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男「そういえば……お昼どうするか決めてる?」

後輩「……そういえば、なんにも考えてませんでした」

男「ん、そか。まぁ、この辺なら飲食店も多いし大丈夫かな」

後輩(財布の中見ておこうかな……って、あれ、300円!?)

後輩「あ、の……せ、せんぱい……」

男「ん?どっかオススメがあるの?」

後輩「その、ごめんなさい……お店で食べれるほど、お金が無い、です……」

男「ん」

後輩「さっき使いすぎてしまいまして、その……」

男「いや、おごるつもりだったし。そんなこと気にしなくても」

後輩「わ、私が気にするんですっ!」

男「お、おぅ」

後輩「……そうだ、私の家で食べましょう!」

男「……へ?」

後輩「それならプライスレスですし、いいですよね!?」

男「あ、あぁ……まぁ、後輩がそれでいいのなら……」

後輩「ですよね、では善は急げです!」


男「意外と近いんだな、家」

後輩(い、勢いで呼んじゃったけど……どうしようどうしようどうしよう!)

男(二階建ての一軒家かー、なかなかいい家だ)

後輩「あ、あの先輩!あ、あがっちゃってください!」

ガチャリ

後輩母「あらあんた、帰ってきたの……って、あら?」

後輩(し、しまったー!今日お母さん家に……)

男「どうも、お邪魔します」

後輩母「あらあら……彼氏連れて来るなら言ってくれなきゃ……」

後輩「ちがーっう!!」


後輩母「すいませんねぇ、突然でこんなものしか準備できなくて」

男「いえ、凄くおいしいです」

後輩「お母さん!静かにしてて!」

後輩母「あらあら……怖い子ねぇ」

男「……」モグモグ


後輩母『あの人、彼氏じゃないならなんなの?』

後輩『学校の先輩だよ……変に勘繰らないで、お願いだから』

後輩母『なかなかかっこいいじゃない。どこか抜けてる感じはするけど』

男「……あの」

後輩「あ、後片付けはこっちでしますから大丈夫ですよっ!」

男「いや、何かさせてくれ」

後輩「あぅ……」

後輩母(あらあら、先輩くんの言葉には素直ね)


男「……」

ジャー フキフキ

後輩「えと、休んでて構わないんですよ?先輩」

カチャカチャ

男「ご馳走になっておいて、それは出来ないな」

後輩「……ですか」

男「おいしかった、ありがとう」

後輩「え?」

男「後輩も作ってたんだろ?さっきいなかったし」

後輩「えと、それは、その……ありがとうございます」

男「いや、俺は食べてただけだし」


男「よし、終わったな」

後輩「あ、ありがとうございました、先輩」

男「だから、ありがとうはこっちの方だって」

後輩「え、えとえと……これからどうしましょう……」

男「んー……帰ってもいい時間ではあるけど……」

後輩「……!」

後輩「そ、そうだ!これで遊びましょう、先輩!」

男「うお……随分と古いのが出てきたな」

後輩「うちではまだまだ現役ですよ、こいつは」

フー フー 
ガシャン

後輩「……はっ、とっ」
『しょーりゅーけんっ!』『どすこーい!どすこーい!』
『はどぅーけんっ!』『どすこい!どすこい!どすこい!』
『ウーワッ ウーワッ ウーワッ ドサ』

男「……格闘ゲームも出来るんだな」

後輩「子供のときはこれ一本しか遊べるもの無かったんで、相当やりこみましたよ」

『どすこい!どすこい!どすこい!』

男(横綱みたいな奴が車に向かって猛烈な張り手を繰り出している……)

後輩(よく考えたらこの光景シュールだな……ってか)

後輩(また私一人で楽しんでるっ!?)ガーン


後輩「あのっ、先輩もやりましょう!」

男「んー……やったことないんだよな、格闘ゲームは」

後輩「操作方法教えますから……ダメですか?」

男「ま、何事も経験だろうな」スッ

後輩「え、えと……このボタンがパンチで……」

男「なるほど、ここがキックか……」

後輩「で、十字キーを↓\→で……」


後輩母(あらあらあの子ったら、目を輝かせちゃって……ふふふ)
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