88 / 139
第七章 もう一度
第七十九話 捜索再開
しおりを挟む
帰っていくロジーナ様とバネラウス司教を見送った俺達は、一週間かけてメイラークム家で体制を立て直し、再び行方不明者、及び俺を殺した犯人の捜索を開始することにした。
「皆。出発前に、捜索対象の中でも重要な人物を改めて共有しておきましょ。まずは、ジィンの父親の『ジノア・セラム』。元フラッグ革命団の『バグラディ・ガレア』。……そして」
学校も一ヶ月後には再開するとのことで、段々と日常を取り戻しつつある世界だが、俺達ばかりはそうではない。
「俺を殺した裏切り者……『ロディア・マルコシアス』。ですよね」
何せ俺は一度、同じパーティの仲間だった彼に殺されているのだから。
死の間際に見たもの。
ガラテヤ様、マーズさん、ファーリちゃんの三人が戦っていた青年は間違いなく、俺達の仲間であるハズのロディアだった。
あの山で起きた出来事については判明していないことが多すぎるが、少なくとも現時点でほぼ確実であろうと結論づけられているのが、「馬車の暴走や妙なケウキも含めて、あの山で起こった一連の騒動は、全てロディアの仕業」だということだ。
何故、ロディアが俺達を攻撃してきたのかは分からない。
しかし、奴は俺達を裏切ったのは確かだろう。
遭難から俺の死まで、その全てに「幻覚」を使われていたのであれば、ロディアは俺達が知る何倍も強く、また対策が難しい攻撃をしてくることになる。
仲間だった頃は、まだ本気を出していなかったということだ。
「……あの事件から時間は経っているのに、発見された行方不明者は未だ半数にも達していない。生存者が力尽きることも考えれば、むしろ状況は悪化していると言って良いだろうな」
「ん。野垂れ死ぬ人もいると思う。猟兵だった頃、そういう人はいっぱい見てきたから、分かる」
希望は薄く、またロディアが俺達を裏切った理由についても不安が残るが、今はとりあえず、学校が始まるまでの間にできることをやるしか無い。
誰一人として発見できず、結果として辺りを彷徨き回っていただけの人になっていたとしても、それは仕方のないことなのだ。
「あら、もう行くの?」
「はい。お世話になりました、メイラークム先生」
「ふふふっ。また、学校でね。絶対、皆で顔見せに来るのよ?」
「ええ。一人も欠けず、また顔見せに行きますね」
メイラークム先生が用意してくれた馬車に乗り、俺達は東へと向かう。
行先はブライヤ村から一日かけて北東へ向かった地点にある山、「アデューラ岳」。
正体不明の人間達が数十名確認され、彼らに妙な動きが確認されたとのことであり、その中にはバグラディと思しき人間の姿もあったのだとか。
俺達はその真相を突き止めるべく、ブライヤ村を中継し、そのアデューラ岳へと向かうことにしたのだ。
「また、山に行くのだな……」
「あんなことがあったから。流石のおいらも心配」
「大丈夫だって、俺は生き返ったんだから。きっと、もう死なない」
「ええ。私とジィンがいれば、何にだって負けないわ」
「……そうか、すまない。私としたことが、怖気づいてしまったようだ」
「……ガラテヤ様」
「どうしたの?」
「メイラークム先生から聞きました。俺の命について」
「あら、聞いたのね。後で私の口から伝えようと思ったのだけれど……それなら、話が早いわ」
「という訳で俺、滅多なことではガラテヤ様から離れられなくなっちゃいました」
新たに大きな動きを始める前に、改めて伝えておかなければならないと思った。
作戦行動中に何かあっては困る。
「構わないわよ。なんなら、お風呂も一緒に入る?」
「いや、離れたからってすぐバッテリー切れになる訳ではないので、そこまでは」
「あら、残念」
マーズさんとファーリちゃんの目を考えず、露骨にこちらへ身体を絡めるガラテヤ様。
俺が生き返ったことを喜んでくれているのは良いが、心なしか、このガラテヤ様には違和感を感じざるを得なかった。
「……大丈夫ですか、ガラテヤ様?」
「え?何が?」
「いや、今日はやけにイチャついてくるなぁ、と」
「ダメかしら?」
「ダメじゃないですけど」
どうにも、過剰なまでに心配されているような気がしてならない。
この調子では、しばらく続きそうである。
愛している人に愛されるというのは、とても嬉しいことだ。
しかし、本人の心にとって毒となる程のものであるのも、考えものである。
贅沢な悩みなのだろうが……いずれ、向き合わなければならない日が来るだろう、その時まで。
今はただ、ガラテヤ様に寄り添うことにした。
「皆。出発前に、捜索対象の中でも重要な人物を改めて共有しておきましょ。まずは、ジィンの父親の『ジノア・セラム』。元フラッグ革命団の『バグラディ・ガレア』。……そして」
学校も一ヶ月後には再開するとのことで、段々と日常を取り戻しつつある世界だが、俺達ばかりはそうではない。
「俺を殺した裏切り者……『ロディア・マルコシアス』。ですよね」
何せ俺は一度、同じパーティの仲間だった彼に殺されているのだから。
死の間際に見たもの。
ガラテヤ様、マーズさん、ファーリちゃんの三人が戦っていた青年は間違いなく、俺達の仲間であるハズのロディアだった。
あの山で起きた出来事については判明していないことが多すぎるが、少なくとも現時点でほぼ確実であろうと結論づけられているのが、「馬車の暴走や妙なケウキも含めて、あの山で起こった一連の騒動は、全てロディアの仕業」だということだ。
何故、ロディアが俺達を攻撃してきたのかは分からない。
しかし、奴は俺達を裏切ったのは確かだろう。
遭難から俺の死まで、その全てに「幻覚」を使われていたのであれば、ロディアは俺達が知る何倍も強く、また対策が難しい攻撃をしてくることになる。
仲間だった頃は、まだ本気を出していなかったということだ。
「……あの事件から時間は経っているのに、発見された行方不明者は未だ半数にも達していない。生存者が力尽きることも考えれば、むしろ状況は悪化していると言って良いだろうな」
「ん。野垂れ死ぬ人もいると思う。猟兵だった頃、そういう人はいっぱい見てきたから、分かる」
希望は薄く、またロディアが俺達を裏切った理由についても不安が残るが、今はとりあえず、学校が始まるまでの間にできることをやるしか無い。
誰一人として発見できず、結果として辺りを彷徨き回っていただけの人になっていたとしても、それは仕方のないことなのだ。
「あら、もう行くの?」
「はい。お世話になりました、メイラークム先生」
「ふふふっ。また、学校でね。絶対、皆で顔見せに来るのよ?」
「ええ。一人も欠けず、また顔見せに行きますね」
メイラークム先生が用意してくれた馬車に乗り、俺達は東へと向かう。
行先はブライヤ村から一日かけて北東へ向かった地点にある山、「アデューラ岳」。
正体不明の人間達が数十名確認され、彼らに妙な動きが確認されたとのことであり、その中にはバグラディと思しき人間の姿もあったのだとか。
俺達はその真相を突き止めるべく、ブライヤ村を中継し、そのアデューラ岳へと向かうことにしたのだ。
「また、山に行くのだな……」
「あんなことがあったから。流石のおいらも心配」
「大丈夫だって、俺は生き返ったんだから。きっと、もう死なない」
「ええ。私とジィンがいれば、何にだって負けないわ」
「……そうか、すまない。私としたことが、怖気づいてしまったようだ」
「……ガラテヤ様」
「どうしたの?」
「メイラークム先生から聞きました。俺の命について」
「あら、聞いたのね。後で私の口から伝えようと思ったのだけれど……それなら、話が早いわ」
「という訳で俺、滅多なことではガラテヤ様から離れられなくなっちゃいました」
新たに大きな動きを始める前に、改めて伝えておかなければならないと思った。
作戦行動中に何かあっては困る。
「構わないわよ。なんなら、お風呂も一緒に入る?」
「いや、離れたからってすぐバッテリー切れになる訳ではないので、そこまでは」
「あら、残念」
マーズさんとファーリちゃんの目を考えず、露骨にこちらへ身体を絡めるガラテヤ様。
俺が生き返ったことを喜んでくれているのは良いが、心なしか、このガラテヤ様には違和感を感じざるを得なかった。
「……大丈夫ですか、ガラテヤ様?」
「え?何が?」
「いや、今日はやけにイチャついてくるなぁ、と」
「ダメかしら?」
「ダメじゃないですけど」
どうにも、過剰なまでに心配されているような気がしてならない。
この調子では、しばらく続きそうである。
愛している人に愛されるというのは、とても嬉しいことだ。
しかし、本人の心にとって毒となる程のものであるのも、考えものである。
贅沢な悩みなのだろうが……いずれ、向き合わなければならない日が来るだろう、その時まで。
今はただ、ガラテヤ様に寄り添うことにした。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
*****************************
***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。***
*****************************
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる