102 / 137
第七章 もう一度
第九十三話 正体
しおりを挟む
牢の幻覚を抜け、十数分。
道中では壁という壁を殴って幻の壁を晴らしながら、時々現れるロディアの分身を蹴散らしつつ、今度こそ、洞窟の最奥へ到着した。
「……広い」
そこに広がるは、円形の広間。
ここまでは幻覚のおかげで道が見えていたが、ファーリちゃんが電気の玉を放ってくれなければ、真っ暗で何も見えないところであった。
一応、幻覚を取り払おうと、いくつの小石を投げたが……それは普通に転がったため、視界に映っている広間は洞窟そのまんまの景色なのだろう。
いかにも洞窟の最奥に作られたドームといったような風だが、あのロディアが、ただの広間へと続く道に何の意図もなく、幻覚を見せる魔法と分身を配置しておくとは思えない。
俺は刀を構え、先陣を切る。
そしてファーリちゃん、ガラテヤ様と続いた。
先へ先へ、ゆっくりと進む。
定期的に幻覚避けとして小石を投げたり風を飛ばしたりしたが、やはりそれらしき力も、人の気配も感じない。
この広間のどこかに仕掛けが……。
しかし、そのようなことを考える間も無く、敵は天井を突き破って姿を現した。
「……アァ」
それは見覚えのあるような、どこか違うような。
人間のような形の、しかし人間とは明らかに違う、巨大な……魔物?ともつかないもの。
「構えて!」
「ええ!」
「うん……!」
ロディアと同じような力を感じるが、確実にロディアではない。
この山羊に似た二本角が特徴的な、よく分からない人型の敵は明確を持っているようには見えなかったが……しかし動きに迷いは無く、鋭い爪を向けてこちらへ襲いかかってきた。
「【雀蜂】!やあっ!」
俺は風を纏わせたナナシちゃんの剣でそれを弾き、もう一振りの剣で腕を斬りつける。
「ァァァァ!」
意外と呆気なく、その敵は切り傷をつけられた左腕を押さえ、地面に左膝を突いた。
「あれ、思ったより……」
「隙アリだよ、ジィン」
「なッ……!」
その呆気なさに気を緩めたのが運の尽きか。
突き破られた天井から降りてきたロディアが、こちらへ魔力の塊を飛ばしてくる。
今から刀を振ったとて、反応速度の問題で身体の動きが間に合わない。
「フンッ。私をお忘れかしら、ロディア?」
しかし、ガラテヤ様が空気の塊を飛ばしてロディアの攻撃を相殺してくれたことで、俺は難を逃れたようであった。
「勿論、覚えているとも。君も重要な接触対象だからね。でも……今、重要なのはそんなことじゃないんだよ」
「まだ何があるのかよ……」
「いやあ、ごめんね。でも、ご存知の通り……人間として生きてた時の身体はもう、首落とされちゃったからさ。いつまでも人間に化けているのも何だから、早く本当の姿を見せたいと思って……冥土の土産に、見ていくと良いよ。きっと話題になるから」
ロディアはそう言うと、全身から真っ黒の、血とも煙ともつかないものを放出する。
「退避、退避ーッ!」
みるみるうちに二本角の魔物を取り込みながら、巨大化していくロディア。
洞窟内が揺れる程の衝撃を発しながら身体の形を変えていくそれを、俺達はただただそれを見守ることしかでかなかった。
そして、すっかり人間の要素は二足歩行くらいのものしか残らなくなってしまったロディアは、一つ。
「これが、僕の本来の姿だよ」
そう言って、全身に禍々しい闇の魔力を纏った、まさに悪魔のような形を見せつけた。
道中では壁という壁を殴って幻の壁を晴らしながら、時々現れるロディアの分身を蹴散らしつつ、今度こそ、洞窟の最奥へ到着した。
「……広い」
そこに広がるは、円形の広間。
ここまでは幻覚のおかげで道が見えていたが、ファーリちゃんが電気の玉を放ってくれなければ、真っ暗で何も見えないところであった。
一応、幻覚を取り払おうと、いくつの小石を投げたが……それは普通に転がったため、視界に映っている広間は洞窟そのまんまの景色なのだろう。
いかにも洞窟の最奥に作られたドームといったような風だが、あのロディアが、ただの広間へと続く道に何の意図もなく、幻覚を見せる魔法と分身を配置しておくとは思えない。
俺は刀を構え、先陣を切る。
そしてファーリちゃん、ガラテヤ様と続いた。
先へ先へ、ゆっくりと進む。
定期的に幻覚避けとして小石を投げたり風を飛ばしたりしたが、やはりそれらしき力も、人の気配も感じない。
この広間のどこかに仕掛けが……。
しかし、そのようなことを考える間も無く、敵は天井を突き破って姿を現した。
「……アァ」
それは見覚えのあるような、どこか違うような。
人間のような形の、しかし人間とは明らかに違う、巨大な……魔物?ともつかないもの。
「構えて!」
「ええ!」
