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第八章 終末のようなもの
第百一話 カーテン
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工房の扉を開けると、そこには休憩中と思しきアドラさんが椅子に座っていた。
「あら、いらっしゃーい!騎士チャンに、猟兵チャン!今日はどんなご用かしらン?」
今日も今日とてこのテンション。
元気な人である。
「どうも、アドラさん。例のロディア対策についてなんですけど」
「その件ネ!困ったワよネ~。いくら選りすぐりのメンバーが控えてるカラって、倒せる気がしないんだモン」
「……正直、勝てる気がしないっていうのは俺も同じです。そして、多分皆も」
「ん」
「でも、まだできることがあったんです」
「……何かしら、それって!」
「道具を、作ることです」
「……武器?」
「道具です」
「武器?」
「道具」
「道具」
「道具。道具です」
作戦に使うものであるという意味であれば、間違えてはいないのだが。
この人、もしかすると武器職人というよりかは、武器ジャンキーを極めただけなのかもしれない。
「でも、ノウハウが無いンじゃないかしラ?」
「チッチッチ。ここで道具作りの鍵を握るのが、プロの猟兵として長いことやってきた経験がある、このファーリちゃんなんですよ」
「プロ、さんじょー」
「ファーリちゃん?」
何故かテンションがおかしい。
「なぁるほンどぉ!猟兵経験アリなら、なりふり構わず戦うことにも慣れてる……トラップとか、即席な武器とか、そういうのも作れそうネ!」
「腕の見せどころ。ふっふっふ」
「ファーリちゃん?緊張か何かしてる?」
「ううん。久しぶりに猟兵みたいなことするから。ワクワクしてるだけ」
過去に類を見ないほど、ノリが良い。
「ンじゃーマ、早速ご教授願おうかしラ!よろしくネ!センセ!」
「俺も、よろしく頼む」
「任せて。……あ。でも、ジィンお兄ちゃんも先生になるかも」
「え?」
「だって昔も戦ってたことあるって」
「それ以上はマズい」
おそらく、平安時代の話だろう。
しかし、ガラテヤ様が絡まない戦いは少なくともこの世界の記憶では無い。
そして誤魔化すとしても、俺がこの世界で生まれて以降の戦いをわざわざ「昔」とは言わないだろう。
ジィンはまだ、十六だから。
「マズいって、何が?騎士チャン、もしかして理由アリなのかしらン?」
「そ、そそそそそ、そう。ジィンお兄ちゃん、見た目より歳とってる」
「傷口が広がるッ!」
焦り過ぎである。
墓穴を掘ってどうするつもりなのだろうか。
ガワよりも内面の方が歳を食っているのは事実だが、それさえ、本来は軽率にバラして良いものでは無いのである。
ファーリちゃん……さぞ、猟兵仲間には娘のように可愛がられてきたのだろう。
或いは、アタッカーとバックアップに専念させられていたのだろうか。
拷問だとか潜入だとか、そういう現場からは遠ざけられてきたと見える。
「……ウ~ン?」
今から誤魔化せる気もしない。
「はぁ。そうです、理由アリなんです。だから聞かなかったことにしといてください」
「そうネ!誰にでも秘密はあるものヨネェ!アタシだって、昔のオトコのアレやコレやあるモン、ネ!それじゃあ改めて、お願いするワね!」
アドラさんがいい人で良かった。
俺は大きくため息をつき、気を取り直して、ファーリちゃん指導のもと、道具作りに取りかかるのであった。
「あら、いらっしゃーい!騎士チャンに、猟兵チャン!今日はどんなご用かしらン?」
今日も今日とてこのテンション。
元気な人である。
「どうも、アドラさん。例のロディア対策についてなんですけど」
「その件ネ!困ったワよネ~。いくら選りすぐりのメンバーが控えてるカラって、倒せる気がしないんだモン」
「……正直、勝てる気がしないっていうのは俺も同じです。そして、多分皆も」
「ん」
「でも、まだできることがあったんです」
「……何かしら、それって!」
「道具を、作ることです」
「……武器?」
「道具です」
「武器?」
「道具」
「道具」
「道具。道具です」
作戦に使うものであるという意味であれば、間違えてはいないのだが。
この人、もしかすると武器職人というよりかは、武器ジャンキーを極めただけなのかもしれない。
「でも、ノウハウが無いンじゃないかしラ?」
「チッチッチ。ここで道具作りの鍵を握るのが、プロの猟兵として長いことやってきた経験がある、このファーリちゃんなんですよ」
「プロ、さんじょー」
「ファーリちゃん?」
何故かテンションがおかしい。
「なぁるほンどぉ!猟兵経験アリなら、なりふり構わず戦うことにも慣れてる……トラップとか、即席な武器とか、そういうのも作れそうネ!」
「腕の見せどころ。ふっふっふ」
「ファーリちゃん?緊張か何かしてる?」
「ううん。久しぶりに猟兵みたいなことするから。ワクワクしてるだけ」
過去に類を見ないほど、ノリが良い。
「ンじゃーマ、早速ご教授願おうかしラ!よろしくネ!センセ!」
「俺も、よろしく頼む」
「任せて。……あ。でも、ジィンお兄ちゃんも先生になるかも」
「え?」
「だって昔も戦ってたことあるって」
「それ以上はマズい」
おそらく、平安時代の話だろう。
しかし、ガラテヤ様が絡まない戦いは少なくともこの世界の記憶では無い。
そして誤魔化すとしても、俺がこの世界で生まれて以降の戦いをわざわざ「昔」とは言わないだろう。
ジィンはまだ、十六だから。
「マズいって、何が?騎士チャン、もしかして理由アリなのかしらン?」
「そ、そそそそそ、そう。ジィンお兄ちゃん、見た目より歳とってる」
「傷口が広がるッ!」
焦り過ぎである。
墓穴を掘ってどうするつもりなのだろうか。
ガワよりも内面の方が歳を食っているのは事実だが、それさえ、本来は軽率にバラして良いものでは無いのである。
ファーリちゃん……さぞ、猟兵仲間には娘のように可愛がられてきたのだろう。
或いは、アタッカーとバックアップに専念させられていたのだろうか。
拷問だとか潜入だとか、そういう現場からは遠ざけられてきたと見える。
「……ウ~ン?」
今から誤魔化せる気もしない。
「はぁ。そうです、理由アリなんです。だから聞かなかったことにしといてください」
「そうネ!誰にでも秘密はあるものヨネェ!アタシだって、昔のオトコのアレやコレやあるモン、ネ!それじゃあ改めて、お願いするワね!」
アドラさんがいい人で良かった。
俺は大きくため息をつき、気を取り直して、ファーリちゃん指導のもと、道具作りに取りかかるのであった。
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