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第八章 終末のようなもの

第百十四話 置き土産

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「……銃、ですかね」

「……銃、みたいね」

「んむ?」

「ほう?」

「え?」

「ふむ?」

「あァン?」

「「あっ」」

 そういえば、この世界の住人は銃を知らないのであった。

「何これ、オモチャ?」

「随分と小さいのだな」

「クロスボウ……?に、近いのかしら」

「はて……この穴は何ですかな」

 一人ずつ、回すように拳銃を触り始める。

 銃を知らない、ただそれだけで、こうも使い方が分からないものなのだろうか。

「何かここ動くんじゃねェか?」

「ん、押せそう?」

 そして一分も立たないうちに、よりによってバグラディとファーリちゃんが引き金に目をつけ、そこに手をかけようと、持ち方を探し始めてしまった。

 カタカタと動く引き金が、実に危なっかしい。

「「ストーーーップ!!!」」

 俺とガラテヤ様は、思わず大声を張り上げてしまった。

「わっ」

「はァ!?」

 その拍子に、二人は拳銃を地面に落としてしまった。
 繋がれている鎖が、一気に拳銃を元の台座付近にまで引き戻す。

「「セーフ……」」

「お、脅かすんじゃねェよいきなり!?」

「ん、びっくりした。あれ、危ないの?」

「危ないわよ、とっても!」

「もし、アレに実弾が入っているなり、この世界にあるもので動く仕組みが組まれているなりしたら、あわや一人目の死者が生まれていたかも知れなかったんだぞ」

「ジツダン……?ジツダンとは、何ですかな?」

「あー!分かった分かった!一から説明するから!」

 数分間、俺とガラテヤ様による拳銃のざっくりした解説を経て、一同の顔は一気に青ざめていた。

「そんなにも危ないものだったのか……小さいのに」

「そうよ、本当に……あの手の武器が、一体何人の人間を殺してきたことやら」

「俺に関しては実際に触ったことあるし……」

 三度目の人生で、少し旧式の拳銃を、取り回し重視の武器として持たされたような。
 思い出して愉快になるものではないが、懐かしい思い出である。

「それにしても、何故このようなものが、洞窟の奥深くにあるのか……意味が分かりませんなぁ」

「多分、あの的に撃つためじゃないですか?」

「この銃を使って的当てをしろ……ってことかしら」

「そう、だと思う。でも、おいら達……それ、使ったことない。見たことも聞いたこともない」

「どう、ジィン。元帝国軍人として、久々にいかがかしら?」

「銃の扱いに関しては、学徒兵に毛が生えた程度ですよ。まあ、でも……やってみるかぁ……。ガラテヤ様も得意そうですけどね、『嶺流貫』ってやつ、使ってましたし」

「アレは出力にもよるけど、基本はスナイパーライフルみたいに、じっくり構えて撃つものだから……拳銃射撃とはまた別物だと思うわ」

「そうですか……。じゃ、俺がやりますか……」

 俺が使っていた拳銃とはまるで勝手が違うようにも見えるが……やってみるしか無い。

「任せたわよ、ジィン」

「皆、離れてください。実際に撃ってみないことには、反動も弾丸の種類も分からないですから。下手すれば暴発するかもしれませんし」

「そうね。皆、ジィンの言う通り、彼から離れることをお勧めするわ」

「ん、了解」

「さっきの話を聞く限りは、アレから矢みたいなのが出るのかしら」

 流石、弓使いのケーリッジ先生。
 物分かりが良くて助かる。

 俺はじっくりと的に狙いを定め、引き金に指をかけた。

 そして一発。

「うわっ!」

 眩い光を発しながら、「ピキューン!」という音と共に、拳銃からはビームが発射された。
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