今まで無いのだけれど。
私は自分の手を見つめ廊下を歩いていると食堂からレギーナのはしゃぐ声が聞こえて来ました。
「ねぇ、清雅様、私にも和の国の言葉を教えて下さらない? 何だか不思議な発音で面白いわ」
レギーナは御者を睨んで馬車を降りて行ったので私は妹の態度を御者に謝り労いの言葉をかけました。
「ごめんなさいね、機嫌が悪いみたいなの。いつもありがとう」
「いえ、今朝はすみませんでした。レギーナお嬢様に強く言われて断れずに先に出てしまって」
「断れないのは分かっているわ。でも次は置いて行かないでね」
御者は深く頭を下げ、私が立ち去るのを待って馬車を厩舎へ向け走り出しました。
帰宅後着替えた私は、丁度書斎から出て来たお父様に断りを入れて、ナタリーにお医者様を呼んで欲しいと頼みます。
「ユーリアお嬢様、実は私前回のレギーナお嬢様の月経の時期からして、まだ妊娠したかどうか分からないのではないかと思うのですが……確かに遅れてはいるのです。ご自分でも身に覚えがあるから妊娠したと思ったのでしょうが、まだつわりなどの症状も無いようですし、産婆を呼んでも意味が無いかもしれませんよ」
産婆というあまり耳慣れない名前に、私はナタリーにそれは何か質問します。
「さんばとは誰? 呼ぶのはお医者様ではないの?」
ナタリーはやれやれといった感じで私に教えてくれました。
「妊娠出産は女達の仕事です。男性医師は関わりません。心配しなくてもきちんと専門知識を身につけて国家試験をパスした女性ですよ。私でも取り上げはできますが、妊娠中のアドバイスなどは専門家に頼む方が安心できます。実は私も勉強中なのですが、資格を取るのは間に合いそうにありませんね。でも勉強は続けてユーリア様の子は私が取り上げますからお任せ下さい」
ナタリーの言葉でまた顔が赤くなるのがわかりました。
「もう、気が早いわ。私の事はまだまだ先よ。今はレギーナよ。何かで妊娠したかどうか調べられるのではないの? ほら、胸の音を聞いたり、お腹を触ったり?」
「何ですかそれは? 妊娠を知るには本人から症状を聞いて判断するしか無いのです。お腹が大きくなれば触ったりもしますけど、初期のうちはつわりが出て初めてわかるというのが一般的です。つわりは出ない人もいますから、お腹が大きくなり始めるまで分からない場合もあります。ただの月経不順という事もありますし、稀に女性特有の病気というケースもありますから、油断はできませんよ」
病気だなんて考えもしなかった私は、途端に妹が心配になってしまいました。
「最後の月経時期から考えて妊娠していれば今は丸二ヶ月といったところですから、つわりが出始めるかもしれませんね。そこは個人差があるので何とも言えませんが」
「ナタリーは良く知っているのね。私も勉強しようかしら、和の国で役立つかもしれないもの。ねぇ、やっぱり産婆を呼んでくれる? 多分初めての事で不安だと思うからレギーナの相談相手になってくれると助かるわ」
それから程なくしてやって来たナタリーの手配した産婆は、嫌がるレギーナに苦戦しながらもしっかり話しをしてくれたようです。
「あの、あの子はどうでしたか?」
「レギーナお嬢様は月経予定日を二週間ちょっと過ぎただけで、まだはっきり妊娠しているとは言えませんね。あ……これお姉さんに聞かせても良いのかしら……恥ずかしがってなかなか教えてくれなかったのですが、その、タイミング的には妊娠している可能性が高いとだけ言っておきます。そろそろ症状が出て良い時期ですが、焦らずあと二、三週間様子を見ましょう」
どうやら妊娠報告はフライングだったようです。私が和の国に旅立ってから結果が分かるという事でしょうか。ナタリーは本当によく勉強しているようです。産婆の話は先にナタリーから聞いた物とほとんど一緒でした。
私は結果をお父様に伝えに行きます。
コンコン
「お父様、ユーリアです。入ってよろしいかしら?」
「ああ、入りなさい」
お父様は書類にサインをしながら私が話し始めるのを待ちます。報告したいけれど、今この部屋にはグランフェルト様もいらっしゃるのですが。
「何だ、産婆に来てもらってレギーナを診てもらったのだろう? 子供は順調に育っていると言っていたか?」
「ええ、それなんですけれど……」
チラリとグランフェルト様の方を見ると、彼は手に持っていたペンをストンと落とし、目を丸くして私を見ていました。ペンはコロコロと私の足元に転がってきたので、拾って彼に手渡します。
