四つの前世を持つ青年、冒険者養成学校にて「元」子爵令嬢の夢に付き合う 〜護国の武士が無双の騎士へと至るまで〜

最上 虎々

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第八章 終末のようなものについて

第九十七話 カミングアウト

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 十日後。

 アデューラ岳から何とかブライヤ村まで戻ってきた俺達は、そこで待っていたメイラークム先生を馬車に乗せ、王都リーシェントールまで帰還した。

「……ジィンお兄ちゃんとガラテヤお姉ちゃん。聞きたいことがある」

「いやー、とうとうバレたかあ」

「そうね。いつまでも隠し通す訳にもいかなかったものね」

「えっ、どうしたの?何のことかしら?」

「この際です、メイラークム先生にも聞いてもらいましょう」

「そうね。それに、マーズと……バグラディにも、一応聞いてもらおうかしら」

「ロディアが言っていた、『みさいる』とかいうやつの話だな」

 マーズさんの容体は、メイラークム先生の応急処置により、かなり安定した。

 先生が村で待っていたのは不思議だったが、俺達の帰還を待って、一緒に馬車で王都へ送ってもらうつもりだったらしい。
 これは不幸中の幸いだったと言うべきだろう。

「ま、とっとと話しちまえよ。お前ら二人、何か訳アリだったんだろ?ずっと」

「ん。『みさいる』の話以外に、他にも……ロディアと戦ってる時……いろいろおかしかった。何があったのか、教えて欲しい」

「……分かった。実は俺達、元々この国の出身じゃ無いんだ」

「厳密には、肉体の話じゃなくて精神の話なのだけれど」

「「「「………………えぇ?」」」」

 揃いも揃って予想通りの反応である。

 俺だって、ソドムに生きていた時に「俺、実は前世の記憶あるんだよね」なんて言われても、信じられる気がしない。

 文化圏の問題はあるだろうが、仮に一回目の人生が日本人であったとしても、まともに信じることはしなかっただろう。

 前世の存在というものは、実際にその記憶を持って生まれてきて、初めて実感できるというものだ。

 しかし、実感を伴った理解が難しいとはいえ、説明を始めておいて途中でやめる訳にもいかない。

 俺達は何とか内容を噛み砕いて、前世の記憶と存在について説明した。

「……まるで信じられねェ」

「同感だ。だが……ここまで現実味を帯びた話ともなると、とても嘘とは思えないな」

「ジィンお兄ちゃんが『死んだまま生きてる』のも、何か理由が無いとおかしい。でも、他の人だった頃の記憶を持ったまま生きてることが関係あるなら、それもナットク」

「何故こんなことが起こっているのか分からないけれど、つまり、ジィン君とガラテヤちゃんは……時間だとか空間だとか、そういうものを超えて、この国にやってきた人……ということになるのかしら」

「そしてロディアは、私達のパーティに潜入し、仲間になったフリをして同行することで、ジィンとガラテヤの二人と、特殊な形での接触を計っていた……ということか」

「……まるで、『信奉者たち』の司教が話す神話を聞いているみたいね。これが現実に起きていることだって、未だに実感が湧かないわ」

 無理もない。

 しかし、それでも俺達の前世について説明すれば、この世界で人生の一週目を過ごしている者達にとって不可解であった会話については、説明がつく。

 今はただ、情報を耳に入れておいてもらうだけでもした方が良いと、俺達は質問の雨にも負けず、一から十までを説明するのであった。
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