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第四章 爆発
第四十五話 激闘から
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その後。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
俺は叫び声を上げて倒れ込んでしまったガラテヤ様を抱え、講堂へ向かった。
戦いの最中に敗者の待機部屋である講堂へ戻ってしまうことは、すなわちリタイアを示す。
それでも、俺はガラテヤ様を放っておくことはできなかった。
ファーリちゃんはそのまま戦い続け、見事に六人の闇討ちを成功させた後、そのまま日暮れまで生き残り続けた。
教師側は考えていなかったらしいが、流石に夜まで山をうろつかせるわけにはいかなかったらしく、急遽タイムアップ制度が設定され、その結果、勝利したのは僅差でウェンディル学園であった。
「ただいま。ガラテヤお姉さんは?大丈夫?」
「だ、大丈夫よ……ちょっと全身が痛むだけで」
「全然大丈夫じゃない」
「あっははははははは……まあ、あんなに無理したらダメに決まってるわよね……」
「ホントですよ。でも、負担はまあまあっぽくて良かったです」
「これでまあまあなの……?どうなってるの、風牙流」
「コレだから廃れたんでしょうね、多分。魔力使わなかったら、『風車』でも神経痛の酷い時くらい痛いですもん」
ガラテヤ様が繰り出した「波霊掌」は、全身を使って体内に波を作り出し、足から腰、腰から肩、肩から腕、そして腕から霊力を込めた拳へ、溜めた波と魔力の全てを一撃で叩き込む技らしい。
風ではなく霊の力へと昇華することで発生する負担に加えて、溜めた力を使う際にかかる負担も抑えるように訓練していたらしいとはいえ、負荷の大きさは俺が「越風霊斬」を使った時と良い勝負である。
これに関しては、本当にガラテヤ様の天才ぶりが幸いしたと言うべきだろう。
後にマーズさんとロディアも部屋を訪れ、講堂で暴れようとしたバグラディが、クロスボウでケウキから俺達を助けてくれたケーリッジ先生と、養護教諭であり領主の娘であるメイラークム先生により止められたという話をしてくれた。
ケーリッジ先生が強いのは分かっていたが、メイラークム先生もアレを相手に戦える程だったとは。
話を聞く限り、長い脚から繰り出される蹴りがバグラディの顎にヒットし、そのまま意識を奪ってしまったのたという。
「ガラテヤちゃん、大丈夫?倒れたって聞いたから、来てみたのだけれど……あら、皆お揃いのようね」
噂をすれば、メイラークム先生である。
「わ、私は何とか……ジィンに色々手伝ってもらってるので」
「【バイタルスキャン】。……全身に内側から酷い負担がかかってる。何をしたらこうなるの?」
「そういう技があるんです。俺も使ったことありますけど、しばらく寝込んでました」
「そうなの?呼んでくれれば、薬渡したのに」
「いやあ、すいません」
「……あんまり無理しちゃダメよ?致命的なものじゃないから良かったけど、こういうのは下手すると一生モノなんだから」
「気をつけますわ」
ガラテヤ様は深く息をつき、布団を被る。
「とりあえず、身体の負担を和らげる魔法薬を処方しておくわ。ちょっと身体がダルくなるけど、それ以上の副作用は無いから安心してね」
「ありがとう、メイラークム先生」
「いいのよ。顔の良いオンナは元気が一番だものね」
「メイラークム先生?」
今、何かがおかしかったような。
「何でもないわ。もう少ししたら夕食だから、食堂に集まってね。ガラテヤちゃんは……無理そうなら、私が部屋まで持ってきてあげるけど……」
「大丈夫です、俺が持って行くので」
「そう?じゃあ、お願いね」
部屋を去ろうとするメイラークム先生はこちらへウィンクをし、マーズさん、ロディア、ファーリちゃんも同時に退出する。
「な、何か……前にすれ違った時も思ったけど、メイラークム先生って、ちょっとナルシストなのかしら?悪い人では無さそうだけれど」
「自信家なんじゃないですか?顔良し、スタイル良し、医学の知識もありますから」
「へぇ。ジィンはああいうのがタイプなの?」
「ガラテヤ様一筋ですが何か?」
「そう。それなら良いのだけれど」
「嫉妬しちゃってます?」
「まさか。ふんっ」
ガラテヤ様は口を尖らせてそっぽを向いた。
「……そうだ。折角、夕食まで暇なので……今のうちにデートプラン考えちゃいましょう」
「いいわね。どこ行く?」
「『アンリのスープ屋』は外せませんよねー……」
「……ねぇ、お姉ちゃんモードに戻ってもいい?」
「そういえば二人きりだもんね、いいよ」
「ねえ、大和くん。……驚いたでしょ?突然、告白なんてして。それも、あんな所で」
「そりゃあ、ちょっと驚いたけど……尊姉ちゃんのことは、俺も大好きだし、憧れだったから……俺としては願ったり叶ったりですよ」
「ふふっ。本当に、お姉ちゃん子なんだから」
「お互い様でしょ。転生して、立場も力もある美人に生まれて、わざわざ弟だった男に告白だなんて、ブラコンも良いとこだよ」
「……これからは、もう包み隠さなくて良いんだね」
「うん。これからも、よろしくお願いします。ガラテヤ様」
「ええ。……よろしく、ジィン」
夕食の時間。
ガラテヤ様は、夕食を取りに行く俺をベッドの上から見送る。
俺は手を振り返して食堂へ。
本当は自分とガラテヤ様の分を取り、部屋で一緒に食べたかったところだが……。
急を要さない学生が食事を持ち出すことは禁じられているらしく、俺は食堂でパーティの皆と食べることになった。
そして、ガラテヤ様の部屋へ食事を持って行くと。
「……ガラテヤ様?」
そこにガラテヤ様の姿は無かった。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
俺は叫び声を上げて倒れ込んでしまったガラテヤ様を抱え、講堂へ向かった。
戦いの最中に敗者の待機部屋である講堂へ戻ってしまうことは、すなわちリタイアを示す。
それでも、俺はガラテヤ様を放っておくことはできなかった。
ファーリちゃんはそのまま戦い続け、見事に六人の闇討ちを成功させた後、そのまま日暮れまで生き残り続けた。
教師側は考えていなかったらしいが、流石に夜まで山をうろつかせるわけにはいかなかったらしく、急遽タイムアップ制度が設定され、その結果、勝利したのは僅差でウェンディル学園であった。
「ただいま。ガラテヤお姉さんは?大丈夫?」
「だ、大丈夫よ……ちょっと全身が痛むだけで」
「全然大丈夫じゃない」
「あっははははははは……まあ、あんなに無理したらダメに決まってるわよね……」
「ホントですよ。でも、負担はまあまあっぽくて良かったです」
「これでまあまあなの……?どうなってるの、風牙流」
「コレだから廃れたんでしょうね、多分。魔力使わなかったら、『風車』でも神経痛の酷い時くらい痛いですもん」
ガラテヤ様が繰り出した「波霊掌」は、全身を使って体内に波を作り出し、足から腰、腰から肩、肩から腕、そして腕から霊力を込めた拳へ、溜めた波と魔力の全てを一撃で叩き込む技らしい。
風ではなく霊の力へと昇華することで発生する負担に加えて、溜めた力を使う際にかかる負担も抑えるように訓練していたらしいとはいえ、負荷の大きさは俺が「越風霊斬」を使った時と良い勝負である。
これに関しては、本当にガラテヤ様の天才ぶりが幸いしたと言うべきだろう。
後にマーズさんとロディアも部屋を訪れ、講堂で暴れようとしたバグラディが、クロスボウでケウキから俺達を助けてくれたケーリッジ先生と、養護教諭であり領主の娘であるメイラークム先生により止められたという話をしてくれた。
ケーリッジ先生が強いのは分かっていたが、メイラークム先生もアレを相手に戦える程だったとは。
話を聞く限り、長い脚から繰り出される蹴りがバグラディの顎にヒットし、そのまま意識を奪ってしまったのたという。
「ガラテヤちゃん、大丈夫?倒れたって聞いたから、来てみたのだけれど……あら、皆お揃いのようね」
噂をすれば、メイラークム先生である。
「わ、私は何とか……ジィンに色々手伝ってもらってるので」
「【バイタルスキャン】。……全身に内側から酷い負担がかかってる。何をしたらこうなるの?」
「そういう技があるんです。俺も使ったことありますけど、しばらく寝込んでました」
「そうなの?呼んでくれれば、薬渡したのに」
「いやあ、すいません」
「……あんまり無理しちゃダメよ?致命的なものじゃないから良かったけど、こういうのは下手すると一生モノなんだから」
「気をつけますわ」
ガラテヤ様は深く息をつき、布団を被る。
「とりあえず、身体の負担を和らげる魔法薬を処方しておくわ。ちょっと身体がダルくなるけど、それ以上の副作用は無いから安心してね」
「ありがとう、メイラークム先生」
「いいのよ。顔の良いオンナは元気が一番だものね」
「メイラークム先生?」
今、何かがおかしかったような。
「何でもないわ。もう少ししたら夕食だから、食堂に集まってね。ガラテヤちゃんは……無理そうなら、私が部屋まで持ってきてあげるけど……」
「大丈夫です、俺が持って行くので」
「そう?じゃあ、お願いね」
部屋を去ろうとするメイラークム先生はこちらへウィンクをし、マーズさん、ロディア、ファーリちゃんも同時に退出する。
「な、何か……前にすれ違った時も思ったけど、メイラークム先生って、ちょっとナルシストなのかしら?悪い人では無さそうだけれど」
「自信家なんじゃないですか?顔良し、スタイル良し、医学の知識もありますから」
「へぇ。ジィンはああいうのがタイプなの?」
「ガラテヤ様一筋ですが何か?」
「そう。それなら良いのだけれど」
「嫉妬しちゃってます?」
「まさか。ふんっ」
ガラテヤ様は口を尖らせてそっぽを向いた。
「……そうだ。折角、夕食まで暇なので……今のうちにデートプラン考えちゃいましょう」
「いいわね。どこ行く?」
「『アンリのスープ屋』は外せませんよねー……」
「……ねぇ、お姉ちゃんモードに戻ってもいい?」
「そういえば二人きりだもんね、いいよ」
「ねえ、大和くん。……驚いたでしょ?突然、告白なんてして。それも、あんな所で」
「そりゃあ、ちょっと驚いたけど……尊姉ちゃんのことは、俺も大好きだし、憧れだったから……俺としては願ったり叶ったりですよ」
「ふふっ。本当に、お姉ちゃん子なんだから」
「お互い様でしょ。転生して、立場も力もある美人に生まれて、わざわざ弟だった男に告白だなんて、ブラコンも良いとこだよ」
「……これからは、もう包み隠さなくて良いんだね」
「うん。これからも、よろしくお願いします。ガラテヤ様」
「ええ。……よろしく、ジィン」
夕食の時間。
ガラテヤ様は、夕食を取りに行く俺をベッドの上から見送る。
俺は手を振り返して食堂へ。
本当は自分とガラテヤ様の分を取り、部屋で一緒に食べたかったところだが……。
急を要さない学生が食事を持ち出すことは禁じられているらしく、俺は食堂でパーティの皆と食べることになった。
そして、ガラテヤ様の部屋へ食事を持って行くと。
「……ガラテヤ様?」
そこにガラテヤ様の姿は無かった。
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