「はい、グランフェルト様、落としましたよ」
彼は恭しくペンごと私の手を握り、何だかいやに熱っぽい目で私を見てきました。
「ユーリア、様。もしやあの時私が言った言葉を気にして、こんなに変わられたのですか? ああ、あなたは何て可憐で美しい……内面の美しさも然ることながら、隠れていた本当のあなたは誰よりも綺麗だ」
彼の真剣な目と手から伝わる熱に私は背中がゾワっとしました。咄嗟に手を引きましたがガッチリ掴まれてビクともしません。
「アキム、娘の手を離しなさい。後悔しても遅い、その手はもうお前のものでは無いのだから」
グランフェルト様は力を緩めてくれたのでバッと手を引き、ペンを彼の机に放りました。
「ユーリア、グランフェルトの子供がどうだったのか話しなさい」
「でも……はい、わかりました。あの、その前にグランフェルト様に聞きたい事が……」
これを話す前に聞いてみたかった事を質問してみた。父の前では言いにくいかもしれないけれど。
「何でしょう。答えられることならば良いのですが」
「あの、妊娠を知ったときレギーナからは何と言われたのですか?」
グランフェルト様はそんな質問をされると思わなかったでしょう、少し不快そうな顔をしました。
「お父上の前で話す事では無いでしょう」
「ハッキリ妊娠したと言われましたか?」
「……いえ、月のものが来ないの、あなたの赤ちゃんが出来たかも、と」
「やっぱり。お父様、レギーナはまだ妊娠いているのかハッキリしていませんでしたわ。産婆の話ではつわり等の症状が出るまで判断できないとか。二、三週間様子を見るよう言われました。ただし、出来ている可能性は高いらしいです」
グランフェルト様がゴクリと喉を鳴らすのが聞こえました。どこか期待に目を輝かせているようにも見えます。それはどちらの感情ですの? 赤ちゃんが出来ていて欲しい? それとも出来ていて欲しくない?
彼は真面目で責任感が強い人だから、あの子に子供が出来たかもと言われて責任を取るつもりだったのかもしれません。でも本当に真面目ならば、婚約者の妹に手を出すべきでは無かったのです。
「旦那様、レギーナお嬢様に子供が出来ていなかった場合、私の処遇は?」
「変わらん。どちらにせよ、お前が娘を傷物にしたのだ。もうどこにも出せんだろう。お前たちは愛し合っていると私に言ったのだ、その愛を貫いてみせろ。そしてお前はユーリアの変わりに一生をかけて領民の為に尽くせ」
「はい……承知致しました」
グランフェルト様は暗く沈んでしまいました。どう見ても好きな女性との結婚が決まった人の顔ではありません。私は報告が済んだので書斎をあとにしました。
「私はこれで失礼しますわ。お父様、お仕事頑張って下さいませ」
パタンと書斎の扉を閉めて、喉が渇いたのでお茶をもらいに食堂へと足を進める。
初めてグランフェルト様に触れたけれど、背中がぞわっとしてただ気持ち悪いだけだったわ。あれは何だったのかしら。異性に触れたからと言ってあんな風に感じた事は今まで無いのだけれど。
私は自分の手を見つめ廊下を歩いていると食堂からレギーナのはしゃぐ声が聞こえて来ました。
「ねぇ、清雅様、私にも和の国の言葉を教えて下さらない? 何だか不思議な発音で面白いわ」
0
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
愛しい口づけを
蒼あかり
恋愛
幼いながらも愛を育み、将来を誓い合ったフローラとサイモン。
いつのまにかフローラに対するあふれ出した想いを止めることができずに、暴走を始めるサイモンの兄ファウエル。
ファウエルや家族に阻まれ、いつしか家族の関係もバラバラに。
フローラとサイモンは二人の未来のために駆け落ちを決意する。
しかし幼い二人は連れ戻さえ、引き離されてしまうことに。
フローラの兄カミーユの計らいで、最後の別れをすることができた。
そこで互いを思いながら、それでも生き続けることを誓い合う。
そんな二人が年月を重ね、再び出会い最後を迎えるまでの人生の愛のものがたり。
※ 他サイトでも掲載しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
悪役令嬢の断罪――え、いま婚約破棄と?聞こえませんでしたわ!
ちゃっぴー
恋愛
公爵令嬢アクア・ラズライトは、卒業パーティーの最中に婚約者であるジュリアス殿下から「悪役令嬢」として断罪を突きつけられる。普通なら泣き崩れるか激昂する場面――しかし、超合理的で節約家なアクアは違った。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」
魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。
鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。
(な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?)
実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。
レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。
「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」
冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。
一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。
「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」
これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。
「今とっても幸せですの。ごめんあそばせ♡」 捨てられ者同士、溺れちゃうほど愛し合ってますのでお構いなく!
若松だんご
恋愛
「キサマとはやっていけない。婚約破棄だ。俺が愛してるのは、このマリアルナだ!」
婚約者である王子が開いたパーティ会場で。妹、マリアルナを伴って現れた王子。てっきり結婚の日取りなどを発表するのかと思っていたリューリアは、突然の婚約破棄、妹への婚約変更に驚き戸惑う。
「姉から妹への婚約変更。外聞も悪い。お前も噂に晒されて辛かろう。修道院で余生を過ごせ」
リューリアを慰めたり、憤慨することもない父。マリアルナが王子妃になることを手放しで喜んだ母。
二人は、これまでのリューリアの人生を振り回しただけでなく、これからの未来も勝手に決めて命じる。
四つ違いの妹。母によく似たかわいらしい妹が生まれ、母は姉であ、リューリアの育児を放棄した。
そんなリューリアを不憫に思ったのか、ただの厄介払いだったのか。田舎で暮らしていた祖母の元に預けられて育った。
両親から離れたことは寂しかったけれど、祖母は大切にしてくれたし、祖母の家のお隣、幼なじみのシオンと仲良く遊んで、それなりに楽しい幼少期だったのだけど。
「第二王子と結婚せよ」
十年前、またも家族の都合に振り回され、故郷となった町を離れ、祖母ともシオンとも別れ、未来の王子妃として厳しい教育を受けることになった。
好きになれそうにない相手だったけれど、未来の夫となる王子のために、王子に代わって政務をこなしていた。王子が遊び呆けていても、「男の人はそういうものだ」と文句すら言わせてもらえなかった。
そして、20歳のこの日。またも周囲の都合によって振り回され、周囲の都合によって未来まで決定されてしまった。
冗談じゃないわ。どれだけ人を振り回したら気が済むのよ、この人たち。
腹が立つけれど、どうしたらいいのかわからずに、従う道しか選べなかったリューリア。
せめて。せめて修道女として生きるなら、故郷で生きたい。
自分を大事にしてくれた祖母もいない、思い出だけが残る町。けど、そこで幼なじみのシオンに再会する。
シオンは、結婚していたけれど、奥さんが「真実の愛を見つけた」とかで、行方をくらましていて、最近ようやく離婚が成立したのだという。
真実の愛って、そんなゴロゴロ転がってるものなのかしら。そして、誰かを不幸に、悲しませないと得られないものなのかしら。
というか。真実もニセモノも、愛に真贋なんてあるのかしら。
捨てられた者同士。傷ついたもの同士。
いっしょにいて、いっしょに楽しんで。昔を思い出して。
傷を舐めあってるんじゃない。今を楽しみ、愛を、想いを育んでいるの。だって、わたしも彼も、幼い頃から相手が好きだったってこと、思い出したんだもの。
だから。
わたしたちの見つけた「真実の愛(笑)」、邪魔をしないでくださいな♡
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる