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第五章 追う者、去る者

第五十四話 合流

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 日暮れを迎え、俺達は集会所に用意された寝床で、派遣された冒険者達と寝食を共にする。

 用意された部屋は男女別であり、ガラテヤ様とファーリちゃんとは、早い段階で別れることとなったが……同室となった冒険者達と情報交換ができたため、暇を持て余す事は無かった。

 そして翌日。

「待たせたな、三人ともー!」

「ようやく着いたよ、ふぁぁ」

 村がすっかり緊急事態ムードになる中、マーズさんとロディア、さらに数十名の冒険者のが合流し、各々パーティでの準備を進めることとなった。

 俺とマーズさんは敵が潜伏しているであろうラブラ森林付近に、近接戦を得意とする冒険者達と共に立ち塞がり、ガラテヤ様、ファーリちゃん、ロディアの三人はブライヤ村付近から取り逃がした敵を迎撃する。

 ガラテヤ様は本来、近接戦闘の方が得意であると本人も言っていたのだが……いくら冒険者といえど、ベルメリア家の三女という立場を持つ故に前線へ送り込む訳にはいかないという理由で、後衛に配属されるように陣が組まれたようであった。

 それを基本とした上で、武器や防具を整備しつつ、立ち回りについての話を進める。
 特に今回、俺はハーフプレートアーマーではなく、フルプレートメイルを着て戦いに臨む予定だ。
 前者の防具と同じ立ち回りをしては、痛い目を見ることとなるだろう。

 いかにも西洋の騎士が着ている甲冑といった風貌のそれは硬さこそ優れているものの、相応に機動力を奪われるという点は、特に俺のような機動性重視の剣士にとっては目を瞑ることができない弱みとなってしまう。

 フルプレートメイルを着てもなお高速移動が可能となる「駆ける風」があるとはいえ、魔力の強さにもリソースにも自信がある方では無い俺では、それを頻繁を使って移動速度を補うこともできないだろう。

 故に道の悪い山や、戦いに移動速度が求められる際には使えないのが悩みどころであるが、今回は違う。
 迎撃が中心の戦いとなるため、こちらから急いで動く必要は無い。

 故に、俺は機動力よりも防御力に重きを置いた装備を着ようと、フルプレートメイルとファルシオンに加えて、弓矢とバックラーの整備もしている訳である。
 
 しかし一方のガラテヤ様は、自分の戦闘スタイルと合わない立場を任されたためだろうか、「ただ前衛の取り逃がしが来るまで後衛で暇を持て余す木偶の坊となる訳にもいかない」と、頭を悩ませてしまった。

 情報によると、フラッグ革命団による襲撃は明日。

 それまでに、何とかガラテヤ様の出番を何とかできないものだろうか。
 責任感が強いガラテヤ様のことだ。
 今回は司令官として立つこともなく、ただ子爵令嬢というだけで後衛に回されることに、もどかしさを感じるのも無理はない。

 しかし、そう簡単に「じゃあ前衛にしよう」と言うことはできないものである。
 俺も、ガラテヤ様を前衛へ置くことに賛成はできない。
 いくら強くなったとは言え、相手が何を用意しているか分からない以上、どうしても心配なのだ。

 後衛からでも積極的に前衛を支えることができる手段は何か無いものか。

 すると、ガラテヤ様は何かを思いついたように席を立ち、一人で魔術の練習を始めた。
 何やら指先に風を纏わせているようだが……邪魔になってはいけないと思い、俺は遠くから見守るだけに留めることにしようと思う。

 それからマーズさんとロディアに村の案内をし、ファーリちゃんと一緒に、即効性の高い魔法薬や食べやすい保存食を調達しに行った。

 それからは他の冒険者と協力して、前衛が待機することになるであろう場所に簡易的な砦を用意し、ほぼ日暮れと同時に作業を終えた頃にはすっかり、クタクタに疲れてしまっていた。

 今日は夕食を終えたらゆっくりと休み、明日に備えよう。

 俺はパーティの皆と、それから他の冒険者達と共に、同じ鍋を囲む。

 自室に戻って布団を被れば、後は瞬く間に夢の中。
 嵐の前に、静かな眠りへ落ちるのであった。
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