上 下
12 / 19

12

しおりを挟む
男友「……っ」

ダダダダッ

男「あ」

男子生徒「通り過ぎて行ったな……追わなくていいのか?」

男「……たぶん、追うほうがよくない」

女子生徒「うんうん」

男子生徒「なんでそんな落ち着いてんだ……」

女子生徒「先生に止められなきゃいいけど……」

男子生徒「いや、そこじゃねぇだろ……」

ガララッ

後輩「せんぱいっ!」

男「ん」

後輩「少しお話、いいですか」

男「……場所を、移そうか」

スタスタ

男子生徒「もう、何がなにやら……」

女子生徒「いや、あんたが理解する必要は無いでしょ」

男子生徒「そうだけどさ……気になるじゃん?野次馬根性的に」

女子生徒「サイテー」


男「さて、と……」

後輩(いつもの花壇……やっぱりここなんだ)

男「大方あいつが俺に聞けーとか言ったんでしょ?」

後輩「……はい」

男「まだ気にしてんのかー……バカだな、ほんと」

男「こんな引きずるなら、最初からやるなって話だ、ほんと」

後輩「あの人は……」

男「友で大丈夫だ。他人行儀が嫌いなんだ、あいつ」

後輩「友さんは……何をしたんですか?」


男「……花壇を、壊したんだ。あいつが自分で」

後輩「え……なんでそんなことを……」

男「んー……らしくない、んだそうだ」

後輩「らしくない、ですか?」

男「あいつは、自分が男勝りでがさつな女だと思い込んでる」

男「だから、ああいう花壇みたいなのが似合わないって感じてたらしい」

男「本人も……周りも……その時の俺も」

後輩「……先輩、も」



『ねぇ、花壇の話知ってる?』

『あー、あいつがなんか整備し直したらしいな』

『うっは、似合わねー……あの男女がか?』



後輩「……」

男「俺は……あいつがそんな事気にしないやつだと思ってたんだ」

後輩「でもそれって、先輩のせいじゃ……」

男「本当に、そう思う?」

後輩「……」

男「キミがどう思ってるかは分からないけど……俺はいい人なんかじゃない」

男「この花壇も、俺の身勝手な罪滅ぼしに利用されてるだけ」

男「でも……それはあいつにとって迷惑な事だったのかもしれない」

後輩「そ……」


男友「……そんなことないっつの」

交配「!」

男「……聞いてたのか」

男友「……そんな理由で、ここの手入れをしてたんだな」

男「まぁな」

男友「……」

男「……」

男友「噂、知ってたんだな」

男「……あぁ」

男友「その子も言ってたけど、あんたのせいじゃないよ」

男友「というか、全面的に私が悪い……と思う」

男「……そんなこたないだろ」

男友「少なくとも花にゃ悪い事しちまったな」

男「それはまぁ、そうだな」


男友「あんたも、この花壇を直してくれてたんだね、感謝するよ」

後輩「いえ……そんな」

男友「私が逃げてた間……あいつの話相手になってくれてたんだろ?」

後輩「いや、それは逆で……」

後輩「それに……友さんの居場所を、奪ってしまったようで……なんだか、その」

ピシン

後輩「あいてっ」

男友「話聞いたろ?ここはもう私の場所じゃないんだ」

男友「親友でも無く……ましてや恋人でも無い。私はただの『友達』さ」ケラケラ

後輩「友さん……」

男「……帰り支度、してくる」

男友「ん、そうか」

後輩「もうそんな時間でしたっけ、私も……」

男友「ちょいと待ちな。少し話さないか」

後輩「え……あ、はい」


男友「変な奴だよな、あいつ」

後輩「……はい、最初はそう思いました」

男友「正直だね、あんた。嫌いじゃないよ」

後輩「でも……今はそう思いません」

男友「いい奴なんだけど、いい奴過ぎて変なんだよな……」フフ

後輩「ほんとですよね。大事なとこが見えてるようで、本当に肝心なとこは抜けてる人です」フフッ


男「そろそろ暗くなってきてるぞ」

男友「それじゃ……帰ろうか」

後輩「そうしましょうか」



男「そういえば、後輩。謝らないといけないな」

後輩「え、何をですか?」

男「気にしてないと言ったが、あれは大嘘だった」

後輩「……ほんとです!嘘はダメです!」ムー

男「面目ない」

後輩「でも、そのおかげで大事な話を聞けました。感謝もしてます」

男「……」

後輩「もう絶対、嘘ついちゃダメですよ?」ニコ

男「分かった。肝に命じておこう」
しおりを挟む

処理中です...