「うん……!」
ロディアと同じような力を感じるが、確実にロディアではない。
この山羊に似た二本角が特徴的な、よく分からない人型の敵は明確を持っているようには見えなかったが……しかし動きに迷いは無く、鋭い爪を向けてこちらへ襲いかかってきた。
「【雀蜂】!やあっ!」
俺は風を纏わせたナナシちゃんの剣でそれを弾き、もう一振りの剣で腕を斬りつける。
「ァァァァ!」
意外と呆気なく、その敵は切り傷をつけられた左腕を押さえ、地面に左膝を突いた。
「あれ、思ったより……」
「隙アリだよ、ジィン」
「なッ……!」
その呆気なさに気を緩めたのが運の尽きか。
突き破られた天井から降りてきたロディアが、こちらへ魔力の塊を飛ばしてくる。
今から刀を振ったとて、反応速度の問題で身体の動きが間に合わない。
「フンッ。私をお忘れかしら、ロディア?」
しかし、ガラテヤ様が空気の塊を飛ばしてロディアの攻撃を相殺してくれたことで、俺は難を逃れたようであった。
「勿論、覚えているとも。君も重要な接触対象だからね。でも……今、重要なのはそんなことじゃないんだよ」
「まだ何があるのかよ……」
「いやあ、ごめんね。でも、ご存知の通り……人間として生きてた時の身体はもう、首落とされちゃったからさ。いつまでも人間に化けているのも何だから、早く本当の姿を見せたいと思って……冥土の土産に、見ていくと良いよ。きっと話題になるから」
ロディアはそう言うと、全身から真っ黒の、血とも煙ともつかないものを放出する。
「退避、退避ーッ!」
みるみるうちに二本角の魔物を取り込みながら、巨大化していくロディア。
洞窟内が揺れる程の衝撃を発しながら身体の形を変えていくそれを、俺達はただただそれを見守ることしかでかなかった。
そして、すっかり人間の要素は二足歩行くらいのものしか残らなくなってしまったロディアは、一つ。
「これが、僕の本来の姿だよ」
そう言って、全身に禍々しい闇の魔力を纏った、まさに悪魔のような形を見せつけた。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺、貞操逆転世界へイケメン転生
やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。
勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。
――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。
――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。
これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。
########
この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
百合ゲーの悪女に転生したので破滅エンドを回避していたら、なぜかヒロインとのラブコメになっている。
白藍まこと
恋愛
百合ゲー【Fleur de lis】
舞台は令嬢の集うヴェリテ女学院、そこは正しく男子禁制 乙女の花園。
まだ何者でもない主人公が、葛藤を抱く可憐なヒロイン達に寄り添っていく物語。
少女はかくあるべし、あたしの理想の世界がそこにはあった。
ただの一人を除いて。
――楪柚稀(ゆずりは ゆずき)
彼女は、主人公とヒロインの間を切り裂くために登場する“悪女”だった。
あまりに登場回数が頻回で、セリフは辛辣そのもの。
最終的にはどのルートでも学院を追放されてしまうのだが、どうしても彼女だけは好きになれなかった。
そんなあたしが目を覚ますと、楪柚稀に転生していたのである。
うん、学院追放だけはマジで無理。
これは破滅エンドを回避しつつ、百合を見守るあたしの奮闘の物語……のはず。
※他サイトでも掲載中です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【LUK】だけ上げて世界最強
七鳳
ファンタジー
☆お気に入り登録&コメント励みになります!
大学に入ってからの時間をほぼ全て、オンラインゲーム「ユグドラシルオンライン」…通称UGOに捧げていた主人公。彼は狂ったようにUGOにのめりこんでいた。
そんな彼が本当の異世界となったUGOの世界に転生してしまうありふれたお話。
※見切り発車のため後に設定・内容が大きく変更される恐れもあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる